はい、嫉妬してます。
手慰み第数弾であります。
お楽しみいただけたら、幸いであります。
国を治める王の五男の王子が、平民上がりの男爵令嬢を見初めたのは、学園に入学して二年目だった。
王位継承順位も低い彼には、未だ婚約者はなく、学園生活は伸び伸びとしたものだったが、一年遅れで入学して来た男爵令嬢に、一目惚れしたのだ。
何とか側に侍らそうと、友人たちと共に彼女に近づき、最近漸くそれが叶ったが、中々深い仲になれずにいた。
その原因は、第五王子の爵位的に伴侶と見定められている、侯爵家の次女だ。
彼女は、男爵令嬢を教室から連れ出し、友人たちと一室に入ろうとする時に限って、邪魔をして来た。
憤慨して、嫉妬を指摘しても、どこ吹く風で、
「嫉妬以前のお話でございます。仮にも一国の王子が、婚約者の有無以前に、未婚の淑女との距離感を弁えないのは、情けのうございます」
そう言い、男爵令嬢を遠ざけようとする。
それだけなら、まだ聞き流して再び彼女を連れ出せばいいが、最近は実害ある妨害が目立ち始めた。
三階から植木鉢が落ちてきたり、突然風もなく制服を切り刻まれたり、王子の卒業式の七日前には、踊り場の階段で何かに足を取られ、下に転げ落ちて足腰の骨を折った。
これは恐らく侯爵令嬢と、男爵令嬢の友人が手を組んで、嫌がらせしているのだと明確に察せられ、第五王子は憤慨した。
もう、黙認出来ないと、断罪を決意したのだった。
断罪を敢行したのは、卒業式後に行われる、在校生が主催する、卒業パーティーだ。
全生徒が集うその場で、王子は声を張り上げた。
「侯爵令嬢、そして特待生二年、前へ」
何事かと静まる会場で、呼ばれた二人が前に進み出る。
その直ぐ側に、男爵令嬢の姿もあったが、まずは彼らの断罪が先だと、第五王子は顔を険しくした。
「お前たち二人が、男爵令嬢に嫉妬して行った所業、全て記録しているぞっ」
「……第五王子殿下? それは……」
「黙れ。あれほど見過ごせぬ所業を繰り返しておいて、白をきるか? 見苦しいっ」
冷ややかに吐き捨てる王子に、侯爵令嬢は溜息をつき、返した。
「……申し訳ありませんでした。確かに、友人の男爵令嬢に、余りに近く接近する殿下に嫉妬し、口先だけで説教してしまった事、申し訳なく思っております」
「今更、謝罪しても……ん? 何だって?」
素直な謝罪に、我が意を得たりと胸を張ったが、直ぐに意味合いが違うと気づき、王子が聞き返すと、侯爵令嬢は困ったように言った。
「わたくしが元々、平民出身である事は、ご存じかと思いますが、その関係で男爵令嬢とも気が合い、入学当初から仲良くしておりました」
そんな馬鹿なと言いかけたが、侯爵令嬢の後ろで、男爵令嬢が何度も頷いているのを見て、唖然とした。
「恐れながら、同性同士でも取らないほどの距離の近さを鑑み羨ましいと、殿下を妬んでしまいました」
「つまり、かわいさ余って、憎さが優ったのかっ? このひと月の所業、色々と度を超えていたぞっ」
「? このひと月?」
首を傾げる侯爵令嬢に、王子は己の姿を指し示した。
「階段に何かを仕掛けて、男爵令嬢を手に掛けようとしただろうっ? お陰で助けた私が、こんな大怪我を負ったんだぞっ」
「あ、発言、よろしいですか、殿下」
目を丸くする侯爵令嬢が、口を開く前に、呑気な声が言った。
先程、侯爵令嬢と共に呼び出した、特待生二年だ。
授業で質問するがことく、手を挙げた平民の男子生徒は、あっさりと言った。
「それ、あなたを標的にしてました」
「……は?」
「あまりに、私の婚約者との距離が近いので、この世から消えてもらおうと、私がやりました」
その後大変だったと、後に聞いた。
正直、どうでもいいと、伯爵家三男坊は思う。
何もかも面倒で、学園を退学した伯爵令息には、最悪な事態になる事が防げた事だけは、安堵していた。
伯爵家三男坊の彼は、今の人生の前に、二度の人生経験がある。
一度目は、技術が発展した世界で働きに働いて、往生した。
と思ったら、この世界で伯爵家の三男として、生を受けていた。
跡継ぎと補充は既におり、親に期待も失望もされない立場で育った伯爵家三男は、噂に聞く異世界転生を密かに楽しみ、学園に入学してからは、こっそりと図書館の魔術書を読み漁り、知識と実力を身につけ、将来は平民になっても困らないよう、備えていたのだが、卒業間際に事件が起こった。
同学年だったこの国の第五王子が気に入っていた令嬢と、それにいつも苦言をしていた侯爵令嬢が、階段から落ちて命を落としてしまったのだ。
その場にいた王子は、侯爵令嬢が男爵令嬢を押し、勢い余って一緒に落ちたと主張していたが、違うなと伯爵令息は分かっていた。
時々見かける王子と男爵令嬢の様子や、侯爵令嬢の動きは、どちらに非があるのか明確にしていたし、魔法を使って王子と令嬢を引き離そうとしていたのが、魔力の多さを買われて学園に入学した、特待生の男子生徒だと気づいていたのだ。
まあ、面倒すぎて、静観していたが。
小規模の突風で、王子の衣服を全て切り裂き、すっぽんぽんにした時は、自宅に帰ってから腹を抱えて笑ったが。
自宅に戻るまで、笑いを我慢し過ぎて、死ぬかと思ったが。
そんな惰性が、あの事件を生んだ訳では、決してない。
だが、その後は影響した。
二人の令嬢の死は、特待生を闇落ちさせてしまった。
そして、ついつい、伯爵令息は魔法を使って、彼を返り討ちにしてしまったのだ。
結果、国を救った魔術師として、王城勤務を強要され、魔力が枯れて引退するまで、酷使されてしまった。
伯爵家で、兄たちを支えてのんびりと過ごすつもりだったのに、後悔まみれの生涯だった。
悔しい思いで息を引きとったら、直ぐに目が覚めた。
在校生として、入学式の準備をしている最中だった。
危なっ。
伯爵令息が初めに思ったのは、それだった。
今度は、関わりたくない、そんな思いしか、頭になかったのだ。
だから、新学期早々退学した。
第五王子は、王子とは言え、王位継承権はなかった。
国王の平民の愛妾の子だったのだ。
まあ、婚約者でない侯爵令嬢が、あからさまに苦言できるくらいだし、その後の特待生の処遇を見ると、明白だ。
なんと、その正確な攻撃力や技術が目に留まり、国家魔術師として抜擢された。
第五王子は歩けなくなり、療養と称して離宮に押し込まれたと聞くし、今回は平和に過ごせそうだ。
前の人生では、階段で足を絡ませた王子の体を、令嬢の方に傾けさせて守ってしまったから、特待生のあの闇落ちは、後ろめたかったんだよな。
スマホの文字打ち、どんどん面倒くなって来ました。
早く、パソコン買えればいいんですが。
今月買える予定ですが、まだ未定です。




