悪夢夜(あくむや)~イケナイヨ~
悪夢夜、第二弾です。いやぁ、まさか二弾ができるとは思ってもいなかったのですが、できちゃいましたね~(笑)今回は皆さんの想像任せはナシです。それではごゆっくりとお楽しみください。
「まさか、こんな怖い目にあうなんて」
瑛子は泣きながら柳太に話し始めた。柳太と瑛子は霜真赤町に住む高校生だ。柳太は瑛子の家の隣に引っ越してきてすぐに仲良くなった。家が近いことから学校の行き帰りはいつも一緒だ。今は柳太の家に瑛子が来ていて話しあっている状態だ。
瑛子は霧ヶ野々という少し田舎っぽい場所に別荘を持っていた。中にはテレビとベッドとキッチンしかない小さな別荘だった。事件が起きたのは、とある夏休みに家族でその別荘へ遊びに行った時の事。父親が車を運転して霧ヶ野々の別荘へ向かっている途中、瑛子は気持ち悪くなり窓を開けていた。
「ただの車酔いだろうって思ってたんだけどね」
窓から入る風が心地よくて瑛子は身を乗り出していた。しばらく風に当たっていたのだが、良くなるどころかどんどん悪くなっていき頭までもが痛くなり、のどが渇く。瑛子は窓から体を離すと椅子に凭れ掛かり缶のオレンジジュースを飲みほした。缶を捨てる袋がなかったので瑛子は何も考えず缶を窓の外へ投げ捨てようとした。その時、その腕を何かに捕まれた。そしてそのまま窓の外へと引きずり出そうとする。瑛子の体が浮いて窓に勢いよくぶつかる。その衝撃で缶が窓の外へ、後ろへ飛んでいく。カコンと音を立てて缶が転がった。瑛子は何が起きたか解らず頭を抱えていた。しかし、その時にはもう頭痛も気持ち悪さもなくなっていたという。しかしそれはほんの序章に過ぎなかった。
別荘に着き、夕飯とお風呂をすませ、さて寝ようと思いベッドにもぐりこんだその時だった。ふとんが膨らんでゆき、お腹の上に重みを感じた。その重さはぬか漬けの樽の上に乗っている石のような重さだった。瑛子は怖いながらも勇気を振り絞りふとんをまくりあげると缶が床に転げ落ちた。その缶に見覚えがある。そう、あの時窓の外へ捨てた缶だった。お腹の上には見知らぬ老婆の姿があった。老婆は瑛子を睨みつけ首に手をかける。老婆は次第に手に力を入れてゆき瑛子の首を絞めてゆく。怖くて声も出ず、声が出たとしても親は別の部屋で寝ていたため気がつくはずもない。キリキリと老婆の手が首を絞めてゆく。老婆は何かつぶやいていた。
「……ケナイヨ。缶ヲ投ゲ捨テチャアイケナイヨ。ポイ捨テシチャア、イケナイヨオオオオオ!!」
老婆の声はだんだん大きくなってゆき、更に首を絞め付ける。瑛子は涙を流しながら心の中で必死に謝った。声に出そうとするが、やはりでない。もうダメかと思った時だった。妹が瑛子の部屋に入ってきて話しかける。老婆は手を離すと消え去った。そこで目が覚めた。キッチンからは朝食のいい匂いと何かを焼く調理音がしていた。なんだ夢かと思い、ベッドを出ようとする。ふと床に転がっているものを見た。缶だった。それも窓から外に投げ捨てたオレンジジュースの缶だった。気味が悪くなりその缶をゴミ箱へと捨て、キッチンへ行く。家族に挨拶をしようとした時、皆は瑛子を見てぎょっとした。瑛子本人は気付いていなかったが、この時――――
瑛子の背後に老婆が浮遊しており、そのしわくちゃな老婆の手がそっと瑛子の首に添えられているのだった……。
いかがでしたか? 楽しく読んでいただければ光栄です。怖いと思ってもらえたならばもっと光栄です。
悪夢夜は短編なのですが、ネタがあり次第尽きるまで永遠に続いて行きます。
これからもこの短編ではホラーな世界へあなたを誘います。
それでは、また次の小説でお会いしましょう。