21.打開策
私は叡智の言葉を期待して待った。
『現状を変えるには、魔石と鉄の採掘が必要です』
「なるほど。魔石と鉄の採掘……って、それがもうないんだって!」
叡智から聞かれた言葉は期待していた打開策ではなかった。
「魔石と鉄が採れないのに、採れなんて……無茶振り過ぎるじゃない!」
「……いえ、現状を見るとそれしか方法がないですな」
「それは現場が一番良く分かっているんじゃないかな? でも、それが出来ていないということは……」
「ただ、その場所を見つけられていないってだけか?」
そんな叡智の無茶振りも三人は真剣に考えてくれる。私一人なら、叡智に怒っていたところだわ。
『鉄という金属が生まれたのはその昔、まだこの星が生まれるまでにさかのぼります。その時、星は』
「あー、また出た! 良く分かんないうんちく! そんなのいいから、本題に入ってよ!」
『……ある時期に鉄という物質が出来上がり、造山運動により鉄が含まれる鉱床が隆起して地上に押し上げられました』
「それが本題?」
『その時出来たのがゴルドーゼ山脈です。なので、このゴルドーゼ山脈には鉱物が眠っているとされる山脈になったのです。なので、資源が枯渇することは殆どないでしょう』
叡智の話を要約すると、ゴルドーゼ山脈は鉱物の宝庫っていう事になるわね。
「じゃあ、魔石や鉄が枯渇することはありえないって言っているの?」
『その通りです』
「そしたら、なんで鉄や魔石が採れなくなったのよ!」
叡智はまだ採れると言っているのに、現実はもう採れていない。どっちが正しいというの!?
「叡智様はなんとおっしゃっているのですか?」
「えーっと、ゴルドーゼ山脈自体が鉱物みたいで、鉱物がなくなるのはおかしいって言っているわ」
「ゴルドーゼ山脈自体が鉱物……そんな見方があるなんて知りませんでした」
「えっ、ゴルドーゼ山脈って三つの地方に連なる山脈じゃなかった? でも、その中で採鉱しているのはこの領だけだよ」
「もし、ゴルドーゼ山脈自体が鉱物だっていうのなら、他の領も採鉱しているはずじゃないか?」
そう、ゴルドーゼ山脈は三つの地方に跨る大きな山脈だ。だけど、他の地方では採鉱しておらず、このランベルティ地方しか採鉱していない。ということは、叡智が嘘を言っているってこと? でも、叡智が嘘を言ったことはないし……。
『隆起の仕方によって、鉄が含まれる地層の場所は違います。その地層が外側近くに出たのがランベルティ地方だったのでしょう』
「鉄がある地層に偏りがあるっていうの? 大昔の話は良く分からないわねぇ」
『一から勉強しなおせば分かりますよ。暇つぶしにどうですか? 魔石の誕生の話でも聞きますか?』
「ちょっと興味があるけれど、今は領地運営の方が重要だわ」
なんだか話が逸れてしまったわね。ここから軌道修正よ。
「じゃあ、ゴルドーゼ山脈からはまだ鉄と魔石が採れるっていう話なのよね。でも、現実は新たな魔石と鉄は見つかっていない」
「現場もきっと新しい魔石と鉄を探しているに違いありません、それも年単位で」
「それで見つかっていないのだから、これから探すのは大変じゃないかい?」
「現場の人が努力して見つけられないものを見つけるのは……」
現場だって採れなくなって大変な思いをしている。きっと、新しい坑道を掘ったりして探しているのだろう。でも、それで見つからないとあれば、新しい魔石と鉄を見つけるのは苦労しそうだ。
『それなら問題ありません。私が土地を検索して、地層を見つけ出します』
「そっか、叡智には検索機能があったんだわ。じゃあ、叡智の能力で魔石と鉄が出る地層を検索して見つけ出すことが出来るってこと?」
『可能です』
その言葉に一気に全身に力が漲った。これだったら、普通に探すよりは簡単に魔石や鉄が見つかるかもしれない!
「三人とも聞いて! 叡智なら魔石と鉄が含まれた地層を見つける事が出来るかもしれない」
「本当ですか!?」
「叡智って本当に何者?」
「そんなことはどうでもいいだろう。これでなんとかなるんじゃねぇか!」
なんとか突破口を見出せそうだわ。あとは実行あるのみね!
『ですが、問題もあります』
「えっ、問題?」
『現場の人間が動いてくれない可能性があります』
現場の人……鉱員が動いてくれない?
「どうして、そんなことが分かるの?」
『決算書と人口推移を思い出してください。鉱員の費用が年々下がっているのに対し、鉱員の数は減っているどころか増えています。仕事がなくなった鉱員の生活費が減っているのに、生まれてくる人が増えてきている』
「……苦しい生活を余儀なくされているって事ね」
他で生きていく力のない鉱員たちは逃げ出すことも出来ず、その土地に縛り付けられている。仕事がない絶望を感じながら、日々の生活が緩やかに低下していく日々は残酷だ。
上は腐りきっていて、鉱員のことなどお構いなしに私腹を肥やしていた。こんな状況が長年続いてきたのだから、相応の怒りが溜まっているに違いない。
そんな状況で素直に働いてくれるとは思えない。だけど、私は――
「鉱員に会いに行くわ」
折角見つけた光明を手放すわけにはいかなかった。




