第六話 僕たち三人
「で……彼女を僕の家へ運んできたと………」
友人は椅子に座って、頷いた。
僕は心底頭を抱えた。
◇◆◇
僕はほんの少しではあるが王族の血をひく貴族、シャール家の一人息子だ。
僕のシャール家の家…というより、館は王城からまぁ近い。
シャール家は代々強力な魔力を受け継ぐ。
僕もカールお父様から宮廷魔術師の座を頂いた。宮廷魔術師はシャール家しか成れない王城最高位の魔術師の地位である。
今日も王城での仕事を終え、いつも通り家に帰った。
そして、両親が迎えてくれて、さっそく晩御飯に…ってところだけど…
カレンお母様が「テオ様とディル様がいらっしゃってるわよ」と爆弾発言をした。
僕はその言葉を聞いた瞬間、お母様に一言かけ、風神のごとくお母様から聞いた客室へと脚を急がせた。
テオ様というのは今目の前で座っている奴で、ディル様はそのテオの斜め後ろでそっと仕えて立っている。
「僕たち三人が集まると悪いことしか起きないって大体相場が決まってるよね…」
はぁ、とため息をつく。
それを見たディルが苦笑する。
「そうだよなぁ、まあいつもテオとエドが原因で後始末は俺がやるんだけどさ…」
「何か言ったかい?」
ディルの言葉を受け、僕は殺気を込めて睨み返してやった。
「………何も」
ディルは深青色の瞳を諦めたとでもいうように伏せた。
「…で、今日は世にも珍しい黒髪黒目、しかも魔力なしの少女と…」
僕は僕たちが話している部屋の脇に置いてあるベッドですやすやと寝息をたてて寝ている少女と、その‘取り巻き’をちらりともう一度見た。
「……トラクの森の白銀の狼ミラ族が三匹も付いてきたって……」
カラクの森はシャール家が所有している土地の一つで、白銀の狼が住んでいる森である。
その三匹の白銀の狼が例の少女を囲むようにして一緒にベッドの上で眠っていた。
(……まったくこの友人とつきあってると飽きがこない……)
エドガー・フォン・シャールは心の底からそう思い、翡翠色の瞳をふっと細めた。
それを見たディルは
(……また始まるのか……)
とため息をついた。