とある誕生会
「誕生日おめでとう」
その声に続いておめでとう、おめでとうと私の周りでたくさんの人の声がする。
つい先程までこんな風に祝われるなんて思ってもいなかったので、私は目を白黒させながらなんとかありがとう、ありがとうと頭を下げた。
一人静かにこの日を迎えることになるだろうと思っていた私にとって、このお祝いはまさに青天の霹靂とでも言うべきものだった。
集まった人たちが一通り私に声をかけ終えたところで、私はベッドの上から皆に尋ねた。
「なんで皆さんはこんなにもお祝いしてくれるのですか?」
見たところ私の知り合いだと言えるような人は一人もいないようだ。それなのに一体なぜ、知らない人のお祝いにこんなにも集まるのだろうか。
そもそもの話として、これは本当にお祝いをするようなことなのだろうか。
先ほどは思わずありがとうと頭を下げてしまったが、いま思えば不謹慎だと怒るべきだったのかもしれない。
私からの質問に集まった人たちは顔を見合わせる。そして、一人が代表するように答えた。
「僕たちの幽霊仲間が産まれたのが嬉しいからさ」
孤独に死んでこの世に未練を残し、成仏出来ずに幽霊になる人というのは少ないらしく、新しい仲間が増えるとお祝いするのが慣例となっているらしい。
私はベッドを見下ろす。そこにはたった一人で冷たく横たわる一つの死体があった。
そして今度は周りを見回し、私を囲むにこにこ顔の人たちを見る。
どうやら、私の死後は生前よりもずっと楽しいものになりそうだった。
お読みいただきありがとうございます
面白ければ評価や感想をお願いします