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26話 最後の審判1

 


「なに、これ……」

 翌朝、学校へ登校すると信じられない光景が広がっていた。

 友人といっしょに登校する者、生徒にあいさつをする教員、学校周りを走っている陸上部員、どれも日常にありふれた光景だ、私はその当たり前が現実世界に戻るまで続くと思っていた。

 でもそれは間違いだった。

 誰が信じるのか、生徒たち全員が空中に浮かんでいることを。

 これじゃあまるで海の中じゃない!

 私はこれをやってのけた人物を知っている。

 深海の王、獅童凛。

 彼しかいない。

 校内へ入るとやはり生徒たちは浮かんでおり、誰も生きていなかった。

 この現状だと、天王寺くんや翔太朗、二階堂先輩は……

 いや考えるのは辞めよう。

 今までの厄災の王たちとは比べ物にならないぐらい強い力を感じる。

 私は聖女の力があるから平気だけど、長時間いたらいくら私でも耐えられない。

 獅童は生徒会長だって言っていた、なら場所は見当がつく。

 生徒会室の扉を開けると、やはり獅童が待ち構えていた。

「来てくれたんだね、嬉しいよ」

 

 私に話しかける声は優しくフレンドリーに感じるが、彼の表情は一切変わっていなかった。

 周囲には他の生徒会役員だろうか、彼の後ろで浮いていた。

 明らかに異常な光景なのに私は何も体を動かせることは出来ない。

「……話ってなんなの? 水槽に入れるって話ならお断りだけど」

 辛うじて動く口で見栄を張ったけど、やっぱり息が苦しい。

「君の審判の話だよ」

「審判?」

「昨日も言ったけど、僕は最後の厄災の王であり、最期の審判だ。今までの君の行いも全部今日のために用意されたものだと思ってくれていい」

 私が今までにやってきた行い……?

 その言葉を聞いた瞬間、胸が締め付けられるような気持ちになった。

「君が出会った王たちとの過去を見て、君がどう思ったのかを知りたい。例えその答えが間違っていても僕は否定も肯定もしない」

「もし、答えなかったら……?」

 獅童は無言で自分の後ろにいる生徒を指差す。

 何もしなければ死ぬしかないと。

 なら答えは決まっている。

「わかった、やるよ。なにからやればいいの」

 私は決めたんだ、どんなことがあっても生きて現実世界に帰るって。

 それが私自身を苦しめることになったとしても。

「それは自分がよくわかっていることじゃないか。どんな手段で得た答えでも僕は何も言わないさ」

 獅童は私に微笑むと、体を泡に変えて海の底へと消え去った。

 

 

「みんなの過去を見て自分が思ったこと、か」

 目を閉じると最初に浮かんでくるのは天王寺隼人くんだった。

 隼人くんは怖いくらい強かった。

 殴り合いも勉強も誰も手も足も出ない。

 最初はそんな彼に憧れていたんだ。

 自分らしく生きている隼人くんが私には眩しく見えた。

 でもそれは違った。

 破壊衝動に何年も苦しんで、自分を倒してくれる人をずっと探していた。

 大切な仲間を傷つけないために。

 本当は優しい人なのに厄災の王に飲みこまれて暴力の化身になった。

「だから私は思ったんだ。強さっていうのは誰かを殴ったりとか、傷つけたりとかじゃない。自分の弱さを認めることが強さなんだってことを隼人くんに教えられた」

 過去の私には出来なかった。

 私は自分の過ちに気付こうとしなかった、あろうことか無かったことにしようとした。

 過去から逃げちゃいけない、向き合うべきだと逆に教えられたんだ。

 今度は私が恩返しする番だ。

「それが君の答えか。なら私もそれに答えるしかないな」

 獅童が指を鳴らすと、校門にいた生徒たちは息を吹き返したのか、時間の針を動かし始めた。

「次の王の話を僕に聞かせてくれ。櫻葉」

 皆の命は私にかかっている。

 私は自分の心の扉を更に開けることにした。

 

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