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強欲と英雄  作者: とろろ
第二章 奇々怪界
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継戦

第27話


朱璃の傷の処置を終え、各自向かい合う。

最初に動いたのは紫沫であった。


「後宴」


鎌を地面に軽く叩きながらそう唱えると、駅のホームから割れたタイルが浮かび、さらに割れながら4人へと襲う。


「『叩き落とせ』」

「大円壊」


前衛2人がその攻撃を防ぐ。


先程までより動きが洗練された朱璃に対しての警戒を強めながら咲羅が隙のできた前衛に技を撃ち込むが、それは叶わなかった。


「悴刃割」

「灰円」


斬撃は2人にたどり着く前に燃え盛る円に縛られ消えてしまう。


「(炎ですか。厄介ですね。)」


「しーちゃん。濡鴉(ぬれがらす)


気づけば飛沫と咲羅の足元には黒い蔓が絡みついており行動を阻害していた。


「『貫け』」


小太刀が動きを止められた2人へと飛ぶ。

鎌を用いて二人はそれぞれ襲いかかってくる脅威を取り除いた。しかし。


「『覆え』」


ギリギリまで圧縮されていた鉄製の看板が黒い蔓より眼前に浮かび、二人を包む。


そしてそれは致命的な隙を産む。


「(まずい!)」


「行け」


仕込みを終えた白刃はイタズラを終えた少年のように笑う。


「天断裂」


----


天断裂は朱璃纏が最初に名前をつけた技であり、

その内容はただの居合切りの見様見真似である。


ただ、朱璃が2年前親に捨てられ、幼界の発生に巻き込まれ、金陵に拾われ白刃と出会い戦う今に至るまで、共に歩んできた技であり、技の名前を唱えれば身体は沈み、余分な力は抜け、『魁』が体と魁具土命へと駆け巡り、その意識は斬り裂く対象のみへと向かう。


朱璃にとって、この技は使えば使うほど強くなる技であり、その威力は本来奇襲用の居合とは思えないほどに高く、瞬きするよりも速い。


還水盆(かんすいぼん)!」


紫沫の防御の完成と朱璃の攻撃が彼に到達したのは同時だった。


「あれは結の...?」


白刃の口から驚嘆が溢れる。


「いっててて。まじギリギリじゃん。」


紫沫は左腕を犠牲に首を守りきっていた。

そしてその首にまとわりついていたのは真っ白な植物の蔓。さながら黒花の能力のようであった。


この結果を受け白刃は思考を加速させる。


「さっき俺と熾織には使ってこなかった。コピー能力?ならあのタイルの攻撃は?わざわざ技名出してる時点で違うはずだ。ならコピーとなにか別の能力?能力の解釈でやったことか?俺や纏の能力もコピーできんのか?だとしても条件があるはずだ。最初のタイルはただぶつけられたんじゃない。なにか別の意図があった。とにかく多様な攻撃手段持ち。女の方は氷の斬撃。怪我が凍りついていた感じ切ったものを凍らせる能力か?それなら----」


「気持ち悪いねぇ。」


口から溢れ出て止まらない思考に「うぇ〜」と不快感を顕にした紫沫。


「大双壊」


振り切った刀の勢いと共に空中へと飛び上がっていた朱璃が追撃を仕掛ける。左腕をなくし防御体制の整っていない紫沫のその首を落とさんとしていた。そしてそれと同時に、


「熾織ちゃん」

隕戸雨淵(とおとすあまのふち)


黒花による拘束がさらに強固になり、その蔓は勢いよく燃え盛りながら燃え、火の矢を形成し、放つ。上下からの同時攻撃。


「私の夫に何をしてらっしゃって?」


待ったをかけたのは東雲咲羅。

鎌を大振りで振り回し火の矢を全てたたき落とし、


巡六花(めぐりりっか)


東雲の2人を中心とした六重となった円系の斬撃で拘束と朱璃の攻撃を全て無に帰す。


「おーありがとね、咲羅」

「いえいえ。大したことでは。」


両陣営は距離を取り仕切り直しとなる。

白刃願はその間もブツブツと呟き続け、思考の整理に努めていた。


「なぁ願。次どうする?」


「ちょっと待て今考えてる。互いが互いを守るような動き。特にミニスカ女にその傾向が強い。チャラ男は左腕が落ちてる。連携が上手くて厄介。乱戦に持ち込むか?今の連携で腕1本は持っていけてる。が氷の斬撃と正体不明の能力。今の攻撃を2度目の蔓で防がなかったことから条件式の使い捨てか?俺たち全員分コピーされてると考えたら面倒くせえな。よしきめ---」


「混ぜてよ〜」

「凍刈」


次は4人が対応者となり、攻撃を躱し、捌き、反撃する。


「わかりやすく行こう。『潰せ』」


飛び上がり鎌を躱しながら白刃はつぶやき、天井へと小太刀を投げつける。


味方及び自分諸共逃げ道を塞ぐ一手。


「ぎゃー!結ちゃん助けて!」

「しーちゃん!藍墨(あいずみ)!」


間抜けな声を上げながら火簾が黒花の庇護下へと入る。


それ以外の面々は


「大進壊」

「後宴」

「悴刃割」


自ら降ってくる天井を破壊し安全を確保する。ただ白刃の狙いはそこにあった。


鎌を口にくわえ、右手に持ったタイルのビビを天井に伝播させ逃げる紫沫の元へ、駆ける。


その手は既に、崩壊した天井の瓦礫に何度も触れていた。


「『吹っ飛べ』」


命令を果たし、ただの瓦礫となった天井だったものが幾つも紫沫へと飛んでいく。


「お前ら!その女をやれ!」


白刃はそう叫びながら紫沫を吹き飛ばしあとを追いかける。


「別れちゃっていいの?もう二度と会えないかもよ?」


「俺とやりたかったんだろ。その喧嘩言い値で買ってやるよ。片腕じゃきついか?それともあのママにケツ拭いてもらわなきゃなんも出来ねえのか?」


白刃願の策は単純。分断であった。

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