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追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する  作者: 鳥助


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19.領の財政(1)

「さぁ、今日から領地運営をしていくわよ。みんな、心の準備はいいかしら」


 交流が深まった食事会の翌日、事務室に集まった私たち。自分たちの席について声を掛けると、三人が強く頷く。


 継母の妨害を乗り越え、ようやく領地運営が本格化する。まずは決算書を読み込み、領の財政を確認した。


「……確か、魔石や鉄が採れなくなったのは十年近く前って言ってたわよね」

「正確な年数は分かりませんが、それぐらいから魔鉄の流通量が少なくなったと記憶しています」

「決算書も資料も規定の五年前までのしかなかったね。だから、それ以前の動きが分からない」

「出来れば、それ以前の記録が欲しかったが……」


 その財政を確認して、愕然とした。一番古い記録の五年前の決算書を確認すると、収入より支出が上回っていた。


「魔石や鉄が採れなくなってたった数年で収入よりも支出が上回るって事がある? 前年の繰り越されたお金もあるのに……」

「それから考えられる事は、ずっと杜撰な領地運営をしていたということでしょう。魔石と鉄が採れなくなることを完全に想定していなかったと思われます」

「過去に大きな借金があったみたいで、その返済に追われていたようだね。それに加え、買い入れが増えている。これは、採れなくなった魔石と鉄を補填していただろうね」

「魔石と鉄を買い入れたのは、町の特徴でもある魔道具に関する商売を腐らせないためだろうな。でも、買い入れが膨大過ぎる……」


 町の重要な資源、魔石と鉄が採れなくなってからこの町の財政が悪くなったとみてもいい。だけど、採れなくなって数年で決算書が赤字になるのはおかしかった。


『買い入れの量を確認するのがいいでしょう』

「まずは買い入れの量の確認よ。資料から探して頂戴」


 叡智の助言に従い、私たちは魔石と鉄の買い入れの資料を探した。


「あったよ。この数字を見て見ると、過剰なほどに仕入れているね。とてもじゃないけど、この領だけで賄えきれないと思う」

「おかしいですね。その頃から、魔道具の生産は下がってきていたのに……」

「何かからくりがあるのか?」


 資料を確認すると、大量の魔石と鉄の買い入れが確認された。その膨大な量を一体何に使っていたのだろうか?


「叡智、何か分かる?」

『これは憶測ですが、数年前に魔鉄の流通量が少なくなったと言われてましたが、本当は魔石と鉄の採掘量がほとんどなかったのではないでしょうか。資源が採れなくなった事を隠すために他領から魔道具の素材を買い付けていたのでは?』

「なるほど」


 叡智の言葉を三人にも伝えると、さもありなんという顔をした。


「私たち商人には魔石と鉄の採掘量が減っていて魔鉄の生産が少なくなっている、という説明を受けたことがあります。それが、実は嘘だったなんて……」

「ありえる話だね。いきなり採れなくなったっていうと領が大混乱に陥るから、それを避けたかったんだろうね」

「だったら、いつから魔石と鉄が採れなくなったんだ? もしかして、もっと前から採れなくなっていたんじゃ」


 悪い憶測はもっと悪い憶測を呼び込む。この領は過去にどれだけのことを隠していたのか……。貯えていた資金を溶かすほどのことがあったのだろう。


『買い入れの金額を見ると、割り増しになっているみたいです。通常価格の二倍と言ったところでしょうか』

「通常価格の二倍!? ぼったくりじゃない!」

「……それには、きっと口止め料も入っているのでしょうね」

「これは確実にやっていたね」

「あぁ。魔石と鉄の採掘量が減って、魔鉄の生産量が減ったのは真っ赤な嘘だ。本当は全く採れていなかったんだ」


 この嵩んだ借金は偽造するためだったなんて……。


「で、いつ頃からゴルドーゼ山脈から魔石と鉄が採れなくなったって、公言されたの?」

「それは去年ですな」

「公言されると、いっきに町が寂れたよね」

「魔道具を生産している人達がごっそりといなくなったな」


 去年か……。十年前後もこの事実を隠していたことになる。ということは、それだけ借金が嵩んでいたわけだ。なるほど、これが支出が多い理由か。


「じゃあ、今はぼったくりの買い入れはないって事ね。去年の決算書は変わらずに買い入れていたけど、今年はそれがないってことかしら?」

『元々怪しかった契約です。どんな契約内容になっていたか確認する必要があります。もしかしたら、今年も変わらずに買い入れている可能性があります』

「そうね、気になるところではあるよね。じゃあ、次は買い入れの契約書を探すわよ」


 叡智の助言を受けて私たちは買い入れの契約書を探した。だけど、事務室の隣の資料室にはなく、私の執務室を探すことになった。


 執務室に移動して契約書を探し始めると、すぐに怪しい場所を見つける。鍵付きの戸棚だ。その戸棚を鍵で開けると、いかにも重要そうな書類が保管されていた。


「魔石と鉄の買い入れ……。あった、これだわ」


 一冊ずつ確認していくと、すぐに見つける事が出来た。早速書類を確認していくと、一番初めの書類には契約解除の違約金についての書類だった。


「あら、とっくに契約を解除していたのね。えーっと、違約金は……なっ!?」


 違約金の額を見て、驚いた。


「一年間の買い入れ額の三倍の額じゃない!」


 今年はまだ買い入れていないのに、三倍の額を支払うことになったっていうこと!? どんな仕事をすれば、こんな契約を交わすわけ!?

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