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追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する  作者: 鳥助


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15.継母の仕掛けた罠(2)

 ひたすら叡智に資料を読ませていく。すると、大量にあった資料がどんどん減っていき、一時間ちょっとで一年分の資料を読み込むことが出来た。


「じゃあ、決算書を作るわ」


 ここからは私の仕事。真っ白な決算書を用意すると、ペンで項目に数字を記入していく。


『まずは税収の項目です。町民税は……』


 叡智が計算した通りに数字を記入していく。流れるようなペン捌きで項目を埋めていく。すると、それを見ていた三人が驚いた声を上げる。


「本当に計算していたのか! これが叡智を兼ね備えた才媛の姫と言われた人物!」

「凄い……項目が埋まっていく!」

「おいおいおい! 人間業じゃねぇーぞ!」


 一瞬見ただけで計算できる叡智の能力は凄い。項目がバラバラでもちゃんと記憶をしているから、項目を間違って計算することもない。


 過去に叡智が計算間違いした事はなく、私は全幅の信頼を寄せている。あとは、私が数字を間違えて書かないことだ。だから、叡智の努力が報われるように全集中をして書いていった。


「ふー……一年分の決算書が出来たわ」


 うん、一つも間違わずに書けたと思う。


『間違いはありません。このまま提出しても大丈夫でしょう』


 叡智からもお墨付きを貰った。なら、この決算書は完成でいいわね。


「凄い……決算書がこんなにも早く出来るなんて……」

「神業、だったね」

「本当に間違えてねぇんだな?」

「えぇ、間違いないわ。このまま監督者に見せても大丈夫よ」


 自信満々な私の姿を見て、三人は納得したように頷いた。


「なら、この資料を片づけて次の決算書作りを……」


 ゼナがそう言うと、扉がノックされた。


「はい、どうぞ」

「失礼します。レティシア様、お客様が見えております」

「お客? 誰かしら?」

「監督官と名乗る人達です。決算書の確認だと言ってましたが……」


 その言葉に事務室が凍り付いた。


「……まさか、こんなに早く乗り込んでくるとは思わなかったわ」

「まだ一年分しか作成しておりません! このままでは不正を疑われてしまいます」

「相手の方が一枚上手だったね……」

「来たからにはどうしようもない……」


 決算書はまだ作成途中。監督官が来たからには、決算書と資料を出さないといけない。


 三人は諦めモードに入っているが、まだ諦めるには早い。


「決めたわ。出来立ての決算書を確認している間に他の決算書を作成するわよ」

「それは……可能というか、不可能というか」

「あと四年分もあるんだよ? 間に合わないよ」

「本当に出来るのか?」

「出来るか出来ないとかじゃない……やるのよ」


 ぴしゃりと言うと三人は押し黙った。しばらく、静寂が事務室を包む込む。すると、ゼナが笑い始めた。


「それでこそ、私が惹かれたレティシア様! そうですな、諦めるにはまだ早いです! ほら、二人も気持ちを切り替えて!」

「ゼナさん、途端に元気に……。でも、なんか出来そうな気がしてきたね」

「あぁ、やれそうな気がしてきた。やってやろうぜ!」


 三人を目を合わせると、強く頷き合った。


「まず、監督官に会いに行きましょう」


 ◇


「お待たせしたわね。ランベルティ領の領主、レティシア・アナスタージよ」


 三人を従えて応接間へとやってきた。監督官は合計五人、それなりに人を寄越してきたわけってことね。


「挨拶はいい。早速、決算書と資料を渡しなさい」

「あら、せっかちね。一年分の決算書と資料を持ってきたわ。皆さんの前にお出しして」


 監督官は厳しい顔を向けながらそう言った。私は指示をして、テーブルには決算書と資料を置いた。


「他の決算書と資料はどこだ」

「このテーブルには乗せられないと思って、まだ持ってきていないわ。この年度の確認が終わったら、すぐに持って来ますわ」

「……確かにそうだな。だが、次は残りの物を全部提出しなさい」

「分かったわ」


 話はそれで終わり、私たちは部屋を出た。そして、早足で事務室へと戻って来る。


「次は全部持っていかないといけないのね……」

「……やるしかないですな」

「でも、あと四年分……。レティシア様に四年分を終わらせる能力があるの?」

「ふふっ、出来ないことはないわ」

「本当か!? 信じられない……」


 叡智がいれば、四年分を一度に処理は出来る。それだけの能力が叡智にはあるのだ。


 隣の資料室に行くと、事務室に資料を運べるだけ運ぶ。テーブルには全部乗せられず、床も使う始末だ。だけど、こうしないと仕事が進まない。


「それで、次はどんなやり方でやるんですか?」

「ここにいる四人で資料を素早く捲っていくわ。あとは叡智が何とかしてくれる」

「その叡智っていうのが気になるけれど……。今はその話をしている暇はないね」

「とっとと始めよう。いつ、監督官から呼ばれるか分からねぇ」


 四人でテーブルの前に立つと、資料を手に持つ。


「じゃあ、やるわよ!」


 ここからは時間との勝負だ。合図をすると、私たちは高速でページを捲っていく。あとは叡智がなんとかしてくれる。


 ◇


「レティシア様、監督官が残りの決算書や資料を出すようにと言っております」


 扉を開けてセリナが慌てた様子で入ってきた。だけど、その言葉に返答出来ない。私は集中して、決算書に数字を書き込んでいたからだ。


 あともう少し! 集中して決算書に数字を書き込んでいくと……終わりが見えてきた!


 みんなが見守る中、私は最後の数字を書き終えた。


「四年分の決算書、完成したわ!」

「やりましたな!」

「凄い!」

「やったな!」


 私が声を上げると、他の三人は歓喜で声を上げた。


「さぁ、監督官に提出するわよ! 準備を!」


 指示を飛ばすと、三人が機敏に動く。


「お疲れ様、叡智」

『レティシアこそ、お疲れ様です』


 叡智とお互いを労いあった。ふふっ、今までもこうして二人で協力して継母の意地悪を乗り越えてきたわね。今回も無事に乗り越えて見せるわ!

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