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追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する  作者: 鳥助


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20.領の財政(2)

「はぁ……とりあえず、とんでもない借金を抱えているっていうのが分かったわ」


 事務室に戻った私たちは目の当たりにした領の借金に意気消沈としていた。今年の決算書がなかったから、今年に出来た借金の事なんて全然分からなかった。


「衝撃的でしたな。果たして、この領を立て直すことが出来るのか……」

「それぐらいの規模の借金だったね」

「資源が底をついた領が出来る事ってなんだ?」

「まぁ、それは後で考えましょう。とりあえず、今は領の財政を確認するのが先決よ」


 気を取り直して、私たちはまた決算書を確認した。


「それにしても、領館で使われている金額が多いのが気になりますね」

『おそらく、領館で働く従業員にも口止め料が支払われたと思います』

「従業員にも口止め料か……。それにしても、この金額は多いわ」


 借金の次は費用に目がいった。この領館を維持するにはそれなりの金額がかかると思っているが、それなりの金額に留まらず、費用はかなり高い水準だった。


「最低でもこの五年間は領館を維持するのに、沢山のお金が支払われていたと言ってもいいわ」

「僕たちが苦しんでいる間にここで働いていた人たちは私腹を肥やしていたというわけか」

「くそっ……! 自分たちの事ばかり気にしやがって!」


 ハイドとガイは険しい顔をして悪態をついた。


「なるほどね、あの子が言っていた意味が分かったわ。リビルは今まで自分たちに良い思いをさせてくれたけれど、新しい領主の私が良い思いをさせてくれるとは思えないわよね」

『今までよりも厳しくなる可能性があるのでしたら、財政が悪いこの領に留まる理由はありません。きっと、継母も従業員を引き抜くために良い条件の就職先を斡旋したのでしょう』

「そうね。だったら、簡単にこの領を見捨てる事が出来るわ」


 今まで美味しい思いをしていた人達だから、厳しくなるのが目に見えている場所に留まるとは思えない。改めて誰も残らなかった事の理由がはっきりとしてスッキリした。


「まぁ、そんな人達に残られたら逆に大変だったかもね。領館で働く人達を一新できて良かったわ」

「ですな。もし、残られてあれこれ言われたら大変な事になっていたかもしれません」

「そんな人達、いない方がいいよ」

「今は人数は少ないが、全員働く意思がある奴らだけだ。その方が良い」


 結果的に意欲のある人が集まったわけだし、良しとしよう。


「支出で他に気になるところはある?」

「それ以外では特にありませんね。どれも妥当な支出だと思います」

「僕も同じ意見」

「俺もだ」

「叡智はどう思う?」

『特にありません』

「なら、支出で問題だったのは買い入れた魔石と鉄の金額と借金返済の金額ぐらいね。じゃあ、次に収入の部分を見ていきましょうか」

『でしたら、人口の推移が分かる資料もあった方がいいと思います』

「そう? 人口の推移が分かる資料を探してちょうだい」


 叡智の助言を受けて、私たちは人口の推移が分かる資料を見つけ出した。そして、決算書の税収と人口の推移を見比べていく。


「税収は横ばいね……。それに比べて人口の方は……減っていっているわ」

「魔鉄の生産が少なくなって、仕事が減ってきたせいでしょう」

「人口が減っていっているのに、税収が横ばい? それはおかしいんじゃないかな?」

「普通なら税収も減るはずだ。仕事も減っているのであれば、そちらからの税収も落ちるはず」


 人口は減っているのに、税収が横ばい。それから導き出される答えは一つだ。


「年々、税金を上げてきたのね」

「そういえば、商売に掛かる税金も年々上がっていった覚えがあります」

「僕も覚えている。税金だけじゃなくて、家賃も上がっていた」

「数年で生活が苦しくなるくらいにまで上がっていったよな」


 借金が嵩み、少しでも収入を増やすために徴収する税金を増やしてきたのが現状だ。人口が減ればその分だけ税金を高くしてきたのだろう。


「今はどれだけの税金を取っているのかしら」

『照らし合わせると、給与の三分の一以上二分の一未満を税金に取られている形になります』

「給与の三分の一以上二分の一未満!?」


 えっ、そんなに税金をとっても大丈夫なの!? 私が三人に視線を向けると、苦しそうに表情を固くした。


「えぇ、それぐらいの税金を納めていました」

「税金のために働いているようなものだよね」

「税金のせいで貯蓄を崩してきたよな」

「なんていうこと……それじゃあ、生活が出来なくなるじゃない」


 そんなに税金を取っていたなんて知らなかった。これに加えて、国に支払う税金もあるというのに。領の税金だけでそんなに税金をとったんじゃ、人口が減るのは当たり前でしょ!


「そんなに税金を取ったら、町民が生活出来ないわ。即刻、税金を下げないと……」

「ですが、収入である魔石と鉄の採掘がない現時点では、その税収がないと借金の返済が出来ません」

「だけど、このままの税金なら町民の流出は避けられない」

「人が減ったら、また税金を上げるのか? それだと、生活が出来なくなる」


 仕事がない上に税金まで高くなったら、本当に生活が出来なくなる。でも、借金を返済しないといけないから、税収は大切だ。


 町民の税金を下げたければ、他にお金を増やす手段を取るしかない。でも、一体どうすればいいの? こういう時は、やっぱり叡智に聞いてみよう。


「ねぇ、叡智。今の状況をひっくり返すには何をしたらいい?」

『あるとすれば一つでしょう』

「えっ! どうにか出来る手段があるの!?」


 叡智の言葉に期待が膨らむ。この状況から抜け出せる策とは?

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