20話 二階堂ルート1
私は早速、二階堂先輩について詳しく調べることにした。
今まではリーネのサポートで攻略対象たちを攻略してきたけど、今回の攻略からは一人だ。
「気を引き締めていかないと」
まず私は自分のステータスを確認した。
……うーん、やっぱり最初に隼人くんルートに行ったからか、マネージャーの称号は消えてる。
やっぱり今の二階堂先輩の私に対する印象は恐らく最悪なんだろうな。
こればかりは仕方ないと思った私は外堀を埋めることから始めることにした。
自然と私は図書室へと向かっていた。
「あれ、琴音? どうしたんだ」
図書室にはいつも通り、勉強をしていた隼人くんがいた。
以前と大きく違うのは表情が明るくなったことだ。
まるで憑き物が落ちたみたいに。
私がやってきたことは間違ってなかった、こんな私でも誰かを救うことが出来たんだ。
「実は折り入って相談がありまして……」
私は一つ考えた。
外から来た私には攻略対象たちの過去は分からない、私にわかるのは厄災の王に呪われた後の彼等のみ。
そこで私はゲーム内にいる過去の攻略対象含めたNPCたちに次の攻略対象がどう変化していったのかを聞くことを決めた。
「二階堂先輩はこの高校のサッカー部の主将なのは琴音も知っていると思う。彼は百人いる部員を束ねるだけのカリスマがあってそれに劣らない実力もある天才プレイヤーだ。ただ……」
隼人くんは少し言いづらそうに私から目を背けた。
「これはあくまで噂だけど、学校側からかなりのプレッシャーをかけられてるらしい」
これ以上はわからないと隼人くんは言ったが、良い収穫だった。
「ありがとう隼人くん。助かったよ」
「琴音がこれから何をしようとしているかは大体予想はつく。僕を救ってくれたように先輩も助けるんだろう」
隼人くんは微笑みながら、私の目を見ていた。
「うん、困っている人は誰であろうと助けなきゃね」
「やっぱり叶わないな、琴音には。でもこれだけは忘れないでくれ、お前が困っているなら僕はどこにでも駆け付けるから」
隼人くんと次の勉強会の話をし、私は図書室を後にした。
次はアイツのとこに行こう。
トニーランドの仕事が終わった翔太郎に連絡をすると、一分も経たない内に返信がやってきた。
「……私、愛されてるな」
と、自分でバカな彼女みたいなことを言ってしまうぐらいには私は彼を信頼していた。
指定した場所に行くと、そこは以前まで短期アルバイトをしていた翔太郎の事務所だった。
事務所の前には道行く人々よりも一回りも大きいよく知っている人物が立っていた。
「よ、久しぶり」
「ひ、久しぶり……」
あの一件以来、翔太朗の顔を見るのが少し恥ずかしい。
少しでも気持ちが動いたら、現実世界に帰れなそうな気がしてならない。
「内容はちゃんと確認してる。……明先輩のことが知りたいんだろ」
翔太朗が言うには二階堂先輩は翔太郎の事務所の先輩らしく、部活で忙しいのにも関わらずにたまにあるオフの日にはモデルの仕事をやっているらしい。
「俺、馬鹿だったからさ、明先輩に聞いちゃったんだよ。バイトをやる理由」
二階堂先輩は……家族を養うためにバイトをしているらしい。
平日の練習が終わったあとに一人で尋常じゃない量の練習をし、オフの日は一日モデルの仕事をする。
これじゃ自分の時間なんか取れる訳が無い。
誰か止める大人はいなかったのか。
「琴音、悪いことは言わないからさ、危ない真似はもう辞めてくれない?」
私の表情で気づいたのか、翔太朗の顔はこれ以上ないほどに不安な顔をしていた。
「俺はお前が傷つくところなんか見たくないんだよ……まだ俺はお前に恩を返しきれてない」
「それでも……やらなきゃいけないんだ。私には使命がある」
現実世界に帰って彼に私の全てを知ってもらわなきゃいけない。
翔太朗には申し訳ないことかもしれない、正直心が苦しい。
でも心を鬼にしないと。
「だから心配してくれてありがとう、私なら大丈夫だから」
一人でも私は戦わなきゃいけない。
自分がこれまでしてきた罪を彼に知ってもらうためにも。
翌日の放課後、グラウンドには夕日が差し込んでいた。
寮の門限はとっくのとうに過ぎているはずなのにサッカー部の部員たちはまだピッチを走らされている。
その中心に立つのは西ヶ原の絶対的なキャプテン、二階堂明。
既に彼は私の知っている先輩では無くなっていた。
「おい、もっと正確にクロス上げろ! それでジュニアユースだったのか?」
低く、冷たい声。
日焼けした肌、鋭い目つき、長めの髪が風に揺れている。
まるで百獣の王だ。
「先輩……もう俺限界です」
過剰な練習に耐えきれなかったのか、一年生は倒れそうになった。
「練習について来れない奴は帰れ、キャプテンについていけない奴はいらない!」
二階堂先輩の隣に立っていたのは副キャプテンの藤堂帝人先輩だった。
翔太朗が言うには藤堂先輩は二階堂先輩の右腕で冷静な判断で二階堂先輩をサポートする人らしいが……
どうもそう見えなかった。
「思っていた以上に問題は深そう……」
私は勇気を振り絞ってグラウンドへ向かっていった。




