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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

日本神話における、一つの分水嶺

掲載日:2024/10/05

 歴史に、それも日本神話に、もし、などというものを語ってみたところで、歴史も神話も変わりはしないのですが。


 資料を読んで覚えた違和感を、自分なりに解釈してみようと思います。




 イザナギとイザナミ夫婦。


 兄妹で夫婦だと、どこかで見かけたような気がします。


 近親婚は、産まれてくる子に異常が出やすいとも。



 説を語る前に、まずは、神話上の時系列を整理してみましょうか。




 1 : イザナギ、イザナミ夫婦の間に、子どもができる。


 2 : 産まれた子は、産声を上げると同時に母体を焼くほどの、炎の神力を持つヒノカグツチ。


 3 : 産まれると同時に母イザナミを焼き殺したヒノカグツチは、激怒した父イザナギに斬り殺された。


 4 : 黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ) (根の国)に逝った妻イザナミを取り戻すべく、イザナギは単身で根の国に潜入するも、失敗。


 5 : 死の気配を洗い流すため(みそぎ)を執り行う。

 その結果、アマテラス、ツクヨミ、スサノオ、ヒルコなどが産まれる。


 6 : 愛する妻を喪い、気力をなくしたイザナギは、隠居。

 以降は、アマテラスが神事・祭事を、ツクヨミが政治を、スサノオが軍事を執りまとめる。


 7 : スサノオとアマテラスが契約結婚をし、幾柱もの神が産まれた。


 8 : 高天原からスサノオが去り、芦原中津国へ(くだ)る。



 ざっくりこんな感じでしょうか。


 ですが、なんとなーく、ちがくないですか?


 推論に推論を重ねると、下世話な勘繰りをしてしまいそうになりますが、今回は、こうではないか? という推論を語らせてもらいます。



 1、5、2、3、4、6、7、8。


 実際は、こうではなかろうかと。

 それに合わせて、時系列の説明文も修正してみます。


 1 : イザナギ、イザナミ夫婦の間に、子どもができる。


 5 : アマテラス、ツクヨミ、スサノオ、ヒルコ(流産)などが産まれる。


 2 : 最後に産まれた子は、ヒノカグツチと名付けが決まっていて、鍛冶の頭領に配置する予定だった。


 3 : ヒノカグツチは、結果無事に産まれるが、同時に母イザナミは命を落としてしまった。

 イザナギは、愛する妻が死んだにも関わらず、炎のような泣き声をあげるヒノカグツチに激昂(げきこう)し、赤子のヒノカグツチを斬り殺した。


 4 : 妻イザナミを取り戻すべく、神事を執り行い祈り続けるも、失敗。


 6 : 愛する妻を喪い、気力をなくしたイザナギは、政治からは隠居。

 以降は、アマテラスが神事・祭事を、ツクヨミが政治を、スサノオが軍事を司る。


 7 : スサノオとアマテラスが契約結婚をし、幾柱もの神が産まれた。


 8 : 高天原からスサノオが去り、芦原中津国へ(くだ)る。




 では、これに合わせて自説の推論を語ろうと思います。




 イザナギとイザナミ夫婦は、高天原の政治も神事も軍事も総括する立場で、とても忙しい毎日を送っておりました。


 そんな中でも、夫婦の愛の深さ絆の強さは誰が見ても明らかです。

 夫婦の子は、次の時代を担う大事な大事な存在です。

 イザナミの妊娠が分かれば、それは皆で大層喜んだことでしょう。


 なにせ、長女アマテラスは、母イザナミに似て器量良しな上に、父イザナギに似て利発な子どもです。

 次の子も、きっと素晴らしい子に間違いはないと皆が期待します。


 ……しかし、ツクヨミは、賢く冷静な子でしたが、病弱で子をつくれない身と分かり、ヒルコは生きて産まれることすら叶わない流産でした。


 そんな中で埋まれたスサノオは、やんちゃでわがままな性格でしたが、健康ですくすくと育ち、剣術や戦闘指揮などに才能があることが分かりました。


 神事・祭事は、長女のアマテラスが、

 政治はツクヨミが、

 軍事はスサノオが、いずれ長になるであろうと期待される中で、イザナミに更なる妊娠が発覚します。


 古き時代において、すでに高齢出産とよべる年齢で妊娠したイザナミは、愛する夫との子を産み落とし、命を喪ってしまいます。


 産まれてきた赤子は、ヒノカグツチ。

 いずれ、鍛冶を取り仕切る者へとなるよう、鍛冶に必要な「火」と「槌」の字(読み)が組み込まれていたものの、愛する妻を喪ったイザナギは、妻の忘れ形見を斬り殺してしまいます。


 神事を執り行い、長く祈りを捧げるも虚しく、イザナミは息を吹き返すこともなく、その体は次第に腐って虫が涌いてしまいます。


 喪に伏し、死後の安寧を祈ろうにも、腐って虫が涌いた亡き妻の姿が頭から離れず、夢にも出てくる始末。

 その夢は、夫イザナギを冥府に引きずり込もうとするような、まさに悪夢でした。


 長い年月悪夢にうなされ、やつれ果てたイザナギは、気持ちを切り替えるために(みそぎ)の神事を執り行います。


 そのときにはすでに、高天原の仲間たちにも子が産まれ、次代を担う教育を受けるに至っていました。


 自身が悪夢に取り憑かれている間にも、高天原は正常に機能し、未来を見据えた対応を取っていました。

 ことここに至っては、すでに自身が政治に携わる必要も感じなくなり、隠居を決意します。



 ……しかし、母を喪ったスサノオは、そうもいかず。



 神事を執り行う巫女としての教育を徹底されてきたアマテラスは、象徴として早くに自立する必要があり、

 政治を司るツクヨミは、病弱ながらオモイカネをはじめとする幹部とやり合い日々疲れ果てている。


 そんな中で、スサノオは、成長と共に剣術の技量も際限なく伸び、戦術眼も磨かれ、体格にも恵まれ、もてはやされることで増長してしまっていました。


 もしここで、父イザナギと、姉アマテラスと、兄ツクヨミの、家族たちが愛情をもってスサノオと接する機会が多くあったならば、心が未熟なまま成長するなんてこともなかったかもしれません。


 あるいは、適当な女性を母であるとすれば、スサノオの気も紛れたかもしれませんが。



 隠居すると宣言するために帰還したイザナギに、母に会いたいと駄々をこねるスサノオ。


 感情が(たかぶ)って抑えが利かなくなったスサノオは、自身の取り巻きから教えられた母イザナミの死の真相と子殺しを口走ってしまいます。


 どれほど優れていても、冷静さを欠きやすい未熟な心を持つスサノオに、イザナギは、高天原からの追放を言い渡します。


 それは、本当のところは、狭く安全な揺りかごから離れ、世を広く知ることで自身の育った環境を知り、精神的にも成長し激情を抑える術を見いだしてほしいとの親心でもあり、スサノオがあと一歩成長するための、自身の最後の役目だとの判断でした。


 父への暴言を恥じ、追放処分を受け入れたスサノオは、しかし、最後に姉アマテラスへの挨拶がしたいとのスサノオの言葉に、イザナギは、そうしなさいと許可を出します。



 ここが、一つの分水嶺。



 もしここで、姉に会うことなく高天原を去っていたなら、天の岩戸事件は起きなかったことでしょう。




 父イザナギが、母イザナミと結ばれたように。


 弟スサノオは、母イザナミへの想いと姉アマテラスへの想いを混同したまま抱え、(こじ)らせ、暴走しようとしていました。


 姉への想いを打ち明け、共に高天原を出ようと誘うスサノオに対し、

 体が大きく粗暴で力も強いスサノオに恐怖していたのか、高天原を裏から操ろうと目論む一部の重臣によって、近親婚の危険性を説かれた事で忌避感があったのか、自身の立場から高天原を捨てる決断ができなかったからか、理由はいくつも考えられるものの、そこに愛があったかはともかくとして、弟からの想いを拒んだアマテラス。


 それにより、激昂したスサノオは勢い余ってアマテラスを斬ってしまい、自ら帰る場所を失い高天原を去るしかなくなってしまいます。


 天の岩戸事件は、神事を司る巫女の不在により、儀式を執り行うことができなかった数年を指し、契約結婚により産まれた幾柱の神々は、それほどの(子ども)が産まれ育つほどの年月が経った事を示すものと思われます。


 また、その後も「アマテラス」が存在し続けた理由の一つとして、アマテラスは神事を司る巫女の称号を指し、次代が襲名することで引き継がれていくとの解釈です。

 



 最後まで読んでもらい、ありがとうございました。


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― 新着の感想 ―
この解釈を読むと、藤壷とこっそり通じた光源氏も、実はスサノオの正統な(文学的・神話的)子孫なのだな、と感じます。 昔は母親が早くに死に、長女が妹・弟の面倒を見る(事実上の母親)だったから、この手の話…
おおーー! 自然ですね! リアリティを感じます! 神も人間も考えることは同じ! 感情を無視して語ることはできませんわな! おもしろかったです!
いい解釈だと思います。 ところで、私が以前読んだ「ぼおるぺん古事記」(こうの史代)では、禊で生まれた子の中にヒルコは入っておらず、夫婦の最初の子として描かれていたように思います。 同じ日本神話でも、古…
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