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浮気された聖女は幼馴染との切れない縁をなんとかしたい!  作者: gacchi(がっち)


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93.危機感

「王都の神官宮にいる者たちは、神官隊員の中でも選ばれた者たちだ。

 その上、聖女に対して害ある行動はできないように神に誓いを立てている。」


「え?誓い?それった破ったらどうなるの?」


「神力をすべて失う。

 封じるだけなら使えなくなるだけなんだが、

 神力を失うとなれば、命もなくなる。」


命も無くなる!?死んじゃうってこと?

え?神官宮の隊員って50人以上いるんじゃなかった?

その全員がそんな怖い誓いをしているの??


「私たちに何かしたら死ぬって。本当に?そんな誓いしてるの?」


「誓いを立てるくらいじゃないと信用できないんだよ。

 だけど、地方の神官宮になると誓いを立てていない。

 その中に聖女を害するものがいないとは限らない。」


「…そうなんだ。

 この世界を救おうとするものだけじゃないって言ってたもんね。

 どこに危険があるかわからないってことか。

 わかった。気を付ける。」


今までずっと神官宮にいたから、それほど危険を感じたことは無かった。

律に連れ出されそうになった時は怖いと思ったけれど、

普段生活していて隊員さんたちを不安に思ったことは無かった。

それはこういうことだったんだ…。


でも、これから行く場所にはいろんな人間がいる。

私と美里を傷つけようと思っている人が紛れ込んでいる可能性もあるんだ。

もう、のほほんとしているわけにはいかないんだな…。


「ユウリ、多分、君が思っているよりも危険だということはわかっていて。」


「え?」


思っているより危険?

今、けっこう危険だって思って、ちゃんと気を付けようと思ったよ?

思わず首をかしげてしまいそうになったけれど、

キリルの顔が真剣そのもので何も言い返せない。


「たとえば、これから行く先は子爵家の領地だ。

 その子爵家の人にお礼に夕食を食べていってくださいと言われたら?」


「えっと、食事は他では食べちゃダメなんだよね?」


「そう。では、挨拶をさせて欲しいと言われたら?」


「…近づかせちゃダメだから、遠くから挨拶?」


「小さいご令嬢、そうだな、三歳くらいの女の子がいたとする。

 お礼に花束をと、小さな花束を渡したいと言われたら?」


「……え。」


「聖女様に渡したくて、大事に育てた花を切ってきました。

 なんて小さな女の子に言われたら?」


「…受け取っちゃダメなんだよね?」


「どうしてダメなの?せっかく用意したのにって泣かれたら?」


「うぅ。困る…。」


受け取っちゃダメなんだろうなとは思うけど、目の前で泣かれたら困るな。

なんか、こう、ものすごくひどいことしている気分になる。


「でも、その花束には毒が仕込んであるかもしれない。

 握手をといった手には毒針付きの指輪がはめられているかもしれない。

 食事には眠り薬や媚薬が入っているかもしれない。

 その可能性が少しでもある限り、好意を受け取ることはできない。」


「うーん。そういうことも考えて行動しなきゃいけないんだ。

 思ったよりも大変だなぁ。」


そんな風に具体的な例を言われると、たしかに思っていなかった。

気を付けるだけじゃなく、行動の意味をちゃんとわかっていなきゃいけない。


「というわけで、一番いい方法は、関わらない。」


「ん?関わらない?貴族と?」


「貴族だけじゃなく、平民も、地方の隊員も。

 対応はすべて隊員たちがするから、ユウリは近寄らないこと。

 隊員たちが必死で他の者を近寄らせないようにしているのに、

 ユウリから近寄ってしまったら意味が無いだろう?」


「あぁ、うん。それはわかる。」


「聖女様に会わせてください、話を聞いてください、

 なんて遠くから泣き叫ばれたとしても絶対に近寄らないように。」


「はい。」


まるで先生に言い聞かせられているような気持ちになり、真面目に返事をする。

ソファに座っているけれど、気持ちの中では正座しているような感じだ。

私が勝手に判断して動くことのないように肝に銘じておかなきゃいけない。


私が神妙な顔で頷いたことで納得してくれたのか、

キリルもようやくほっとした顔になった。


「じゃあ、話しはこれで終わり。

 お茶淹れるよ。お茶を飲み終わる頃には二人も起きてくるだろうから。」


「うん、ありがとう。」




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