落とし穴にはまった男
高校からの帰宅途中、俺が公園の前を通り過ぎようとした時、1人の少年が目の前に立った。
「お兄ちゃん。ちょっとこっち来て」
いきなり手を引かれ公園の中に連れて行かれた。何が何だかわからず引かれるままについて行く。すると砂場に連れてこられた。その周りには少年の友人であろう人物が2人いた。
「ほら、こっちこっち」
少年はさらに俺の手を引っ張り砂場の中央に向かわせる。
そこに足を掛けようとした瞬間、俺の足は空を切った。そしてバランスを崩し、倒れた。
起き上がると少年たちは俺と同じ背丈になっている。そこでようやく少年たちの落とし穴にはまってしまったのだと気付いた。
「この……クソガキ共」
俺が怒りを露わに穴から這い出ようとする。そこに少年たちは砂を掛けてきた。
「それーかかれー」
「止めろ! このいいかげんにしろよ!」
容赦なく砂を掛けてくる少年たちに反撃をしようと試みるが目や口に砂が入り上手くいかない。結局、防戦一方だ。
「よーし。今日はこのぐらいにしとくか」
攻撃が止み顔についた砂を落とし終えた時には少年たちの姿はなくなっていた。
「あいつ等……覚えてやがれよ」
埋まってしまった下半身を砂から出すため両手を横につき力をこめる。しかし、出ることができない。何度も繰り返してみるも下半身は埋まったままである。
「おいおいどうするんだよこれ……」
顔から血の気が引いていくのが分かった。もし、こんな所を知り合いに見られたらいい笑いものだ。
そんなことを考えていると公園の入り口を友人が通りかかるのが見えた。
俺はそのことに驚き、いち早く抜け出そうと闇雲に動いてしまう。
そのせいで見つかってしまった。友人は此方に歩みよってきた。
「お前……何してんだ?」
「な、何って?何のことだ?」
「いや、どう見ても異常な光景じゃねーか。写真撮っていいか?」
「頼む! それだけは止めてくれ!」
「ははははは。冗談だって。とりあえず手伝おうか?」
「スマン。頼む」
友人は俺の腕を掴み思い切り引っ張った。
「ちょ、痛い痛い!」
「あれ? 抜けねえな。フン!」
「ホントに痛いんだって! 間接外れるから!」
「しゃーない。いったん休憩だ」
友人が手を放した。これだけ強く引っ張られたのに全く抜ける気配がない。
「くそー全然抜けねえじゃんか。俺一人じゃあ力不足なのかね?」
「いや、さっき俺が叫んでたこと聞いてました?痛かったんですけど?」
「よし! 誰か協力してくれそうな奴探してくる!」
「え! いやいいから! これ以上恥をかかせないでくれ!」
俺が言った時には遅く、友人は走り去ってしまっていた。
早く抜け出さないとまずい。俺は、体を右に左に揺らしながら抜け出そうとする。
「おーい! 連れてきたぞー」
「早いよ!」
想像以上に早かった。抜け出す努力もろくにできてない。
「もー、一体何なのよ。いきなり連れてきて……って何してんの?」
「何か抜けなくなったらしいぞ」
友人が連れてきたのは俺の幼馴染だった。何で知り合いを連れてきたんだ。
「ホントに抜けないの? 写真撮っていい?」
「やめてくれ! 何でそんなに写真を撮りたがるんだよ!」
「いや、だってこんなの見られることないじゃんか」
確かにそうだ。俺も二度とこんな目には合いたくないものだ。
「まあ、せっかく来たんだし手伝うよ?腕持って引っ張ればいいの?」
「それしかないよな。それじゃあいくぞ……」
友人と幼馴染は勝手に話を進める。
「おい! ちょっと待て!」
静止するのも聞かず2人は腕を思い切り引っ張った。
「痛いって! 痛いから! ホントに頼むから止めてくれ!」
「ホントに全然ビクともしないわね……どうやったらこんなにしっかりと埋まるのよ」
「だろ?もう諦めるしかないのかね?」
2人はやれやれとため息を吐く。
「よし! 私が誰か協力者を探してくるわ!」
「いや、もういいから! むしろもうほっといてくれ!」
「何遠慮してんのよ! 任せておいて幼馴染の危機は私がすくうから!」
意気揚々と幼馴染は走り去っていった。
「よし! 俺はもう少し頑張ってみるかな!」
「え? いや、いいからもう勘弁して!」
「まあ、いいからいいから」
友人は俺の腕に手を伸ばす。
思わず右ストレートをお見舞いしてしまった。その場に友人はひっくり返る。
「く! 今のうちに……」
「おーい! 連れてきたよー」
「だから早いよ!」
そこには密かに思いを寄せていた委員長の姿があった。よりにもよって一番見られたくなかった相手を連れてきたのだ。
「……何この状況」
冷たい目で見られた。これは完全に嫌われた。
「……写真撮っていい?」
「アンタもかい!」
意外にそうでもないようだった。
友人を起こし今度は3人で俺のことを引っ張るようだった。
「お手柔らかに頼むぞ! あんまり強くやったらホントに脱臼するかもしれないんだからな!」
「任せとけ!よし行くぞ!せーの!」
腕に痛みが走るが我慢する。
何回目か引っ張られた時、下半身が土から抜け出す感触があった。俺を引っ張っていた3人が尻餅をつく。
「やった! 出られた! やっと出られた! ありがとう皆!」
喜び立ち上がる。3人の方に向くと何故か驚きの表情をしていた。
俺は自分の足元に目をやる。
そこには、ズボンがずり落ちていた。
お読みいただきありがとうございました。
何やら途中で「大きな株」みたいな物語になりそうになったんでオチは主人公のパンツ露出オチとなりました。
もっと委員長の出番があってもよかったような気がします。
名前を考えるのが面倒なためにいつも「友人」とかのように名無し状態になってます。




