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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

はい、嫉妬してます。

作者: 赤川ココ
掲載日:2026/08/15

手慰み第数弾であります。

お楽しみいただけたら、幸いであります。

 国を治める王の五男の王子が、平民上がりの男爵令嬢を見初めたのは、学園に入学して二年目だった。

 王位継承順位も低い彼には、未だ婚約者はなく、学園生活は伸び伸びとしたものだったが、一年遅れで入学して来た男爵令嬢に、一目惚れしたのだ。

 何とか側に侍らそうと、友人たちと共に彼女に近づき、最近漸くそれが叶ったが、中々深い仲になれずにいた。

 その原因は、第五王子の爵位的に伴侶と見定められている、侯爵家の次女だ。

 彼女は、男爵令嬢を教室から連れ出し、友人たちと一室に入ろうとする時に限って、邪魔をして来た。

 憤慨して、嫉妬を指摘しても、どこ吹く風で、

「嫉妬以前のお話でございます。仮にも一国の王子が、婚約者の有無以前に、未婚の淑女との距離感を弁えないのは、情けのうございます」

 そう言い、男爵令嬢を遠ざけようとする。

 それだけなら、まだ聞き流して再び彼女を連れ出せばいいが、最近は実害ある妨害が目立ち始めた。

 三階から植木鉢が落ちてきたり、突然風もなく制服を切り刻まれたり、王子の卒業式の七日前には、踊り場の階段で何かに足を取られ、下に転げ落ちて足腰の骨を折った。

 これは恐らく侯爵令嬢と、男爵令嬢の友人が手を組んで、嫌がらせしているのだと明確に察せられ、第五王子は憤慨した。

 もう、黙認出来ないと、断罪を決意したのだった。


 断罪を敢行したのは、卒業式後に行われる、在校生が主催する、卒業パーティーだ。

 全生徒が集うその場で、王子は声を張り上げた。

「侯爵令嬢、そして特待生二年、前へ」

 何事かと静まる会場で、呼ばれた二人が前に進み出る。

 その直ぐ側に、男爵令嬢の姿もあったが、まずは彼らの断罪が先だと、第五王子は顔を険しくした。

「お前たち二人が、男爵令嬢に嫉妬して行った所業、全て記録しているぞっ」

「……第五王子殿下? それは……」

「黙れ。あれほど見過ごせぬ所業を繰り返しておいて、白をきるか? 見苦しいっ」

 冷ややかに吐き捨てる王子に、侯爵令嬢は溜息をつき、返した。

「……申し訳ありませんでした。確かに、友人の男爵令嬢に、余りに近く接近する殿下に嫉妬し、口先だけで説教してしまった事、申し訳なく思っております」

「今更、謝罪しても……ん? 何だって?」

 素直な謝罪に、我が意を得たりと胸を張ったが、直ぐに意味合いが違うと気づき、王子が聞き返すと、侯爵令嬢は困ったように言った。

「わたくしが元々、平民出身である事は、ご存じかと思いますが、その関係で男爵令嬢とも気が合い、入学当初から仲良くしておりました」

 そんな馬鹿なと言いかけたが、侯爵令嬢の後ろで、男爵令嬢が何度も頷いているのを見て、唖然とした。

「恐れながら、同性同士でも取らないほどの距離の近さを鑑み羨ましいと、殿下を妬んでしまいました」

「つまり、かわいさ余って、憎さが優ったのかっ? このひと月の所業、色々と度を超えていたぞっ」

「? このひと月?」

 首を傾げる侯爵令嬢に、王子は己の姿を指し示した。

「階段に何かを仕掛けて、男爵令嬢を手に掛けようとしただろうっ? お陰で助けた私が、こんな大怪我を負ったんだぞっ」

「あ、発言、よろしいですか、殿下」

 目を丸くする侯爵令嬢が、口を開く前に、呑気な声が言った。

 先程、侯爵令嬢と共に呼び出した、特待生二年だ。

 授業で質問するがことく、手を挙げた平民の男子生徒は、あっさりと言った。

「それ、あなたを標的にしてました」

「……は?」

「あまりに、私の婚約者との距離が近いので、この世から消えてもらおうと、私がやりました」


 その後大変だったと、後に聞いた。

 正直、どうでもいいと、伯爵家三男坊は思う。

 何もかも面倒で、学園を退学した伯爵令息には、最悪な事態になる事が防げた事だけは、安堵していた。

 伯爵家三男坊の彼は、今の人生の前に、二度の人生経験がある。

 一度目は、技術が発展した世界で働きに働いて、往生した。

 と思ったら、この世界で伯爵家の三男として、生を受けていた。

 跡継ぎと補充は既におり、親に期待も失望もされない立場で育った伯爵家三男は、噂に聞く異世界転生を密かに楽しみ、学園に入学してからは、こっそりと図書館の魔術書を読み漁り、知識と実力を身につけ、将来は平民になっても困らないよう、備えていたのだが、卒業間際に事件が起こった。

 同学年だったこの国の第五王子が気に入っていた令嬢と、それにいつも苦言をしていた侯爵令嬢が、階段から落ちて命を落としてしまったのだ。

 その場にいた王子は、侯爵令嬢が男爵令嬢を押し、勢い余って一緒に落ちたと主張していたが、違うなと伯爵令息は分かっていた。

 時々見かける王子と男爵令嬢の様子や、侯爵令嬢の動きは、どちらに非があるのか明確にしていたし、魔法を使って王子と令嬢を引き離そうとしていたのが、魔力の多さを買われて学園に入学した、特待生の男子生徒だと気づいていたのだ。

 まあ、面倒すぎて、静観していたが。

 小規模の突風で、王子の衣服を全て切り裂き、すっぽんぽんにした時は、自宅に帰ってから腹を抱えて笑ったが。

 自宅に戻るまで、笑いを我慢し過ぎて、死ぬかと思ったが。

 そんな惰性が、あの事件を生んだ訳では、決してない。

 だが、その後は影響した。

 二人の令嬢の死は、特待生を闇落ちさせてしまった。

 そして、ついつい、伯爵令息は魔法を使って、彼を返り討ちにしてしまったのだ。

 結果、国を救った魔術師として、王城勤務を強要され、魔力が枯れて引退するまで、酷使されてしまった。

 伯爵家で、兄たちを支えてのんびりと過ごすつもりだったのに、後悔まみれの生涯だった。

 悔しい思いで息を引きとったら、直ぐに目が覚めた。

 在校生として、入学式の準備をしている最中だった。

 危なっ。

 伯爵令息が初めに思ったのは、それだった。

 今度は、関わりたくない、そんな思いしか、頭になかったのだ。

 だから、新学期早々退学した。


 第五王子は、王子とは言え、王位継承権はなかった。

 国王の平民の愛妾の子だったのだ。

 まあ、婚約者でない侯爵令嬢が、あからさまに苦言できるくらいだし、その後の特待生の処遇を見ると、明白だ。

 なんと、その正確な攻撃力や技術が目に留まり、国家魔術師として抜擢された。

 第五王子は歩けなくなり、療養と称して離宮に押し込まれたと聞くし、今回は平和に過ごせそうだ。

 前の人生では、階段で足を絡ませた王子の体を、令嬢の方に傾けさせて守ってしまったから、特待生のあの闇落ちは、後ろめたかったんだよな。

 




スマホの文字打ち、どんどん面倒くなって来ました。

早く、パソコン買えればいいんですが。

今月買える予定ですが、まだ未定です。

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