2話
寝床になる木を探していると、悲鳴が聞こえてきたて、その場に急いで向かった。
声の主いる近くまできて様子をみてみると、ローブを身に纏った小柄な者と複数のゴブリンがいた。
ローブを纏ったほうは、ローブでよくわからないが、先ほど聞こえた声や体格からおそらく少女だろう。少女の周りにはゴブリンに襲われたのか、道具が散乱しており、恐怖からか大きな杖らしきものを抱えながら震えていた。
ゴブリンのほうは、八人ほどおり、そのうち五人は殴られた痕がある。それも見覚えのあるやつが。八人全員で少女にジリジリと距離をつめている。
それだけなら俺が出て行き、ゴブリンを倒すだけでことはすむ。
が、世の中そんなに甘くないらしい。
ゴブリンたちの背後に一際大きな奴がいる。それも2mくらいのが。
おそらくはゴブリンたちのボス、いうなればキングゴブリンってとこか。
そいつは、ゴブリンをそのままでかくし、角を一本生やしたようなやつで、大人が二人でも持つのがきつそうな丸太を片手で引きずっている。その様からアレを振り回して攻撃してくるのが容易に想像できる。
幸いに、部下のゴブリン達に任しているのか傍観というか、ボーっとしている。
『どうする?見捨てるか?でも人の手がかりはほしいし見捨てるのは寝覚めが悪くなりそうだな。だがあのでかいのは倒せるのか?』
考えている間もゴブリン達は少女ににじり寄っている。
『クソッ時間がねぇ!一か八かだ!』
見つからないキングゴブリンに一番近い場所に移動して棍棒を握り締める。
高鳴る心臓に深呼吸一つし落ち着かせ集中する。
ダッ
人生最高のスタートダッシュとともに一気にキングゴブリンとの距離をつめる。
いきなりのこととボーっとしてたことでキングゴブリンは初動が遅れている。
その隙を最大限生かし肉薄しあごをおもいっきり棍棒で振りぬく
バキィッ
そんな音が二重になって聞こえてきた。一つは棍棒が折れた音、もう一つは、キングゴブリンのあごの骨が割れた音だった。
これで倒せていなかったら俺の負け、DEAD☆ENDまっしぐらだが、
ズシン
そんな音をたててキングゴブリンは倒れ付し気絶した。
脳震盪を起こした上にあごが割れた痛みによって気絶したのだろう。
人と同じような体(見た目抜きにして)なので急所も同じだと信じての行動、賭けだった。
命をかけたギャンブルに勝利し思わず
「よっしゃぁっ!」
掛け声とともにガッツポーズを決めていた。
バキィッという音に反応して後ろを振り向いたその状況にゴブリンたちは一斉にサァッ血の気が引いて逃げ出していった。その様子は兄貴分がやられたチンピラ同然だった。
少女は何が起きたのかわかっているのかいないのか動かないままでいる。
「あいつら、自分達のボス置いて逃げやがったな。薄情だなオイ」
そんなどうでもいことをつぶやきながら少女の下へ行き、手を差し伸べながら
「大丈夫か?怪我はないか?」
と聞くと、震えてはいるものの
「だ、大丈夫です。ありがとうございます」
と返してくれた。見た限り目立った怪我はしてないので大丈夫だろう。
あれ、そういや言葉が通じているな。っと驚いていると
「あの、助けていただき本当にありがとうございます。凄いですね!一人でキングゴブリンを倒してしまうなんて」
さっきまで震えていたのが嘘の様に生き生きしている。
「お、おう。無事で何よりだ。だが何で一人でこんなところにいるんだ?」
「あっ忘れてた。アレの角もらっていいですか?」
「ん?別にいいがまだ生きてるぞソレ」
「ヒィ」
話してる途中で目的を思い出したらしくキングゴブリンに触ろうとした瞬間に聞いたために悲鳴とともに後ずさった。
そして怯えながらソレに指をさし聞いてきた
「い、生きてるんですかコレ?」
「気絶してるからしばらくは起きないと思うけどな」
「へ、な~んだよかった」
「角が欲しいなら起きる前にとったほうがいいな。ナイフあるか?」
「はい、どうぞ」
「よしとるぞ」
気絶といっても脳震盪を起こしているため動けないので多少手荒でも大丈夫だろうとなかなか硬いその角を
頭から切り落とす形ではぎっとた。そのとき、痛みでギャーともガーとも聞こえる絶叫を上げながらもがき、最終的に剥ぎ取られた痛みで
また気絶したのは仕方ないことだろう。・・・角を切られ泣きながら気絶してるその姿にはさすがに罪悪感を覚えた。
少女は散らばっていた道具をかたしていたので見ていなかったが。
「これでいいか?」
「は、はい。でも殺さなくていいんですか?」
「必要ないだろ」
こんな世界だ、殺すのが普通なのだろう。しかし、現代社会の価値観の俺には殺すという行為に抵抗がある。そんな気持ちを察してか少女は
「何か、おかしな人ですね」
というだけで、納得してくれた。
「だろうな。それより人里にはどっちに行けばいい?」
「ならお礼に、案内します。」
「本格的に暗くなってきたし急いだほうがいいな」
「はい」
二人で人里まで走りながら向かった。
俺は、一人の寂しさや孤独感からの解放と人がいるという安堵感を噛み締めながら。
少女は、危機を救われ物語のヒロインのような気分と目的を達成した達成感をかんじながら。