表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する  作者: 鳥助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/56

32.希望

 私は崩落した瓦礫の前に立った。隣にはつるはしをもったハイドとガイが控えている。


 崩落した瓦礫は大きく、このまま一つずつ運ぶのは困難だ。なので、細かくして運び出す必要がある。


「じゃあ、私は魔法で砕くから、二人はつるはしで瓦礫を砕いて」

「任せて。僕はレティシア様の言う事を信じるから」

「俺もだ。早くみんなを助けないとな」

「えぇ、その意気よ。じゃあ、始め!」


 私は声を上げると、魔法を発動させる。強力な風魔法を巻き起こし、大きな瓦礫を小さな瓦礫へと壊していく。


「ちょっと、後ろに二人。動けるんなら、砕いた瓦礫を持っていってくれない?」

「だが……中の奴らは」

「中の人達は生きているわ。だから、協力して」

「……分かった」


 鉱員の二人はヨロヨロと立ち上がると、小さなくなった瓦礫を回収して一輪手押し車に積んでいく。


 その間に私たちは大きな瓦礫を砕き続ける。しばらく、黙って瓦礫を砕き続けていると、二人の動きが止まった。


「結構、力のいる作業だね。もう手の皮がむけちゃったよ」

「手の皮くらい仕方がない。この場で動けるのは俺たちしかいないんだ」

「二人はつるはしを使うのは初めてだったわね。休みながらやってもいいわよ」

「レティシア様だけを働かせるわけにはいかない。僕だってこういう時に役に立ちたいんだ」

「中の奴らを救出したいしな。手を止めるわけにはいかない」


 二人に慣れない仕事をさせてしまった。少しでも人手が欲しい今、二人には頑張ってもらわないといけない。でも、無理もして欲しくない。何かいい案はないか考えていると、後ろから気配がした。


「つるはしの使い方がなってねぇ」

「それを貸しな」


 後ろで作業を見ていた鉱員たちが前に出てきた。二人は鉱員につるはしを手渡すと、鉱員たちは慣れた手つきで瓦礫を砕き始めた。


「あなたたち……」

「まだ、信じられねぇけど……黙って見ていることが出来なかったんだ」

「俺たちだって生きているって思いてぇよ」

「大丈夫、みんなは生きているわ。だから、この瓦礫を撤去するのよ。二人は瓦礫の運搬をお願い」

「それなら任せて。つるはしを使うよりは簡単だから」

「ここ数日間はずっとその作業をしていたし、任せろ」


 ここに来て、周りがとても頼もしくなった。これなら瓦礫撤去も進んでくれる。嬉しさを押し込んで、私は魔法で瓦礫を砕き始めた。


 ◇


「なんてこったい……本当に崩落してる!」


 作業をしていると、後ろからそんな声が聞こえた。振り向くとそこには大勢の女性たちが駆けつけていた。


「そんな……あんたー!」

「死んでないよね!? 崩落に巻き込まれてないよね!?」

「どうしてこんなことにっ!」


 女性たちは私たちを押しのけて瓦礫に密集した。声を上げ、瓦礫をどかせようとするが瓦礫はびくともしない。


「落ち着いて! 今、瓦礫を撤去しているから!」

「瓦礫を撤去って……この崩落からみんなを助けられるのかい!?」

「こんな崩落初めてよ。こんなの助かりっこないわ!」

「大丈夫だって言っていたのに……どうしてこんなことに……」


 女性たちもこの瓦礫を見て、愕然としていた。だから、希望を示す。


「大丈夫! みんなはちゃんと生きているし、この崩落も50メートルぐらいよ。それぐらいの瓦礫を撤去すれば、みんなは助かるわ」

「な、なんでそんなことが分かるんだい!? とても信じられない!」

「私には叡智という頼りになる相棒がいるの。その叡智が教えてくれたのよ!」

「叡智ってなんなの?! そんな訳の分からないものに頼れって言うの!?」


 ……ダメだ、ここでも叡智の話題は受け入れられないらしい。でも、叡智の言う事は絶対だから、信じる気持ちは変わらない。


 すると、少年の母親が前に出てきた。


「叡智の事、この子から聞いたわ。とても優れた存在なんだってね」

「えぇ、そうなの! 私たちにはない知識があるし、普通では考えられない力だってあるの!」

「……あんたの言った事、本当に信じてもいいんだね」

「えぇ、嘘はついていないわ」


 少年の母親は叡智の事を信じてくれる。私は嬉しくなって、笑顔で頷いた。すると、その母親は真剣な顔で考えると、後ろを振り向いた。


「この領主様が言った通りに、きっとみんなは生きている。だから、諦めずに瓦礫の撤去に力を貸そうじゃない」

「本当に信じるの?」

「信じたいけど、けどっ!」

「瓦礫に押し潰された可能性だって……」

「大丈夫。死んだ人はいないわ。だから、最後まであきらめずに心を強く持って」


 戸惑う女性たちは私の言葉に複雑な表情をした。信じていいのか、分からないという表情だ。自分たちを見捨てた代官に連なる領主だ、まだ心から信用は出来ていないのだろう。


 みんなが表情を暗くする中、少年の母親だけは顔を上げていた。


「旦那を助けたくないの!? 気をしっかり持って、自分たちの手で助けるんだよ!」


 落ち込む女性たちを叱咤した。その言葉に女性たちはハッとした表情になり、目に光が戻る。


「そうよね。私たちが助けなきゃ!」

「まだ生きている、それを信じる!」

「やりましょう!」


 女性たちは息を吹き返したように声を上げた。その目には希望の光が灯り、心は強く上を向く。


 みんなの心が一つになった。これなら、崩落に巻き込まれた鉱員たちを助けられる!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
生きているって言ってんだから希望を・・・ 町長「アヘェ……ァっァっァっ」 ダメかもしれない (´>∀<`)ゝ(´>∀<`)ゝ 「「もう出られないと思ってた中の呼び出しだったからやりすぎちゃった」」 ?…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ