27話 最後の審判2
目をつむると浮かんでくるのは私が正義という名の暴力をしてしまった日。
中学生の頃、私は友達をいじめから助けたことから皆から正義の味方だと持て囃された。
まだ子供だった私は図に乗ってしまった、皆から褒められるのは誰だって悪い気はしない。
それからというもの、学校で問題が起きる度に私は問題を解決してきた。
いじめをする者、弱い子達からお金を巻き上げる者、数えるだけでキリがないけど私は皆のために正義の味方になってきたつもりだった。
初めは学校だけでの知名度が次第に噂は広まっていき、私はいつしか鮮血の女王とまで呼ばれるようになった。
私の異名の噂を聞き、喧嘩を吹っ掛けに来る人間は多くいた。
そりゃあ当然だよね、私はそれだけ多くの人間を敵に回した。
いじめっ子のお兄ちゃんが弟の敵討ちに来たり、不良チームのリーダーがタイマンを仕掛けて来たりともう正義の味方の範疇を超えた。
挙句の果てには私をリーダーにしたグループが出来て、私を暴れる理由にして多くの迷惑を街の人にもかけていたことを後から知った。
正直言って限界だった、私が思い描いていた正義の味方は誰かに寄りそうことが出来る優しい人だった。
でも周りからはそう思ってもらえてなかったということ。
順調に見えていた正義の味方生活は徐々に終わりを告げる。
私は最初に助けた友達に裏切られた。
「琴音、助けて」
私に届いた純粋なSOS。
誰かのために助けられる人間になりたい、なりたかった私は彼女の言葉をそのまま鵜呑みにした。
だって仕方なかった、私には断る理由がない。
同じグループの子が理由をつけて暴力を振るってくる、そう聞かされた私は黙っていることは出来なかった。
私の右腕だった茜は止めてくれたのに私は見向きもしないで主犯格がいる教室に乗り込んだ。
既に私の異名が広まっていたこともあり、昼休みで盛り上がっていた教室は沈黙に飲まれれた。
「ちょっと話があるから校舎裏に来て」
彼女から教えられた情報通りの主犯格の生徒は私に指名されたことに困惑していたが、冷静になれていなかった私は無理やり引っ張った。
「ちょっと待ってよ、私が何をしたって言うの!?」
「この状況で嘘つくなんて最低だね」
当時の私は考えていた、いじめをしていたことを謝るなら許してやろうと。
これが間違いだった、傲慢だった。
誰だってやってもいない罪を着せられたら、反論はする。
覚えがないなら当然のこと。
「だから私はそんな子、知らないよ! 本当に聞いたの?」
「あの子が嘘をついたって言うの?!」
気が付くと私は彼女の頬を殴っていた。
私にとって幼馴染の子は大事な友達だった、転校してきて間もない私と友達になってくれた。
優しくて頼りがいがあって友達からも好かれる子がいじめられるなんて考えられない。
だから最初にいじめられたことを知った私は彼女を助けた。
だから今度もまた上手くいくと思っていた。
ありがとうと言ってくれると思っていた。
「あーあ、本当に殴っちゃうなんてね。馬鹿みたい」
木の裏にでも隠れていたのか、彼女は私を見て嘲笑っていた。
彼女は聞いてもいないのに真実を語った。
私が次第に人気者になっていくのがムカつく、誰のおかげで皆から好かれているのかを分からせたかったと喜んで言っていた。
私は暴力事件を起こしたことで私の周りから人はいなくなり、残ってくれたのは茜一人だった。
私は今ある罪から逃げた。
女の子らしく生きていくと身勝手な理由をつけて。
「お目覚めかい、いい気なもんだね聖女様は」
目を覚ますと私はいつか見たステージに立っていた。
……ここは翔太朗がオーディションに参加した会場だ。
「ずっと私が起きるまで待っていたの獅童は」
「ああ、君が新しい答えを得るまでね。……その顔だと答えは出たんだね」
獅童は私が答えを得るための夢を見ていたことをどうやらわかっていたようだった。
「ええ。私は虚構の王、蘇芳翔太朗のように自分が犯した罪に立ち向かわなきゃいけなかった」
翔太朗は仲間のために熱くなれる人だった故にその優しさを利用された。
自分が描いた夢は自分の甘さで壊れていき、周りから人は離れていく。
それでも彼は諦めなかった、周りからの悪評を覆そうと最後まであがいた。
私には出来なかったことだ、自分の都合のいい夢を勝手に作って罪から逃げようとした。
私に足りなかったものは
「私に必要だったのは最後まで挫けない心だったんだ」
私の答えに同調するように校内で浮かんでいた生徒たちの目が輝きを取り戻していく。
「さあ、次が最後の山場だよ」
彼の手に引かれ、やって来たのはサッカースタジアムだった。




