夜戦⑤
走っていた道路脇に生い茂っていた木々が、凍りながら倒壊する。
振り下ろした鎌を持ち直し、セーラー服姿の少女は続ける。
「また貴方ですか。」
柊は目を細め、黒花へと向き直る。
「この前報告に上がってた相手か。やれそう?結」
「おまかせを」
つい数週間前の八王子幼界にて対峙した東雲咲羅。
「凍天壊来」
その指先は魁具土命の鎌の根元から切っ先へと踊る。
滴るは血
求めるは命
三者弾けるように動き出す。
「『悴刃割・緋』」
「しーちゃん 橡」
「(赤い斬撃?)」
「ああそれ、気をつけてください。」
言葉と共に斬撃を受けた蔓が赤く変色しながら凍り、割れ始める。
嫌な予感とともに黒花は変色した蔓を断ち切った。
地面に落ちた蔓は地面へとその赤を撒き散らし、凍らせ、その姿を失った。
「『共打・撃 求道槌』」
いつの間に移動していたのか、
柊の掌底が東雲の背中へと打ち込まれる。
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「咲羅、今回君は錬道の侵入の際の保険として共に向かってもらうよ。」
「構いませんが、、」
「えー!!曜さん!俺は!?」
「君はまだ腕と足を直している途中だろう。紫沫」
「まあそうだけどさ〜」
「気をつけるのは今の2・3・4番隊隊長だ。もし遊撃に出るのが彼らなら錬道を拾って即退散だよ。」
「柊総隊長は問題ないのですか?」
「彼女が出るなら護衛をつけるだろう。そして能力は攻撃に使ってこない。だから護衛を殺さない限りは大丈夫だ。それでも彼女がいちばん強いがね。」
「承知致しました。それにしてもなぜ私なのでしょうか?」
「陣はフォローと潜伏には向かないからね。後は他のメンバーは一と相性が悪い。綯初ありなら尚更だ。」
我が子に微笑むような優しい顔で柳は続ける。
「気をつけるんだよ。咲羅。錬道が仕事をするまでの時間稼ぎだ。死なないようにね。」
「承知致しました。」
「後は錬道には伝えていないもう1人の勧誘相手もいる。そのためには隊長格は1人外に出したい。頼むよ。」
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「(....ッ!綯初で強化した魁で防いでなおここまで!!..だが)」
攻撃を受けながら、咲羅は笑う。
「その手、どうするのです?」
柊の手の甲は赤く凍り着き始めていた。
しかし
「おい、一体誰に入ってこようとしてる?」
その声と目線は侵食を始めた「赤」よりも冷えきったもので、侵食をやめ肌は少しずつ白さを取り戻す。
「それが能力ですか...」
「もう勝手に私の身体に対しては出しっぱになっちゃってるんだよね。」
手を握る。開く。
ぷらぷらと脱力し開いたまま振る。
愚痴のようにこぼした言葉と共に視線は東雲咲羅へと向けられる。
「返すよ」
「は?」
東雲咲羅は目を背けてはいなかった。
一挙手一投足見逃すつもりなどなかった。
睨みつけていたはずのその姿は背後に。
「還」
同時だった。
東雲咲羅が赤く凍りつくことと、
2人の出発点である竜胆本部に、未承認の魁を柊が探知し、その対象が誰かを判別すること
「チッ。曜め、嫌な手を打ってくるな。」
「どうしましたか、一さん」
「本部に敵襲が来ちゃった。かなり強い。でもこいつもだいぶ...」
「行ってください。」
柊の言葉を遮り黒花は進言する。
「いいの?」
「敵の一番の目的は一さんを戦場に長居させないことだと思います。私は大丈夫です。」
柊は珍しく少し迷い、意を決して答える。
「わかった。死んじゃだめだよ」
「はい。」
両手を合わせ、掌印を結び戦場を柊は変更する。
「『求道送』」
黒花は小さな錫杖型の魁具土命を手元で遊ばせる。
「(分かりやすくはなったか。)」
状況を整理し、気持ちを整える。
敵は恐らく3人
目的は火簾
いちばん強いのは本部に湧いた新たな敵
現在対敵しているのは白刃と鬼飼
「私の仕事はこのアバズレの処理。」
そっと錫杖を指先へと当てる。
目を閉じ、息を吐く。
「できるかな」
前を向き、目を開く。
目の前で赤いそれは氷解を始めていた。
不思議と頭によぎる言葉。
氷は溶け切り、血は滴る。
「『光黒染迄』」
綯初による一部ではあるが真打の解放。
先程までの懸念や不安は姿を消す。
湧き出る全能感。
理性が緩み、本能と欲望が顔を出す。
まるで自分の意思のみが世界を構成しているような。
「遊んであげる。」
「黒花ァ!!!!」
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「さて、玉石混交もあと2分で切れてしまいます。」
「反省しましたか?」
「歳上には敬語を使いましょう。他者の服にケチをつけてはいけません。」
「聞いているのですか?貴方に言っているのですよ。白刃君。」
「君のように歳上への敬意が足りていないから、そのようになるのです。まぁ綯初なしで今死んでいないことは賞賛に値しますが。」
ナイフを振り、付着した血を落としながら箕島は語る。
その目線の先には右腕が落ち、体の至るところから血が流れひれ伏す白刃願の姿があった。
「....ぅるせえよクソ野郎。」
「(まずい。しくじった。口が重い。脳が揺れてる。あいつさっきから強くなりすぎだろ。影打がひとつも通じやしねぇ。何が足りねぇ。考えろ。あいつらは何をし---)」
鬼飼と箕島双方の急激な力の上昇への共通点を見つけた白刃の眼前には箕島の足が迫っていた。
「敬語!!」
蹴飛ばされ白刃は外壁へと衝突する。
吹き飛んだ白刃を見て、箕島は言葉と態度とは裏腹に警戒を強くする。
「(大前提なぜ、影打で綯初にある程度とはいえ対抗ができるのだ。こいつはこれ以上生かしておいては.....)」
「....ははは。ははははっ。ははははは!!」
「....何を笑っているのです。」
「散々いたぶりやがっててめぇ。いってえな。」
笑いながら自らへの行いに対する文句をぶつける白刃の残った左腕には、小太刀が、魁具土命が握られていた。
「(まさかこいつ....!!)」
「ペラペラ喋ってたし見せてもくれたよなぁ。綯初っつったか?能力を真打に進める過程の技に見える。条件はなんだ?血液か?」
左手で小太刀を構え、フラフラになりながら立ち上がる
迷わぬ動きで首筋に刀身を当てる
目を開き、笑う
「いけんだろ?」
首筋から赤く血が滴る
目の前には鬼の形相で走りかけてくる箕島の姿。
不思議と頭によぎる言葉。
「『望臨狂白侭』」
綯初による一部ではあるが真打の解放。
先程までの不甲斐なさや怒りは姿を消す。
湧き出る全能感。
緩んだ理性を本能と欲望が支配する。
まるで自分の欲望のみが世界を構成しているような。
「遊んでやるよ」
「貴様ァァァ!!!!!!」
呪術2期最終回おもしろすぎ




