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第一話 毬
最後の記憶は眩しさで思わず目を瞑るほどの明るいライトと目と鼻の先にあるトラックだった。
考えなくてもわかる。私は死ぬんだ。
私、桜庭毬。高校二年生の16歳。
普通の人生だったと思う。家が超がつく程の貧乏だということ以外は。
両親はとても私によくしてくれたし、私はそれに応えるために頑張ってきた。奨学金のために学校の成績はいつも首席を譲らなかったし運動もできた。
父が起業で失敗し、莫大な借金をつくってしまい、超貧乏になった。
特に貧乏について不満もなかった。そんなことよりもさっさといい大学に入学して卒業し、早くいい職に就いて両親を助けたかった。
父はよく「毬の好きなことをすればいい。なにも無理することはない。だから、甘えていい。欲しい物があれば欲しいといえばいい」といった。母は「毬、あなただけの道を進めばいいの。あなたの為ならどんなことだってしてあげられる」と優しくしてくれた。
でも私は小さい頃から自分の家が貧乏なことをしっていた、だから簡単にあれがほしいこれがほしいとはいわなくなっていた。
でも、本当は音楽を習い続けたかった。