夢
真打の話。
今回の敵が柊の古い知人である話。
恐らく近々また幼界が発生するであろう話。
その規模と敵の実力的に黒花・火簾両名にも真打を覚醒させる必要がある話。全てを聞いた上で黒花が尋ねる。
「それ私たち間に合います?」
「大丈夫だよ。オフレコにはなるから他所では言わないで欲しいけど前回の穴の仕組みが大まか予想が着いた。説明は省くけど次ヤツらがあの穴を使って幼界に干渉できるのは1ヶ月後。今が7月の初週だから次来るのは8月だね。」
「あ、そうなんですね。なら良かったです。」
「ならどうしますか?総隊長。白刃と朱璃は今ひたすら私と金陵でボコボコに、、いえ訓練してますが」
「ボコボコって言ったよね今調さん。やっぱ昔ヤンキーだったのってほんとなんじゃない?」
「今思うと見かけは本気でインテリヤクザだからな。あの能力持っててもやっぱりその自覚はあったんじゃねえか。」
「お前らまだ元気そうだな。」
内緒話を強制ストップされた2人は人形のように口を閉じる。
「総隊長がいない間の訓練についても共有しておきますね。」
問題児の頭を叩きながら金陵が続く。
「ん〜。よろしく美鈴。」
「現状朱璃が私と金陵隊長相手に2本ずつ。
白刃が私に2本。綺堂隊長に1本です。
枷については既に2人とも両足まで外していて残りは利き腕のみですね。」
「やっぱり調と願は相性悪いか〜。そのまま鍛えてもらいな〜2人とも。」
「ではその2人は総隊長が見るということで?」
「そうだね。どっちかといえばこのふたりは魁の扱いは問題児より上手いし。どっちかといえば扱いより考え方の方をいじくらなきゃ。私の方終わらせたら2人は5本じゃなくて私相手に2本かな。」
「こわ〜い。」
「何されるんだろうね。」
不安そうな少女2人の頭を優しく撫でながら柊は続ける。
「大丈夫だよ〜こっちの2人よりは優しいと思う。」
「「ずるくね?」」
「ずるくなーい。さ、訓練に戻るよ。2人ともおいで。」
「よーし続きやるか。白刃。次は当たるといいな」
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場所が変わり
訓練場の地下深くに3人は居た。
その地下の一室は暗くも明るくもなく。
殺伐としているわけでも居心地がいい訳でもなく。
なんとなく自分すら他人事のように思えるような。そんな空間であった。
その部屋に置かれたちゃぶ台と座布団が4つ。
ちゃぶ台には昔の喫茶店にあったような。100円硬貨を入れると当たるかも分からない占いのマシンのような球体おもちゃが置いてあった。
座布団のひとつに座り込み火簾は零す。
「こんなスペースあるの知らなかった。」
「真打覚醒にしか使わないからねぇ。起きて。夢喰」
突如、そのおもちゃが目を開く。
星座の描かれた盤面を回しながら開いた一つ目を駆使して黒花・火簾を覗く。
「柊総隊長。これは?」
少し脅えたような声色で黒花が行った問いかけに笑いながら柊が答える。
「夢を見せるんだよ。
2人にとって、
あるかもしれない、
あったかもしれない。そんな嫌な夢を。
問うのは意思。
あまりにも嫌な夢を見て、
それでも闘うかどうか?
何を元に?何を理由に?
それを確かめるための機械であり能力。
ここまでつれてきて申し訳ないんだけど2人に伝えておきたいのはこれは強制じゃない。でも2人が今残ってる真打未覚醒者において、いちばん可能性が高いと思ったから連れてきた。
嫌なら嫌でも本当に大丈夫。だから--」
「「やります。」」
「そっか。そういうと思ったよ。」
「あの2人に置いていかれるのは嫌ですもん。」
「そうですね。それに戦う理由なら、決めてるつもりです。」
2人の眼差しを捉え、柊は笑う。
「わかった。行っておいで。『頬噛』」
夢喰は口を開く。
開いたことを認識する前に、2人は飲み込まれていた。
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誰かいないの?
ここはどこ?
なんで泣いているの?
なんでこんなに悲しいの?
分からない。なんでこんなにも辛いの?
どこまで続くか、
どこから覗かれているのか、
どこから笑われているか分からない暗闇の中で、少女はただ泣いていた。
「何してるんだよ。結」
「え?」
その耳に飛び込んできたのは、何より愛しい少年の声。
その目に飛び込んできたのは何より眩しい光。
「まーたおばさんから逃げ出してここに来たのか。家に行ってもいねぇと思ったら。」
顔を少年に向けるが、光が眩しくその表情は何も見えない。
「おいおい、泣いてんのかよ。どうしたんだよほんと。」
ただその表情など見えなくとも、わかるのだ。
その少年は、きっと、私を見て微笑んでいるのだと。
「のんちゃん、、!!」
「その呼び方やめろって」
これは夢。
何より愛しく。
何より尊く。
何より眩く。
何より残酷な結末を迎えることが決まっている。
「ほら。帰るぞ。」




