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追放を計画的に利用して自由を掴んだ王女、叡智と領地改革で無双する  作者: 鳥助


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12.その頃、王宮では(継母視点)

「王妃様、準備が整いました」

「呼ぶまで部屋の外で待機なさい」


 仕事を終えた侍女を下がらせると、部屋には私一人になった。窓の外を見て見ると、庭師が手によりをかけて作った豪勢な庭が見え、心が癒されていく。それに、今日は特別に癒してくれる物がある。


 それはテーブルの上には用意された温かい紅茶や一流の茶菓子ではない。真っ白な一通の封筒が私の心を躍らせる。この封筒には王家を追放した、レティシアの近状報告が書いているだろう。


 その内容を想像しては、愉快な気持ちが溢れてくる。一体、どんな苦汁を飲んでいるのかと思うと、顔がにやけて仕方なくなる。


「あの忌々しいレティシアが苦渋で苦しんでいると思うと、胸がスカッとするわ」


 レティシアは私と出会った時からなんでも優れた王女だった。学問、芸術、武術と多才でいて、性格も良いときた。周りは次期女王だと持て囃していたが、次期国王になるのは私の息子だ!


 待望の男子を生んだというのに、周りの家臣たちはレティシアを次期女王に推す声で溢れていた。その声を聞く度にレティシアを憎らしく思うようになる。


 そんなレティシアを陥れようと、色々な難題を吹っ掛けてきた。だけど、レティシアはどれも完璧にこなし、失敗のない王女としてその名声を高めただけだった。


 どんな難題も突破してきたレティシア。その度に家臣たちはレティシアを見直し、次期女王という話を持ち上げてくる。


 その話を聞いた時の苦しさと言ったら! 腹が煮えくり返るほどの怒りで頭の血管がブチ切れそうになる感覚! 毎日、毎日……レティシアの活躍を聞くのがどれだけ苦行だったことか!


 だけど、もうそれもない。だって、レティシアを王家から追放する事が出来たんだもの。あの忌々しいレティシアがいない王宮がこんなにも落ち着いているだなんて、夢にも思わなかった。


 後はレティシアが野垂れ死んでくれれば、私の苦労が報われる。そう、その為に色々と準備をしたのだ。


 酷い婚約者を当ててレティシアを苦しませようとしたが、それは失敗に終わってしまった。だけど、私は閃いた。これはレティシアの初めての失敗だ。この失敗を追及すれば、レティシアを王宮から追放することが出来る。


 お陰でレティシアには財政破綻寸前の町を押し付ける事が出来た。おまけに領館で働く人に違う仕事を斡旋すれば、レティシアを支える人はいなくなる。ふふっ、今までスペシャリストたちに支えられていたから、苦労しているはずだわ。


 そのレティシアの近況がこの封筒に入っている。どんな苦労を背負って、辛い思いをしているのか。それを思うと、愉快で堪らない。


 軽やかな心のまま封を切り、中に収められた手紙を読む。


「……はっ?」


 手紙に書かれた文字を呼んだ瞬間、呆気に取られた。


「い、一日で最低限の人を揃えた……ですって?」


 信じられなかった。一日で適した人を最低限集める事が出来るなんて……。


「領館で働いている人を辞めさせるのに、あれだけ苦労したのにっ! なのに、たった一日で人を集める事が出来るなんて!」


 どういうこと!? 何をしたら、一日で最低限の人を集める事が出来るというの!? 適した人を探すのは難しい事だというのに、たった一日でそんな事が出来るなんて!


 私がどれだけ苦労をしたと思っているの!? 婚約破談から寝る間を惜しんで、身なりのケアも惜しんで、整えた舞台だというのに……! あのレティシアはたった一日で!?


 いや、絶対に苦労をしているはず! だって、一日でも領館に人がいなかったんだから、食べる物も困っていたはず!


「……自分で料理をして、美味しそうな食事を楽しんでいたですってぇ!?」


 レティシアは料理なんてしたことなかったはずよ! なのに、美味しい料理を作ることが……はっ!


「また叡智とやらのせいね! そうに決まっているわ!」


 また、私の前に立ちはだかるというのね! 叡智には何度苦渋を吞まされたことか!


「なんでこうも上手くいかないの! 今頃レティシアは仕える者もおらず、一人で苦しんでいるはずだったのに! どうして、こんなにすぐに人が集まるのよ!」


 全く苦しんでいないじゃない! それどころか、料理を楽しんでいた……ですって!? 王宮よりも明るい様子が印象的でした……って、報告者はどちらの味方なのよ!


「あー、悔しい! 苦しい思いをさせてやろうと思ったのに! こっちが苦しい思いをするなんて!」


 私の苦労も水の泡! 領館の人達に仕事を斡旋するのがどれだけ大変だったか、レティシアには分からないでしょうね!


「ふ、ふふっ……でも、苦しいのはここからのはずよ。だって、財政を立て直すのが無理な町を選んだもの」


 領館で働く人の排除して苦労をさせるのは失敗してしまったけれど、本題はここから。私が連日徹夜をして、王家直轄領を徹底的に調べ上げて、選んだ領。その領は財政再建が無理だというところまで追い詰められた領だ。


 その領を再び栄えさせるなんて、無謀なこと。


「それに私が仕掛けた罠もある。レティシアの顔に泥を塗ることが出来るわ」


 代官に命令して、仕掛けた罠もある。それに気づかないと、レティシアは領主になった早々に痛い目を見るだろう。


「今度こそ、落ちぶれたレティシアが見れるということね。ふふっ、あはは! 早くレティシアが落ちぶれた姿が見て見たいわ! さぁ、苦しみ抜きなさい! 私を喜ばせて!」


 不可能を可能にするなんて、神じゃないと出来ない。例え、叡智の知識があったとしてもレティシアにはどうすることも出来ない。


 私は王宮からその姿を見ていればいい。それだけで、レティシアは落ちぶれていくのだから。次の報告が楽しみだ。

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この王妃どう思う? ティンタクル「良心は痛まないがコンプラが怖い」 ゴリ「あと、ツイフェミも」 じゃあコイツはパスで 「「賛成‼️」」
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