次戦①
「んで、それ何なんだろうな。」
「わかんない、この蔓消したり出したり動かしたりはできるんだけど」
中庭への移動中、仮説も含めた情報の交換も行っていたが基本的に話題は黒花結のだした蔓だった。
指先は植物の蔓を動かしながら彼女はつぶやく。
「これを出すだけって能力としてちょっと弱い気もするんだよね〜」
「俺の能力だって何ができるかまでは全然つかめてないし、また落ち着いたタイミングでいろいろ試せばいいだろ」
「そうだね。にしても誰とも会わないね。」
「逃げきれてるって思いたいところだな~。可能性は低いだろうけど」
「さらっと怖いこと言わないでよ。そろそろ中庭だし誰かいるんじゃない?」
一階にある教室の机から武器になりそうなものを取りながら会話を続ける。
「そうだな。そんでさっさと学校出ていこうぜ」
しかしそれは叶わぬ願い。
中庭に出ると、彼等の目の前に広がっていたのは本日何度目かの異常だった。
大量の制服と二階の教室に届くだろうかというサイズの向日葵のような化け物。
ご丁寧に先ほど白刃が倒したウシ型の化け物と同じように中心には人の顔がある。
違うのはウシ型にはついていた角がないことくらいかだろうか。
「(瞼縫ってるけどこいつ。)」
「結、逃げれそうか。」
「逃げないよ。私も戦えるようになりたい」
「そうか。頼むな」
「ふふっ、ありがと。任せて。」
「(さて、互いの能力で現状できることは共有してるし結は賢い。
殺すか隙見て正門まで逃げるかのどっちかはできるだろう。
一応次化け物に出会った時の作戦もたててある。
結の能力の詳細がわかればもっと分のいい勝負にはなるが現状わからないものを作戦に組み込みたくはない。)」
相手の出方を伺うように化け物を睨みつけていると
「■■■■」
「結!」
「任せて!」
黒い蔓を結が大量に展開する。
黒花結は先程自分の能力を「強くは無い」と評したが実際はそうではない。
殺傷力は試した範囲ではかなり低いが、こと防衛においてはかなり使い勝手がいい。
これが白刃の出した結論であった。
向日葵の口から大量に吐き出されるその蔓を黒花結は1人で捌き2人から進路をずらした。
「『貫け』」
黒い蔓からボールペンやカッターナイフが浮き上がり化け物へと飛んでいく。
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目を覚ました教室でまずふたりが行ったのは互いの行動の把握だった。
「俺の能力は同時に命令できる物体は10個っぽいな」
「指先と同じ数なんじゃない?『指先の願』」って名前なんでしょ?」
「かもなぁ。」
彼はぼんやりと能力を使おうと意識を込めて机に触れる。そうすると指先とその机にパスの通るような感覚があった。
「これって近くにいなくてもいいんじゃない?」
「ぽいな。少なくとも教室の端と端でも使えそう。『解けろ』」
机は1秒ほどで板と金属片と螺子のみとなっていた。
「『尖れ』」
手元に残った椅子に命令をかけるとその椅子は槍の穂先のように形を変えた。
非常に一般常識を無視した構造をした凶器の完成である。
「えー!めっちゃ強いじゃん!」
「いやこれすんげえ疲れる。200m全力ダッシュしたみたいだ。」
「命令が複雑になるとそうなるのかな?」
「かもしんない。尖ってないものに貫けって命令しても反応無いし。イメージの問題なんだろうな後どうしても形の違う物体を同時ってのは上手くいかない感覚がある。」
「充分便利と思うけど、、」
「そうだな。やりようはある。」
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白刃達の反撃に対しその向日葵は
「◾︎◾︎◾︎◾︎」
再度口から新しい蔓を吐き出し本体に届く前に攻撃を止めきった。
「うげーいい手だと思ったのにな」
「効いてる感じしないよね。どうしようか」
「正直逃げの一手だよなぁ。」
と彼らが次の方針を組み立てようとするが
「■■■■■■■■■■」
目の前の化け物はそうさせてはくれなかった。
日本非公式対亡獣制圧組合『竜胆』に遺された記録
亡獣:恨葵
体長:5m
幅:2m
特徴:中心に瞼を縫った顔を持つ巨大な向日葵
攻撃手段:口から蔓を出す植手と地面から『魁』にて異常成長させられた植物の根を用いた檻の作成、大木檻を使用する。植手は汎用性の高い攻撃であるため注意されたし。




