13話
サイド:エリシャ的なものがあります
ヒロは今、赤茶色の髪を三つ編みにした、そばかすがなんとも愛嬌のある受付嬢に迫られていた
「だから、エリシャとはどういった関係なのよ」
「ただの旅仲間?ですよ」
「旅仲間ぁ?エリシャは基本的にこの街にいるわ。そんなの信じられない」
「はぁ~」
どうしようもなく面倒だ。ヒロの心境はこの一言に尽きる
この後の予定を決めていたわけではないが見ず知らずの人間にこうまで絡まれるのは正直だるい
そんなヒロの心境もお構いなしに受付嬢の人は身を乗り出し質問してくる
「百歩譲ってそうだとして、あなた達はどこで知り合ったって言うのよ!あの娘は誰?旅の目てムグッ」
「五月蝿いよアイラ」
受付嬢アイラの矢継ぎ早の質問をさえぎったのはエリシャだった
なお、手のひらで顔を掴み押し戻すオプション付きである
「遅いと思ってきてみればやっぱりあんたかい」
「やっぱりって何よ!休暇とか言って実家に帰ってたあんたが男連れで戻ってきたのよ。気になって当然じゃない!」
「あんたの噂好き今に始まったことじゃないけどねぇ。本当に何もないよ」
「信じられないわ!」
エリシャとアイラは知り合いのようだ
よくよく考えてみたら当たり前のことか
村から街まで一本道でしかもエリシャはギルドの一員である
アイラだけでなくこのギルドにいる人間と顔見知りであるのは間違いない
しかし、知り合いとの会話なのにエリシャの顔には面倒の文字が目に見えて浮かんでいた。いや、知り合いだからこそか
「知りたいんならアニーとかに聞きな。二度も説明すんのは面倒だからね」
「・・・わかったわよ」
アイラは渋々了承し、アニーと思われる受付嬢のところに歩いていく
エリシャはそれを見送ると「さて、今後についてだけどねぇ」と一おきし今後について話しだす
「嬢ちゃんと話し合って決めたことなんだけどねぇ。2・3日この街に居ることにしたんだよ」
「とりあえず理由は?」
「必要なものやあんたの武器とか色々調達するためだよ。それと、あんたは今から嬢ちゃんと一緒に見てまわってきな」
「急だなオイ、まぁいいか。資金は?」
「ほい、アレの報酬だよ。結構な額になってたよ」
エリシャはそういって硬貨の入った袋をヒロに渡す
ヒロは受け取ると「おお、サンキュ」と返し、袋を少し開け中身を確認する
中には小さい金貨2枚と大きな銀貨が5枚入っていた
ヒロはその中から金貨を1枚取り出しエリシャにポイッと投げ渡す
「なんだい、コレ?」
「必要経費として持ってってくれ」
「は?」
エリシャは驚きながら投げ渡された硬貨を受け取る
そうして受け取った硬貨を確認し金貨であることに気づくとエリシャは急に慌て出す
「ちょ、ちょっとあんた、銀貨でも大金なのに金貨なんて受け取れないよ」
「大金なのか?ならちょうどいい、そのまま受け取ってくれ。この服とか色々良くしてもらったお礼だ」
「お礼って、いや、それでもこんなに貰えないよ」
なおも食い下がるエリシャを無視してさっきからいないフィリアについてたずねる
「そういやフィリアはどこだ?一緒に周るんだろ」
「だから、こんなに貰えないって」
「どこに居るんだ?」
「・・・は~、わかったよ。嬢ちゃんはギルドの前で待ってるよ」
エリシャはヒロが返されても受け取らないことを悟る
そして、ため息一つつきエリシャが折れ、フィリアの待ってる場所を言う
「わかった。あんたはどうするんだ?」
「あたしはここの連中とまだ話があるからねぇ、ここで待ってるよ」
「了解。んじゃ、行ってくる」
「ああ、いってらっしゃい」
そんな言葉を交わしヒロはギルドの外へ走っていく
ギルドを出て少しあたりを見渡しフィリアを探す
フィリアはギルドの看板の真下で壁にもたれながら待っていた
「すまんフィリア、待たせたな」
「そんなに待ってないので大丈夫ですよ。それじゃあいきましょうか」
「おう」
まるでデートの待ち合わせのようなシチュエーションのようである
エリシャはヒロが行った方向を眺めながらヒロの直前の行動を思い返し、少しの罪悪感を感じていた
「良くしてもらったお礼」か、たいしたことなんてしてないのにねぇ
服の高いものでもないのにこんな大金を
しかも、あたしが着いて来たのは好奇心を満たすためなのにあたしの事をな~んにも疑わずに・・・
といっても、ヒロに何かするわけでもないんだけど
「どうしたのよエリシャ、まさか本当に惚れたの?」
「・・・はぁ」
いつの間にか近づいていたアイラの言葉に純粋にため息が出る
「何でも恋バナにしようとするの止めな、アイラ」
「チッ、その反応は違うわね。あ~あ、ようやくエリシャにも春が来たと思ったのにね」
いい加減うんざりだ、というエリシャの態度にアイラは舌打ち一つつき残念そうに言いながらバーの方向に歩き出す
エリシャもアイラを追いかけるように歩き出す
そうして二人はバーの端の方にに座り話を始める
「で、この話は本当なの?」
「ああ、教国の勇者召喚の話と時期的にあうし、ヒロの話も作ったにしてはよく出来過ぎてる」
「なるほどね」
エリシャとフィリアはヒロが登録している間にもう一人の受付嬢+気になって聞き耳を立てていた傭兵達にヒロの(異世界から来たという)話をしていた
それを聞いたアイラはその話が嘘ではないことにエリシャ本人から聞いてようやく納得した
納得したものの、アイラは「でも」と言葉を続けた
「あんたの目的は何なのよ?彼に着いて行く理由がまったくないじゃない。善意なんてふざけたことは言わないわよね」
アイラは言葉と共にまっすぐエリシャを見据える
エリシャはその目に嘘が通じないことを知っているため、素直に白状する
「好奇心だよ、好奇心」
「は?」
アイラの目が何を言っているんだコイツという目に変わる
そんな様子を無視してエリシャは言葉を続ける
「ヒロの話を聞いて思ったんだよ。異世界からの勇者召喚、それとは違ったもう一つの召喚の魔方陣、その両方に巻き込まれたヒロ。コレだけ聞いても何かが起こりそうな予感がするのに勇者召喚で今まで保たれていた国同士の均衡が不安定になっている状況!」
「・・・下手したら戦争が起きそうよね、それ」
この世界の戦争は魔法という力を主体とし行われるため個人レベルでも大きな影響を及ぼす可能性があるために
勇者という巨大な力を持った存在が及ぼす影響は計り知れないほどだ
そんな存在が均衡を保っている中に放り込まれたらどうなるか・・・
「だから好奇心。何が起こるかその中心で見てみたいんだよ」
心底楽しそうに語るエリシャにアイラはこんな正確だっけ?と疑問符を頭に生やしながらも忠告をする
「あたしは止めた方がいいと思うわ」
「・・・」
「ここでいろんな人を見てきたから、あたしが見ただけでその人のことがある程度わかるのは知ってるわね」
「ああ」
「底が見えないなんてレベルじゃないわよ」
「?」
エリシャはアイラの人を見る目が優れていることは知っているし
それでも、実力がわからないといったようなことは今までにもなくはなかったはず
エリシャは何をそこまで気にしているのか、そこがわからなかった
「言いたいことはなんとなくわかるわ。でも、違うのよ」
「何が?」
「確かに今までも底が見えないこともあった。それでも、人の領域は出てなかったわ。でもあいつはそんな領域を軽く飛び越えてた」
「・・・」
アイラの目は怯えるとまでは行かないがかなり混沌とした色をしていた
友人の今までに見たことのない様子にエリシャは絶句した
「やめときなさい。そんな化け物が勇者ともう一人いるなんて、あんたの手に負えるわけないわ」
「・・・そうかい、そこまでなんだね」
エリシャは信頼のできる友人の言葉を受け止める
しかしエリシャは決意をした目で「でもね」と言葉を続ける
「あいつはいい奴なんだよ。見てたろ、お礼とか言って簡単にコイツを渡すあいつを」
「・・・そうね」
「それに、見捨てりゃ良いのに人を助けるし、ヒモが嫌だといって働くとか言い出すぐらいには気概もある」
「・・・」
「察しも良いし、義理堅いし」
アイラは友人の言葉と受付をした少年を合わせながら聞く
「いい子なのは同意するわ。そのせいか、いまいち怖がれないのよね」
「だからたぶん大丈夫だよ」
「あ~、だんだんそう思えてくるのが癪だわ」
徐々に心配していたのが馬鹿らしくなっていくようだ
「それにねぇ、あいつは孤独なんだよ。いくら普通にしてても、今まで積み重ねたものを根こそぎ奪われたような状態なんだよ」
「で、同情でもしたと?」
「かもねぇ。でも、そう思ったら何かほっとけなくなってねぇ。一緒に行こうと思ったんだよ」
「・・・そう」
エリシャのその言葉が止めとなりアイラはもう、一緒に行くのを止める気にならなくなってしまった
「好奇心なんていって、そっちが本心なんでしょ」
「そうかもねぇ」
「あいかわらず素直じゃないわね」
そのあとは雑談をしたりと二人のいつもの雰囲気に戻っていった
色々補足をした方が良いのかなぁ?
拙い文章でわかりにくいと思うし
でもまぁ、気にせず逝こう!