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amabile

 千百合ちゃんにとっても、わたしは一番の存在で、特別で、おんなじ『すき』を持ってて。少し、気持ちに余裕が出てくる。恋に気づくまでの関係に、ちょっと似てるような感じ。『恋』が『愛』になるって、こういう感じ、なのかな。もっと、知ってほしい。そんな欲求も戻ってくる。


「ねえねえ、ちょっといい?」

「何かしら?」

「わたしもオーディションとか受けていいよって言われたし、いろいろ試してみようって思うんだよね」

「そうだったの?よかったじゃない。あなたのお母さんも、優しいけど心配性なのよね」


 二人きりの練習の合間、わたしの部屋で一休み。これから言うことも、『すき』よりは簡単だけど、恥ずかしいな。


「うん、そうだね、……それで、ボイスドラマとか動画サイトで出してみようかなって思ってるんだけど……」

「へー、いいと思うわ、せっかくいい機材もあるし」


 わたしの練習もあるけれど、千百合ちゃんの普段のイメージから離れられないかなって。こういう真面目な気持ち少々と、ちょっと人には言えない下心いっぱい。

 

「そっか、それで、……千百合ちゃんもよかったらどうかなって。普段の役から離れられるかもだし」

「いいわね……、とりあえず事務所に聞いてみるわね」

「そっか、よかった……、二人のほうが幅も広がるし嬉しいよ」


 もっと、いろんな声が聞きたい。『すき』の熱に気づいた後も、その熱が少し落ち着いても、その気持ちだけは、全然冷めてくれない。


「ところで、台本とかってどうするの?文芸部の子に頼むとか?」

「えっとね、けっこうネットで自由に使っていいって言ってる台本けっこうあるんだよ、ほら」


 例えばで見せてみた台本、よく考えたらちょっと恥ずかしいかも。わたしが好きなこと、気づかれちゃうな。スマホを渡した後から、ほっぺの奥、熱くて止まんない。


「へー、ほんとだ。……ねえ」

「なぁに?」

「その……、けっこう甘々すぎない?」


 照れた顔の千百合ちゃん、かわいいかも。あの時の顔と似た表情、……あの時も、わたしと同じくらい照れてくれてたんだ。嬉しい、かも。


「そうかな……、割とこういうの聴くけど、これくらいのは普通だよ?」

「そういうものなのね……」

「うん、……こういうのってやっぱり、してほしい事とかになっちゃうし」


 わたしは直接聴いたたわけじゃないけど、えっちなことを誘うようなこともあるし。……保健室で介抱されるだけのだし、……でも、想像するだけでドキドキしちゃう。


「ねえ、響」

「えっと、何?」

「もしかして、私にこういうことしてほしいの?」

「ぅ……、言わないでよ……っ」


 急にいつもの声になったと思ったらいきなり、言ってない本当の気持ちを射貫いてくる。もう意味ないのに、真っ赤な顔を隠したくてうつむいちゃう。


「もー、どれだけ私のこと好きなの?」

「それは、……千百合ちゃんに恋しちゃうくらい、とか」

「真面目に言わないでいいのよ、もう……」


 千百合ちゃんの声、照れたときと同じになる。吐息がかかって、顔、耳元に近づいてくるのがわかる。何されるのか、わからなくなる。


「響のお願いなら、いくらでもしてあげるのに」

「ふぇっ!?」

「んもう……かわいいわね」


 冗談なんかじゃないの、声でわかる。優しくて甘い、わたあめみたいな声。……溶けちゃいそう、なんて、もう溶けちゃってるな、わたし。

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