repetizione
のぼせちゃったみたく、頭がふわふわしてる。ちょっと、刺激が強すぎたかな、あの妄想は。じゃあ、ほかも人だったらどうだったのかなとか、ちょっと想像しただけで頭が変になっちゃいそう。
「『好き』かぁ……」
恋っていう気持ちは、わたしにはフィクションの世界みたいなもので。……もし、これがそうだっていうんだったら、……想像より、ずっとすごいや。ふわふわした気持ち、熱いまま止まらない。さっきのボイスドラマみたいなこと、もし、本当にされちゃったら、……吐息とか、耳にかかる息遣いとか、そういうとこまで感じちゃえるの。そういうの考えるだけで、頭がどうにかなっちゃいそう。
「ほんとに、わたし、千百合ちゃんのこと、……」
好き。とか、そういうことなのかな。知識だけの感情だから、まだ、わたしに埋め込まれるのに時間がかかる。これが本当にそうなのかも、まだ分からない。胸の中で跳ね上がったドキドキの正体、知りたいけど、知りたくない。
「はぁ……、分かんないなぁ」
友達だし、憧れの人だし、声のお仕事をしてる中でも尊敬してるし、ステージは違うけど、一緒に『もっと先』に向かう仲間だし。……でも、それより先を考えるのって難しい。いつも、傍観者でいることが多いから、恋なんてものはなんとなく、自分には遠い感情だと思ってた。だからこそ、……いま、そうかもしれない気持ちが胸の中にあるせいで、胸の中がくちゃくちゃにかき混ぜられてく感じ。
恋人らしいこと、か。……例えば、……その先のことを、想像するのもあんまりしたことないや。わたしと誰かで、そんなことを考えようとしたこともなくって。そういうことをしてるボイスドラマとかも聴いたことがあるけど、それも上手く自分に当てはまらなくて。
それじゃあ、千百合ちゃんとだったら……?手をつないだり、デートしたり、……チューとかしてみたりとか、……そういうこと、だよね。……頭の中で浮かべて、そういうことしようとする瞬間に真っ暗になる。その先、知りたいような、知りたくないような、……そんなことも、どうしたいのかわからなくなってる。
お風呂、行ってこようかな。これ以上考えても、この問いに答えなんて出てきそうにないや。好きか嫌いかなら好きってすぐ答えられるけど、それ以上のことには繋げられない。……七世ちゃん、また新しいウワサ話を拾いに行っちゃってるもんな。訊いてみたかったんだけどな、恋のこと、もっといろいろ。