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6話 天王寺ルート1

 天王寺くんのルートが確定してから私は放課後、毎日図書室に行って彼と勉強を行っている。

 もちろん、自分自身のパラメーターを上げるためにやっていることだけど、天王寺くんといっしょに勉強をやるのが最近楽しいことがわかった。

 ……現実世界でもこういう風に上手くいけばいいのだけど。

 天王寺くんは学年主席もあってか、人に勉強を教えるのはかなり上手いほうだ。

 私が上手く自身のわからないところを言語化するのに手間取っていたら、彼はノートに書かれていた問題の解き方を見ただけで私の苦手分野を言い当てた。

「勉強教えるのが上手すぎて先生かと勘違いしちゃったよ」

「別に、当たり前のこと言っただけ。無駄口叩く前にペン動かしなよ」

 氷のように硬かった表情が一瞬だけ溶けかかったように見えた。

 私が少し笑っていたことに気づいたのか、彼は咳払いをしてまたいつもの表情に戻ってしまった。

 何故か震えていた腕を抑えていたのは少し気になった。

 

 

 本当に嫌になるぐらい天王寺くんは現実世界にいる彼と顔がそっくりなことに気づかされる。

「今日はここまでにしよう。もう夕暮れだしね」

 気づくとすでに校舎は茜色に染まり切っていた。

「時間が過ぎるのが早いね。まだ勉強でわからないところがあるからこの後少し、カフェでも行って話さない?」

 少し好感度が上がっていたのか、天王寺くんをデートに誘えることに気づいた私はすかさず追撃をかけた。

 天王寺くんは私の誘いを聞いて暫く考えたあと、答えを導きだしたのか最適解な答えを突き付けてきた。

「……今、この辺りで有名な不良グループが悪さしているらしいんだ。面倒ごとにまきこまれたくないなら寄り道なんかしない方がいい」

「それって昨日の連中と何か関わりがあるの」

 昨日、路地裏で天王寺くんは自分よりも図体が一回りも大きい相手をノックダウンさせていた。

 いくら馬鹿な私でもこれだけは理解できる。

 天王寺くんには何か隠し事をしている、それも人には言えない何かを。

「じゃあ、帰るから」

 特に何も言い返さずに図書室を後にした。

 寮に戻り、私は他の生徒に聞き込みをすることにした。

 本当に今、不良グループが街をたむろしているのか。

 少し話を聞いてみると、どうやら本当だったみたいでレッドアイズという不良グループが今、街で幅を利かせているらしい。

 天王寺くんは私の事を考えて教えてくれていたのに疑ってしまった。

 ……謝らないと。

「リーネ、行動制限まであと何分?」

「あと三十分で明日になってしまいます。……急ぐなら今かと」

 私には一日の行動制限があり、それを超えてしまうと強制的に次のイベントに移動させられてしまう。

 天王寺くんルートだけは失敗はしたくない!

 

 夜の繁華街は現実世界と同じように夜が深まっていても人で溢れかえっていた。

 天王寺くんがいそうな場所を考えると、ゲーム側が選択肢を出してきた。

「路地裏か、クラブか……」

 どちらかを当てれば天王寺くんの元にたどり着けるが、一つ外してしまえばまた一からやり直しになってしまう。

 私は……路地裏に向かうことにした。

 表通りはネオンの光で照らされているのに対して、裏通りは古ぼけた外灯がそれとなく夜を照らしているだけだった。

 足を踏みいれた途端、怒号が耳に入ってくるのを見逃さなかった。

「死ねや天王寺イ!!!!」

 声が聞こえた方へ向かうと、赤い頭巾を被ったスキンヘッドの男が天王寺くんに向けて今、まさにバットを振り下ろそうとしていたところだった。

「あ、あぶな……っ!」

 思わず声を出しかけたが、私は必死に堪えた。

 彼はそのままバットを止めてあろうことか、そのまま男の鳩尾に向けて勢いよく蹴りを繰り返した。

 それが合図になったのか、周りにいたレッドアイズの不良たちと単独で殴り合いを始めた。

 流石に人数が多いのか、かなり殴られているのにも関わらずに天王寺くんはそれを跳ね返すようにやり返していた。

 だが私はある部分に気が付いた。

「天王寺くん」

 私は黙って見過ごせる性格の持ち主ではない。

「……何で来たの」

 彼の目に私はどう映っているのだろうか。

「謝ろうと思って。でも今はそれどころではないよね、なんで自分を傷つける行為をしているの?」

 ハッキリ言って彼がやっている行為は普通の人が見たら異常でしかない。

 誰も止める人もいないだろう、でも私は違う。

「……君には関係ないって言ったはず。忠告もしたのに何でそんな理由で来るのかな」

 私の顔にめがけて平手打ちをしようとした天王寺くんは目を丸くしていた。

 まさか止められると思っていなかったのだから。

「貴方は私が好きだった人と似ているから見過ごせない……ってのはダメかな」

「いい加減にしてくれ、僕に関わるな!」

 拒絶反応を示すかのように私へありとあらゆる暴力が向かってくる。

 それを赤子の手をひねるように私は全て弾く。

「やっぱり優しいんだね、天王寺くんは」

 本気で相手を殺すつもりなら、凶器を使って相手を殺している。

 だけど私やレッドアイズの人間は変わらず生きている。

「そんなに僕のことが気になるなら、明日またここに来なよ。今度はそんな口聞けなくなると思うから」

 天王寺くんは少し含みがある言い方をし、路地裏を後にした。

 学校では優等生な彼の裏の顔は暴力性のある怖い人。

 彼は一体何を抱えているのか、気になっている自分がいたことに気が付く。

 


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