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4話

 グラウンドを出ると、既に辺りは真っ暗で夜の始まりを告げていた。

 寮とグラウンドまでは少し離れた距離にあり、歩くだけで片道五分以上はかかる。

 西ヶ原大付属は外界から遮断された山に作られた学校で校舎以外の施設は土地の関係上、離れた区画にある。

 グラウンドは山を下りた場所にあり、行き来するだけで疲れてしまう生徒が大半だ。

 夜になると外灯の光以外は辺り一面、闇に染まる。

 寮に戻ろうと早歩きで帰っているのに一向に見える気配がないことに私は焦る。

 そう、私は暗闇が苦手だ。

 小さい頃に森で迷子になって以来、私は明かりを点けないと寝られない体になってしまった。

「リーネ、リーネ? 起きて!」

 魂の姿になって私の体の中で寝ているであろうリーネに問いかけても起きる気配はない。

 そして私は重大な事実に気づいてしまった。

 もし、ここで彼女と出会った日に見た怪物とまた出くわしたら、私は今度こそ死ぬということを。

 私が能力を使えているのは彼女が顕現しているときだけ、つまり今はただの人間ということ。

 最初に見た地図には確かに寮とグラウンドの距離は片道五分程度と書かれていたけど、本来ならもう着いていい頃合いだ。

 もしかして迷ったと考えたがこのゲームにはプレイヤーが迷わないようにする為にガイド表示が出る。

 でもそれが出ない。

「……もしかしてバグ?」

 悪い予感が当たったのか、私が見ている視界が少しぼやけ始めた。

 眠気が体全身を覆い、既に立っているだけでやっとだった。

 何もない暗闇から突然、一滴の雫がこぼれ落ちていく音が鳴り響く。

 次第に音は大きくなっていき、大きな水たまりが出来ていた。

 静寂が訪れた後、水たまりは音もなく空中に浮き始め、人の形を作り始めた。

 私よりも大きな背丈になり、西ヶ原大付属のブレザーを着ていた。

「君が外の世界から来た女の子か」

 顔や輪郭まではわからなかったが、今、目の前に立っている存在がバグだということに気づく。

「貴方、だ、だれ」

 体が動かない状況で私は必死に声を絞り出す。

「厄災の王といえばわかるかな。この世界にバグをもたらせたのは僕たちだ」

 厄災の王と名乗った彼は動けない私の傍に近づき、急にしゃがんだと思えば突然、私の顎を上に上げた。

「僕は君や他の厄災の王たちを殺して外の世界に出る。素直に彼女の言葉を聞いとけば良かったのに、勿体無いことをしたね」

「それって……どういう」

 言葉を言い換えた瞬間、私の視界は弧を描いた。

 

「知る必要はないよ。君はここで死ぬからね」

 私の人生はここで切断された、もう二度と現実世界には帰れない。

 

 

 

「櫻葉さん!!」

 リーネの甲高い声で私は深い眠りから覚めた。

 辺りを見渡すと、つい先ほど出たばかりのグラウンドに私はまたいた。

「あれ、私、死んだはずじゃ……」

 急いで自分の首があるかを確認すると、リーネは私の奇行を見て落ち着いたのか、元の淡々とした口調で何が起きたのかを説明してくれた。

「バッドエンドになったんですよ、櫻葉さんは。本来ならあそこでゲームオーバーとなる筈だったんです。でも、私がセーブ機能を使っていたことでどうにか三十分前に戻せることが出来ました」

 バッドエンド……? ゲームオーバー?

 あまりの現実感のなさに実感が沸きそうになかったが、ここは黄金のシンフォニア。

 ゲームの世界、つまりこの後もあれ以上の事が起きる可能性はあるということ。

「リーネ、その……私を助けてくれてありがとう。もう二度と同じミスはしない為にも私に厄災の王についてとセーブのこと教えてくれないかな」

「わかりました。ではついて来てください」

 

 時刻は既に夜の十時過ぎ、私はリーネに連れられて学校の地下にやってきていた。

 まさか体育倉庫の下に古びた神殿があるとは誰が思うのだろう。

 リーネに連れられ、およそ五分。

 外の光が差し込んでいる場所までやってきた。

「さて、何から話せばいいのやら……」

「リーネが話しやすいとこからでいいから」

「では厄災の王から話しましょうか」

 黄金のシンフォニアに登場する厄災の王たちはゲーム内の設定ではプレイヤーを直接攻撃することはないとリーネは言った。

「ですが、何等かの原因でバグが発生してしまい、私と同じようにゲームの役割から外れてしまったんです。櫻葉さんを襲ったのもゲームにはない要素ですけど」

「じゃあどうすれば……」

「厄災の王に支配されている攻略対象のキャラクターを襲われる前に攻略すればいいんですよ、そうすれば元の世界に帰れるのも早くなる」

「わ、私に複数の男とこ、交際しろって言ってんの??」

 破廉恥極まりないな、この聖女。

 でも……攻略しなければ元の世界には帰れないし、また殺されるの嫌だ。

 あんなことはごめんだ。

「覚悟を決めるしかないのか……」

「さぁ、セーブ機能を使って早く本編を進めましょう。攻略対象たちが待ってますよ」

 リーネの教えに乗っ取り、彼女そっくりな像を使ってセーブをした。

 これで何かあっても、この空間に戻れることが出来るらしい。

「またバッドエンドにならなきゃいいけど……」

 最初の攻略対象を選択する画面で私は彼を選ぶことにした。

 

 


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