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強欲と英雄  作者: とろろ
第二章 奇々怪界
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讃えて崇めて祈って捧げて


目を覚ましてまず感じたのは畳の匂い。

体は少し強ばっていて開けた目は世界を90°傾けて写していた。

自らにかけられていた毛布とその視界で横に寝かされていることに気づき、一体何日眠っていたのかと少し不安になる。


「おはよう。結ちゃん」


体を起こしながら時計を探していると視線の先には火簾がいた。

随分久しぶりな気がして、黒花は尋ねる。


「おはよ。熾織ちゃん。今何日の何時?」


「私たちが寝始めてから3日と12時間だよ。」


火簾が質問を意訳し、答えをくれたことに礼を告げ黒花は続ける。


「起きててくれたんだ。」


「そりゃそーでしょー。交代制だけどね。」


「交代制?」


「私が2日前に終わったからそこから参加で、それまでは訓練の合間に纏と願君。あとは金陵隊長と綺堂隊長も。」


「私時間かかってたんだね。」


「人によるらしいよ〜。早いか死ぬかが圧倒的に多いらしいけど。」


「へぇ〜。熾織ちゃんはどうだった?」


「久しぶりにお母さんとあったかな。もう死んでるはずだから夢だ!ってなったけど。結ちゃんは?」


「私はね〜小さいのんちゃんに会ったの。」

「のんちゃん???」


「あ、白刃くんのこと。」

「えーー!!可愛い!!」

「でしょ〜でも嫌がるの。」


うんうんと頷きながら不思議そうに火簾は続く。


「可愛いのにね〜」

「だから嫌なんだろうが。」

「そういうなってのんちゃん。」

「よしてめぇ殺してやる。上に戻るぞ。」


地下室の扉を開けながら白刃と朱璃が入ってくる。


「あ、おつかれのんちゃん。」

「それ続けるのかよ。」

「いいじゃ〜ん。俺好きだよその呼び方」


ため息を落としながら白刃は続ける。


「戻ってこれたんだな。」


「うん。心配かけてごめんね。」


「気にすんな。俺たちの方も特訓は終わったしな。」


「どっちが先に終わったんだっけ。纏だっけ?」

「そーだよ。30分先。結ちゃん起きないってなってから露骨に強くなってたけど。」


「露骨なんて言葉知ってたんだな。バカのくせに。」


「あ、逸らした〜」


「逸らしてねぇよ。」


三日ぶりに会話する自分を差し置いてやいやいと喧嘩を始める二人に笑いつつ

そもそもの前提である真打を目覚めさせないといけない理由等に思い至った黒花は火簾へと問いかける。


「状況は?」


「特に変わりなしだよ。警戒体制ではあるけど。あっちの二人も間に合うんじゃないかな。」


「そっか、よかった。じゃあ総隊長のところいかないとね。」

「うげぇ~~。しごかれる~~。結ちゃんよく動けるね」


--------


「結ちゃん元気そうだったな」

「ああ。」

「心配してたもんな」

「してねぇよ」

「ふ~~ん」


--------


「お、よかった~。戻ってきたんだね。結」


「はい。時間かかっちゃってたみたいで。すみません。」


「うんうん。熾織は昨日から始まってるけど早速する?」


黒花は髪を後ろで括り、通している制服の袖をまくりながら訓練開始の呼びかけに対して答えた。


「いつでも」


隣では火簾が態勢を低くし、いつでも動けるようにしていた。


(よし)。昨日までは熾織一人だったから左手のみでやってたけど、二人だから両手使うね。

それじゃあ かかっておいで」


「『風吹けど笑え』」

「『笑って魅せて』」


二人は即座に魁具土命を開放し、警戒態勢を崩さなかった。しかし、


「遅い」


接近を知らせたのは少し甘めなバニラの匂いのする煙草の煙。


それぞれ片手ずつで吹き飛ばされる。

吹き飛ばされながらも2人は反撃に出る。


「しーちゃん!」

「壱陽燕!!」


「えい」


植物の蔓を左腕で掴み躱し、

右腕を払った風圧で火の玉を消してしまう柊。


「やるね〜。ん??」


左手側にいたはずの火簾の姿が消えていることに柊は疑問を抱く。


峰下織淵(みくだるおりのふち)


気づけば頭上には引き絞られ、大木のようになった蔓が燃え盛っており、

掴んだ蔓は腕を巻き込み柊を拘束していた。


「ほほう」


ニヤリと笑う少女を炎が覆い隠す。


「しーちゃん。紫黒(しぐろ)


蔓が唸り、柊を取り囲む。形を変え、人を貫くには十分な程の鋭さを帯びた。


鉄の処女(アイアン・メイデン)みたいになってる。」


呑気な言葉を漏らしながらも火簾は距離を取り黒花の近くで迎撃体勢になっていた。


「『貫け』」


どこかで聞いたような台詞が黒花の口から漏れる。


轟音とともに蔓が燃え盛る炎を貫いていた。


「うんうん。合格点だねふたりとも。」


気づけば柊は蔓の上に座っており、

貫いたはずの体には怪我や燃えカスひとつ付いておらず、これまた呑気に煙草を吹かしていた。


タバコを落とし靴で火種を揉み消しながら柊は笑った。


「『讃えて崇めて祈って捧げて』」

因みにですが柊の吸っているタバコは金色の箱のPe○ceです。

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