異変②
目の前にいる亡獣は簡単に表すと人の四肢が手足になっている蜘蛛だった。
大型バス程の胴体に、よく見ると人間ほどのサイズの手足が大量に結合されていて大きな八本の手足になっている。
さらには出現と同時に港にあるコンテナを手当り次第武装し始めていた。
「うっげーきもちわる。こいつ見た事ないな。」
「多分ミーティングでこの前共有されてたやつだな。泣蜘蛛ってやつ。」
「あーそれか。弱点どこだっけ?」
「各手足の付け根。」
「(気になるのはこいつが湧くのは第二級幼界以上って共有を受けたとこだな。)」
と白刃が懸念点について考えていると通信機より連絡が入る。
『本部より通達。発生した亡獣の情報を求む。』
「恐らく泣蜘蛛です。戦闘開始します。」
『承知した。魁具土命の使用を許可。健闘を祈る。』
「了解。」
「おっ!まじ!?」
魁具土命とは、『竜胆』に所属する隊員にそれぞれ支給される、武器のことであった。
特殊な金属が使用されている小さめの鉄パイプのような外観の武器であり、他の物質よりも『魁』を通しやすい。
そして魁具土命の1番の特徴は、
使用する人間の能力により形を変えること。そして祝詞が必要なこと、それにより能力に影響を及ぼすことである。
「『示して見せろ』」
「『その道を往け』」
それはすでに変形を終えていた。
白刃願のもつ魁具土命は对になった小太刀。
朱璃纏のもつ魁具土命は一本の太刀であった。
「それじゃいくか!」
「ああ。」
まだその蜘蛛は動かず、2人を見定めるかのように視線だけを送っていた。
対する2人の対応は、
「『貫け』」
遠距離からの先制攻撃であった。
白刃の左手にあった小太刀が射出される。
その攻撃は手足群の一つで抱えていたコンテナを盾にし回避される。
「■■■■■■■■」
手足群が地ならしを始め、蜘蛛の巣状に地面に亀裂が入っていく。
「『揺らせ』」
右手の小太刀を足元のコンクリートに押し当て能力を再度発動する。
既に左手の小太刀は白刃の元に戻っていた。能力との親和性が高い魁具土神のため、能力発動後白刃の元に回帰するようになっている。
蜘蛛の巣状の足場の崩壊は不完全なものになり、泣蜘蛛は苛立たしそうに次の手を打つ。
「■■■■■」
「(毒!)」
不完全だったとはいえ割れた足場から間欠泉のように液体が吹き出す。
その液体は投げ出されたコンテナをドロドロに溶かしていた。
ただ、化け物はすでに忘れていた。
相対した人間は二人だったということに。
「大円壊!!」
泣蜘蛛の頭上から朱璃纏が刀を構え、回りながら切り込んでいた。
ただ武装したコンテナの幾箱か破壊しただけでこの攻撃は終わってしまう。
「ううん。大円壊であれかぁ。」
「てか最近毎回技名つけて大技出すの。あれどうにかなんないのか」
「テンション上がるじゃん。俺の能力その方がいいし」
「まぁそうなんだが。そんでもってこいつをどうするかなぁ。」
「願的にはどんな感じ?」
「でかい。のろい。毒持ち。足一本ずつ削ればいいだろ。隙見てズドンで」
「んじゃ俺左。」
「あい」
泣蜘蛛は自らを脅威となど、微塵たりとも考えていなさそうな人間を前に、静かに怒りに震えていた。
「■■■■■■■■」
自分を苛立たせる人間を殺し、先程よりも強く『魁』を込め、再度足場を破壊しようと試みる。
刹那。二人は弾けるように駆け出し、亡獣の懐へと潜り込んでいた。
「『切り裂け』」
「大双壊!」
それぞれの方法で亡獣の前足二本に大きくキズを入れる。
ただ泣蜘蛛もただではやられない。胴体を武装していたコンテナを何割か残りの手足に移し二人を踏みつぶしにかかっていた。
「遅ぇよ。また見失ってんだろ。」
とすでに離れていた白刃は溶けてドロドロになったコンテナに小太刀二本で触れながらつぶやいた。
「『捻じれろ』」
泣蜘蛛が、その姿を見た時には、コンテナは巨大な槍へと変わっていた。
「『飛べ』」 「『吹き飛ばせ』」
「■■■■」
亡獣は再度足場から溶解液を噴出させコンテナが自身に届く前に溶かしきろうとしていた。
だが
「『吹き飛ばせ』っつったんだ。聞いてなかったか?」
溶解液を吹き飛ばしながらその槍は蜘蛛の腕に突き刺さる。
捻じれたコンテナへの命令内容はただ触れたものを吹き飛ばすことであり、
その命令を終えたコンテナにそれほどの破壊力はない。
ただ、亡獣は自身の守りに使用していたコンテナを攻撃に使用するため足元に集中させてしまったがため
結果それはまさしく
命に至る隙を生んでした。
「願ぃ!!」
自分を吹き飛ばした人間の背後からいつ移動したのかもう一人の人間が駆け込んでくる。
駆け込んできた人間はもう一人の人間の小太刀を踏み台にし、居合の構えをとる。
「『吹き飛ばせ』...そんでもって死ね。」
その蜘蛛が最期に見たのは、先ほどの槍よりも速く飛来してくる少年の姿。
「天断裂!!」
その場に残されたのは、真っ二つに裂けた亡獣の亡骸と、二人の少年だけであった。




