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強欲と英雄  作者: とろろ
第三章 転変動乱
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夜戦


青年は抱えていた袋を下ろし、

スーツのネクタイを締め直す。


「他所様のお宅にお邪魔する際には身なりを整えないと。」


そう呟きながら手鏡で髪が荒れていないか。

服に汚れはないか

シワは付いていないか。

靴は.....


「おっと、門番さんの血が付着してしまっていますね。」


身を屈め、胸ポケットより取り出したハンカチを使って死体から漏れた血を拭き取り、地面に下ろした袋を開く。


「貴方も身なりは整えないと。」


その袋から出てきたのは口を塞がれ、暴れないようにいくらか痛めつけられた男の姿。

その男は八王子幼界にて、救出が遅れた朱璃と黒花を非難した男だった。


「見てましたよ。」

「貴方。助かった、助けてもらったくせに遅れたあのお二人に文句をつけてましたね。」


暴行の後だからか反抗する気力もないのか、

その男にされるが儘身なりを整えられてゆく。


「モゴ...」

「助けて貰ったらまずはお礼でしょう?」


身なりを整え満足したのか男は気持ちよそうな表情で続ける。


「そして、あの言い草だともう助けてもらいたくも無さそうだったので、我々を助けていただきますね。」


「世の中は助け合いですから!」


「私の名前は箕島練道(みしまれんどう)。これから助けて頂く方、ましてや命を賭して頂く方には名前を告げるのが礼儀と言ったものでしょう。それでは---」

「その礼儀聞いたことねえよ。馬鹿なのかお前」


不機嫌そうにナイフを回しながら男は声の聞こえる方向へと向き直す。そこには少年が門の上に座り込む姿が見えた。


「なぜ私が居るのがわかったのですかねぇ。」


少年はケラケラと笑いながら続ける。


「さあな。」


「質問をしているのですよ?答えるのがマナーであり礼儀と思われますが。」


「知らねえな。」


「もう1つ言うのであれば、貴方見るからに私より歳下でしょう。敬語を使えと教わらなかったのですか?」



「あ〜うるせ〜。()()()()似た者同士じゃないすか?」


門が開く。

中から、背中から鬼を見せる少年が出てきながら続けた。


「そいつに敬語使えッてなかなか無理な話だぜおッさん。」


少年が門から飛び降りる。


「魁具土命の使用許可は下りてますよね」

「あァ」


目の前でとんとん拍子で進む話。

箕島としては面白いわけがなかった。


「君たち---」

「うるせェよ。だッせえネクタイしやがッて」

「ええブル先輩それ言うんすか。」


その言葉を聞き、震え、声を荒げながら箕島は全力で答える


「....指導だ....!!私のファッションセンスを理解できないガキ共が....」


「地雷だったみたいすね。」

「こッちも仲間やられてブチ切れてんのは同じだァ」

「そうすね。」


人気のない深夜、静かに戦闘の幕が上がる。


「『縋れ』」

「『命で支払え』」


「(な....??魁具土命を開放しないだと?)」


「余所見してんじゃねェぞ!!」


殴りかかってきた赤髪短髪の男の拳を避け下がる。

もう一人の少年は隊服を脱ぎ言葉を発する。

「『攫え』」

「そういうことか!!」


初手で魁具土命を開放しなかったのはただのハッタリであり、意識を分散させることのみが白刃の通したかった戦術。

その目的は

鬼飼への意識を初撃以降向かせることと、

袋を回収すること。


「『示して見せろ』『運べ』」


魔法の絨毯のようにその袋を隊服が運び始める。


「行くぞ白刃ァ。」

「足引っ張んないでくださいよ。」


2人合わせて戦闘開始準備が改めて整った時。箕島だけが違うことを考えていた。


「このたこさんウィンナーのネクタイの、どこがダサいと言うんだ!!!」


「「いやだせえだろ」」


「やはり指導だ貴様ら!!」


「『征爾遊(せいじゆう)』」


白刃のもつ小太刀が一本、箕島へと射出される。


箕島はナイフ状の魁具土命でそれを叩き落とす。


叩き落とされた小太刀はその場で旋回を始め、結果箕島を飛び上がらせることとなる。


「奈落!!」

「チッ」


両手を握り込み、地面にたたき落とす形の攻撃に対し、箕島が魁具土命で応戦する。


「そんなんで切れるかよォ!!」


ナイフに攻撃が当たった途端、2人の位置が入れ替わる。傍目からすると間一髪で鬼飼の攻撃が空ぶったかのように見えた。


「あ?」


双方互いに距離を取り合う形となりこのやり取りの奇妙さに鬼飼は白刃に尋ねた。


「どう見えた」

「空振ってましたね。」

「能力か」

「でしょうね。」


そのやり取りの最中、箕島は


「ああああああ、仕事をこなす必要があるのに指導も必要。そしてなかなかやりますね貴方達。」


と不満を隠さず愚痴っていた。

その愚痴を受けて


「そりゃどーも」

「とッととくたばれ」


それぞれの応答が返ってくる。

2人は箕島の都合など知らぬというように能力の解明及び箕島の討伐にしか意識が向いていないようであった。


「お前わかるか?」

「時間があれば。」

「よし、じゃあそれで行くぞォ」

「あい。『貫け』」


第2Rの開始である。

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