7話天王寺ルート2
翌日。
通常通り、学校の授業が終わるといつものように天王寺くんの元へ向かっていた。
なるべく普段通りに接しようと心がけていたのに昨日の彼の言葉が頭の中に響いていたせいで、私は頭の中が混乱していた。
当の本人は何食わぬ顔をしているのが腹立つ……でもこればかりは仕方ない。
ここで我慢しないと先には進まないのだから。
「最近、君の成績が飛躍的に上がっているって先生たちの間で噂になっていたよ」
突然、突拍子もないことを言うせいで私は思わず変な声が出てしまった。
「いきなり変なこと言わないでよ……」
「だって本当のことだから。それに僕がいなくてももう充分に頭は良いでしょ。それなのになんで僕に構う?」
「それは昨日も言った通り。私の好きだった人に似ているから見過ごせなかっただけ」
私の発言を聞いて、彼は目を丸くしていた。
まさか昨日と同じことを言われるとは思ってもいなかったのだろう。
「なら放課後、昨日と同じ場所に来なよ。僕の秘密を教えてあげる」
勉強に一区切りをつけてから、天王寺くんは図書室を出た。
放課後、私は約束通りに裏通りに向かっていると気になる色をつけた集団を見つけた。
「……赤色のバンダナ?」
前回、見たのは黄色いバンダナをつけていた男達だった。
彼等と何か関わりがあるのだろうか。
彼らを気にしつつも、狭い路地を通り抜けると赤いバンダナを身に着けた屈強な男たちが数十人集まっていた。
私の姿を見つけた途端、地面に落ちたお菓子に群がる蟻のように赤い集団が近付いてくる。
「おい、女ァ! ここはお前が来るところじゃねーんだよ」
こんなお約束みたいな絡み方をする不良ってまだいたんだ……
「私、ここで待ち合わせしているんだけど居たらダメ?」
「ダメに決まっているだろ! これからボスが来るんだからよ」
気が付くと私は赤い集団に逃げ道を塞がれていた。
「お嬢さ~ん? そろそろ帰ってもらわないと困るんだけどな」
別の男が近付いてきた瞬間、まるで銃を撃ったような衝撃音が周囲に鳴り響く。
「うるせえぞ、何があった」
音と同時にやってきたのは紛れもない天王寺くんだった。
学校の時とは違い、髪はオールバックにしており、近寄りがたい雰囲気を出していた。
赤いジャケットを着た彼はゴミ箱の上に寄りかかり、私を見ると少し笑っていた。
「本当に来たんだな」
「……約束したからね」
私と彼が普通に話しているところを周囲は驚いているのか、どよめき声で周りは満たされていた。
「静粛に、お前らに新しい仲間を紹介する。今日から赤龍の鉤爪の一員になる櫻葉琴音だ、女だが中々見込みのある奴だ」
「はあ!?」
私は今日初めて以心伝心という言葉が本当に実在していたことを知った。
天王寺くんに話を聞いてみると、彼は赤龍の鉤爪という不良チームの頭を張っているらしく、昨日の私の実力を見てスカウトを決めたらしい。
全くもって意味が分からない。
「お断りだよ、チームなんか入らない」
誰が予想できるのだろう、学校では秀才の彼が実は裏では不良チームの頭をやっていたことに。
……いや薄々何かおかしいとは思っていたけれど。
「俺のこと知りたいんじゃなかったのか?」
「それは……」
私が言い淀んでいると、後ろから天王寺くんを呼ぶ声が聞こえてくる。
「リーダー! 不良狩りをやっている奴の正体がわかりました!」
不良狩りという言葉に天王寺くんの顔が険しくなったのがわかった。
「不良狩り?」
それって天王寺くんが独自でやっていることでは?
私はそう考えていたが彼は私の言葉を聞き、待っていましたと言わんばかりに畳みかける。
「詳しく知りたいならチームに入れ」
これでもう私は逃げ道を完璧に塞がれ、渋々了承をした。
詳しく話を聞いてみれば見る程、やっぱり犯人は天王寺くんしか当てはまらない。
彼は一体何を考えているのか、私にはさっぱり分からなかった。
「お前ら、犯人見つけたら例え知っている奴でも信頼しているやつでも躊躇せずに戦え」
天王寺くんの一声でチームの人たちは雄たけびを上げ、路地裏から出て行った。
「桜葉、お前にしか頼めないことがある」
辺りに人がいないことを確認した天王寺くんは不安そうな顔で私に問いかける。
「……俺が俺じゃ無くなった時、周りに被害が出る前に俺を止めてくれ」
小刻みに震えている腕を抑えた彼の目は既に限界を迎えているように見えた。
私はただ頷くことしか出来なかった。
現実にいる彼とは違うことは百も承知だし、今、目の前にいる天王寺くんとは違うことも理解している。
それでも私は……彼が苦しそうにしている姿を見るだけで辛くなる。
だからこそ彼が災厄の王に取り込まれる前にどうにかしないと。
私が救うんだ。




