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強欲と英雄  作者: とろろ
第二章 奇々怪界
38/42

夢の終わり


6513回


夢喰が黒花結に夢を見せた回数である。


夢喰の継続条件は


・小学校低学年の夢を見た段階で黒花結の幸福度が一定以上となること

・中学二年生の夢を見た段階で黒花結の幸福度が一定以下となること

・上記2点を満たした際に、夢喰が黒花結の幸福を具現化した姿で最も望まぬ内容を見せる

・夢喰の前で絶望。もしくは自死を選ぶと夢を終了し、2回目へと続く


禁止事項は


・夢喰の殺害


のみであり、


脱出条件は


・夢喰の幸福具現化時に絶望しないこと

・夢喰を呼び出し、自分の全てを捨ててでも叶えたい意志を述べること


上記2つを満たすことである。


2回目


「ねえのんちゃん!」


3回目


「のんちゃーん」


7回目


「のんちゃん」


113回目


「ねえのんちゃん」


2357回目


「のんちゃんねえってば」


1回目の夢喰顕現の時点で黒花結は気づいていた。

自分が見ているのは夢であり

目の前の光景はただの記憶

最後の白刃は偽物

これは試練


しかし今、黒花結には

幸福しか無かった。


「ねぇのんちゃん」

「死ねよ」

「大好きだよ」

「早く死ねって」

「偽物にしか見えないのにね」

「いいから死ねよ」

「偽物でも愛おしいの」

「死ねよ」

「ふふ。そうだね。次行こうか」


夢の中で黒花結は能力を発動し自らの首を掻き切る


黒花結にとって白刃にぶつけられる悪感情は他者のそれとは話が違う。

いつでもいつまでも自分に優しいそんな彼が自らに激情をぶつけてくれているみたいで、

「嫌い」も「好き」も大差ないほどに黒花結は盲目的に白刃願を愛していた。


きっかけなんてなかった。

気づいた時には好きだった。


---


首を触り自らの出血が止まっていることを確認する。

腕をのばして幼少期の体に戻っていることを確認する。

白刃願が来るまで夢が開始してから約25秒。

夢の途中で黒花結の母親から非難を浴び白刃願が現れるまでの約30秒。

合計55秒が黒花結の夢1回につき試練について考えていられる時間だった。


「(さてどうしようかな。)」


ただ夢の中で幸福を享受していたわけではない。

夢の終了条件が自死と気づくことに26回費やした。

試練突破の条件に何となく検討をつけるのに5036回必要だった。


そして、6513回目


「総隊長が言ってたように意志を問われてると思うんだけど、、それに何か違和感が、、」


「そうたいちょう?」


公園に置かれてある土管を覗き込みながら

白刃願(幼)は尋ねる。


「あ!のんちゃん!」


「その呼び方やめろって〜。んで、そうたいちょうって何?」


「うーーん。なんだろねー」


「教えろよー」


「偉い人!」


「学校の先生かー?」


「そんな感じ、行こ!」

「うわっ」


手を取られ白刃はバランスを崩しながらも着いてくる。


「結今日元気だな。」

「そうでも無いよー」

「嘘だぁ。」

「ほんとほんと」


ふたりで手を繋ぎ、喋りながら白刃宅へと向かう途中、黒花結は違和感に気づく。


「(会話の内容が毎回違う。)」


ただ同じ内容を喋るのではなく

白刃願も白刃夢も自分との会話の内容が異なっていた。


ならばと黒花結はアクションを起こす。


「ねぇねぇ、のんちゃん」

「なんだー?」

「ちょっと遠回りして帰ろ」

「もうちょっとで家じゃん。」

「だからちょっとだけ!」

「まあいいけどさー」


さして態度も変えず白刃は普段なら左に曲がる交差点をそのまま直進した。


「(何かきっかけになればそれでよしくらいの作戦だけど、、)」


「ねえのんちゃん。」

「んー?」


「私が明日いなくなったらどうする?」


「学校来ないのか?」


「ううん。いなくなっちゃうの」

「探すかなぁ。」


黒花結はそう即答され少し目を見開く。

頭の中でこれは夢だと、自分にとって都合のいい部分だと言い聞かせながら続ける。


「いつまで探してくれる?」

「見つかるまで。結は?」

「わたしも〜」

「ずっと一緒じゃんじゃあ」

「えー嫌?」

「ううん。最高だな」


そして確認を終え、黒花結は続ける。


「夢喰。聞いて。私の意志。」


隣で手を握っていた白刃がピタリと止まり、顔をこちらに向ける。


「何?」


「ふふっ。やっぱりのんちゃんの姿なのね」

「意志を問いに来た。」


機械的な問答を行う白刃の姿をした夢喰に対し、黒花は告げる。


「私の願いはね。どんな世界になっても、どんな姿になってものんちゃんの隣にいること。本当にそれだけ。」


「馬鹿げているな。それだけか?」


「ダメなら繰り返すだけでしょう?それでも構わないわよ。」


「.....試練は終わりだ。初めてだ。試行回数4桁後半を超えたのは。」


「話してくれるのね。」


「しかもお前の願いは何一つ変わっていないように見えた。」


「そうね。」


「大したやつだ。これまでで2人目だな。最初から自分の願いを知覚してたのは。」


「ええ、そんなに少ないの。」


「意外と少ない。だいたいは元々の願いを体良く言い換えたりその願いを叶えたい理由が本当の願いだったりする。」


「へぇ。」


「話しすぎたな。夢から返すぞ」


「はーい。」


白刃願の姿を借りた夢喰が黒花結から手を離した瞬間。黒花結は意識を失った。



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