次戦③
腹部に2つ
腕に5つ
脚に4つ
白刃願を貫いた蔓の数である。
「(成程...細く絞った蔓で貫通してるのか...!!)」
体が熱い。
頭を打った時とは違う。意識が保たない。
彼は初めての痛みに表情を歪め、化け物を見る。
既に化け物は崩れかけており、もう次の攻撃は来ないことが救いであった。
「(結はこれで大丈夫だな...くそ、意識が)」
自分が居なくとも、恐らく学校からは逃げ切れるだろう。
その後生き残りがいれば何とか生きていける。
そんな安堵とともに彼は意識を失った。
最後に見えた景色は泣きながら駆けつけてくる幼なじみの綺麗な顔と、
その背後で黒い蔓から咲いた、大きな花だった。
-----
ダメ、死んじゃダメ、絶対にダメ!!
今黒花結はそれしか考えられなかった。
その目には今にも死にそうな幼馴染しか映っていなかった。
彼の元にたどり着き
血にも、それで汚れた砂にも
構わず抱き上げる。
「(出血が酷い!植物の蔓が崩壊したからだ!どうしよう死んじゃう!)」
今にも訪れそうな幼馴染の死。
急速に冷えていく体。
焦りは発汗と動悸に変わる。
そんな彼女を落ち着かせたのは先程戦いの前
自分がみせた意志に対して彼にかけられた言葉であった。
「そうか。頼むな」
その真意が白刃が彼女が決めたことは譲らないことを知っているが故に発せられた言葉であることは彼女には分からない。
だが結果的にその言葉が彼を救うこととなる。
死なせない。
自身への不甲斐なさも
化け物への恨みも
目の前で白刃願が死にかけている事実への焦りも
今は存在しない。
今彼女の頭を埋めているのは
どんな手を使っても彼を救い出すという決意と
その手段を望む欲求であった。
そしてまた
その欲求により彼女の能力は開花する。
---
『枯れた紫丁香花』
その能力の真価は黒い蔓の大量展開でも
それを用いた防御でもなく
『願いを叶える』ことにある。
叶える願いに例外を除き際限はなく、
彼女が望むならその黒い蔓は
枝へと変わり、花を咲かせ
その花は星だろうと喰らう。
ただ、その花は彼女にとって
『自らより重要な者』
への望みしか開かない。
「大丈夫だよ。絶対助けてあげる。」
そして今その花は開き
願いを叶えようとしている。
怪我は治り
体温が少しづつ戻っていく
肌は脈打ち
白くなっていた肌に血の色が通う。
それを見て黒花結は自分から何かが消えるような感覚と共に意識を手放した。
-----
「---時刻0956 金陵・朱璃両名現場、第二級幼界【私立弥善学園】に到着、これより亡獣の排除及び生存者の確認に入る。」
「今日転校後初日だったのになぁ〜」
「うるさいぞ纏。任務だ、集中しろ」




