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23話 二階堂ルート4

 二階堂先輩が消えてからのサッカー部は徐々に酷さを増してきていた。

 サッカー部は今の彼、虚像の王に実権を取られてから練習メニューはプロでも根を上げてしまいそうな過酷なものになっていた。

「人間をなんだと思っているの……っ!」

 千本ダッシュを五本、休憩を入れずに紅白戦三本、シュート練習、筋トレなどこれは誰が見てもいずれ死人が出る。

 私はサッカー部の監督に止めるように声を上げてみた、でも既に彼の毒牙にかかっていたのか、監督は何もすることは無かった。

 むしろもっと酷かった。

「彼に任せれば勝利は手に入るからね、多少の生き死には仕方ないよ」

 教育者にあるべき言葉の数々に私は言い返せなかった。

 これが虚像の王の力……? いやこれほどまでのカリスマは二階堂先輩本人がゼロから築いたもの。

 だからこそ、その力を利用して厄災の王は自分だけの王国を作り上げた。

 王が支配する国民じゃなければ誰もつけ入る隙はない。

「……果たして本当にそうなのかな?」

 今の私のステータスは最初に比べると一定の値まで上がっている。

 つまり私のかしこさはかなり上がっていることになる。

 曖昧すぎる要素を使っている時点でかしこくはない気がするけど、今は無視。

 いつの時代だって悪逆の限りを尽くした王は国民の反乱によって倒されるのが当たり前。

 なら私がやれることは決まっている。

 王に反逆にしようとしている人を探し出し、二階堂先輩と虚像の王の接続を断ち切る。

 

 別の日の放課後。

 私はある部員をターゲットにすることにした。

 二階堂先輩ルート初日に出会った一年生の赤津史郎くんだった。

 彼は中学生時代、自分が所属するサッカー部を県大会優勝まで持ち上げたエースで、この高校にはスポーツ推薦で入学をした。

 だが二階堂先輩が率いる西ヶ原サッカー部はそんなエースだった彼でさえもレギュラーにはなれずに良くて三軍のベンチだ。

 そのような現状を良くは思ってはいないだろうし、何より虚像の王に対する反逆の心は必ず持っているはずだ。

 そこで私は実際に彼に話を聞くために一年生の教室に訪れた。

 部活がこれから始まろうとしているのに赤津くんはまだ教室にいた。

「二階堂先輩をどう思っているか……ですか」

 彼が虚像の王に操られていなければいいけど。

「うん、君からの口で直接聞きたい」

「これ誰にも言わないでくださいね」

 穢れのない顔で笑うと、彼はまるで水を飲むように肺に空気を入れ込み、自分の思いを解き放った。

「先輩は下のメンバーに対しても優しくて、自分の練習のためだと言いながら僕らの練習に付きあってくれたことがあります。でも今の先輩は昔みたいな優しさがない、むしろ人に文句を言うくせに……自分のミスには寛容のがすごい腹立ちます!」

 私は彼の言葉に違和感を覚えた。

 部員のみんなは先輩がミスしていたことには全く気付かず、ただ従っているだけだった。

 でも赤津くんは先輩がミスしていたことに気付いていた、つまり彼は虚像の王に操られていないことになる。

「以前の二階堂先輩と今の二階堂先輩の違いってそれだけ?」

「そうですね、明確に違うのは……後輩である僕のことを覚えていないって言ってました。僕は先輩に憧れてここに入ったのに」

 虚像の王の術中に嵌らないのは二階堂先輩のことを表面も裏も含めて見ている人だけだ。

 呪いに侵された王を救えるのは民だけであり、また悪に溺れた王を追い詰めることが出来るのもまたしても民だけだ。

 ……仲間が必要だ。

 私は赤津くんに二階堂先輩の異変に気付いている人が他にいないかを探してもらうことにした。

 

 グラウンドに向かうと虚像の王は他の部員を率いて私たちを待ち構えていた。

「……随分遅かったみてーだな。何してたんだ」

 虚像の王は私が考えていることがわかったのか、私を敵として鋭い眼光で睨んでいた。

「先輩にはこれから下位チームのメンバーと試合してもらいます。……勝ったチームは相手の願いを一つ聞くというのはどうでしょうか」

 赤津くんはたった数分で二階堂先輩の違和感に気付いていた部員十一名を連れてきてくれた。

 先輩はもしかしたら気付いていなかったかもしれないけど、みんな先輩を慕って強豪サッカー部に入部してくれたんだよ。

 自分が下位チームになるかもしれないと思っていてもいっしょにサッカーをしたいと思ってくれた。

 だから負けないで先輩。

「カスを寄せ集めたぐらいで何ができるんだ。俺に勝てる訳ないだろ」

「ええ、確かに一人だけだったら勝てないとは思いますよ。でもサッカーはチームスポーツ、誰か一人でも欠けたら出来ないスポーツです」

 みんな言っていた。

 二階堂先輩の技術力はプロとなんら変わりないが、周りを活かす能力は世界一だと。

「さあ、反逆の時間ですよ」

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