表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮気された聖女は幼馴染との切れない縁をなんとかしたい!  作者: gacchi(がっち)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/139

74.逃げた律

後ろをついて歩いてきていたはずの悠里が、他の男に向かって走っていく。

どうしてなんだ。俺と一緒に逃げるって言ってたじゃないか。


引き返そうとしたら、隣にいた女に腕をひかれる。


「何してんの!早く逃げるわよ!」


「だって、悠里が!」


「今は無理よ!また次のチャンスを待つの!」


せっかく悠里に会えたっていうのに、あきらめなきゃいけないのか?

あの男が悠里を呼んだら、悠里はあの男に向かって走って行ってしまった。

もしかして何か変な力を使っている?

悠里はあの男の力に従わされている?


だって、悠里はそんな風に誰かに向かって走るような女じゃない。

恋愛なんてするわけがない。誰にも気を許したりしない。

それを認めて、それでもそばに居られるのは俺と一花くらいだ。


早く助けだしたかったけれど、今は無理だと言われ引いた。

せっかく協力してくれる人たちを見つけたのに、捕まったら意味がない。

女が言うとおりに走ると出入口なのに護衛がいない場所にたどり着いた。

ここは厳重に守られている場所だと聞いていたけど、どういうことなんだ。

たまたま護衛がいないなんてことはありえない。

俺たちに協力してくれる人は、護衛も排除できるくらいの人なのか?



「リイサさん、これからどこに行くんだ?」


神官宮を出た後、待っていた馬車に乗せられてどこかに連れて行かれる。

この女性を信じ切れるかはわからないが、それでも他に頼るものがない。


「私が仕えているお嬢様のところよ。

 一度会って話してみたいとおっしゃっていたから。

 その後隠れ家に案内するわ。」


「わかった。」


この世界に来て、初めて外の景色を見た。

古い町並み。どこかヨーロッパとかそんな感じだ。

車じゃなく馬車なのにも驚いたが、この世界には魔術が存在すると聞いた。

馬車なのに道が綺麗なのも、ごみが一つも落ちていないのも何か仕掛けがあるのか。


しばらくして、馬車は大きな屋敷の中に入って止まった。

リイサに言われるままついていくと、庭のほうに出た。

あちこちに薔薇が咲いていて、かなりの金持ちの家に見える。

東屋の中に紫のドレスを着た女がいるのが見えた。あれがお嬢様か。


まるで西洋の人形みたいだ。

栗色の髪を縦ロールにして、派手なドレス着て。

メイクは派手で真っ赤なくちびるが魔女みたいだ。

この世界の人間の年齢がよくわからないけれど、

見た目は俺とそんなに変わらないように見える。

近づいたら微笑まれて、声をかけられる。


「よく来たわね。異世界の人。

 …意外と見れるわね。さすが聖女様の恋人かしら。」


「あなたがお嬢様ですか。

 助けてくれてありがとうございます。」


リイサの説明ではこのお嬢様は貴族の中でも身分が高い人らしい。

一応は丁寧に話しておいたほうがいいと思った。

この人の協力が無ければ悠里を助け出せないのだし。


異世界人がめずらしいのか、観察されるようにじろじろと見られる。

女に評価されるのはよくあることだが、ここまで不躾に見られるのは久しぶりだ。

どうやら高評価をもらえたようで、にっこりと笑うと気に入ったわとつぶやかれた。


「あなたも大変だったわね。

 聖女様もかわいそうに。恋人がいるのに引き離されて。

 今日は無理だったみたいだけど、また計画を立て直しましょう?

 聖女様はもうすぐ地方をまわると思うし、いくらでも隙があると思うから。

 それまでは我慢して待っていてくれる?」


「地方をまわる…その時に隙をみて…。

 わかりました、その時を待ちます。」


悠里があの神官宮から外に出る。

厳重に守られていると言ってた神官宮でも護衛がいなかった。

きっとこの人の力なら、悠里を助けだせるんじゃないだろうか。


「恋人に会えない悲しさはよくわかるわ。

 私ももう一年以上も会えていないもの。

 …いくらでも協力するから、ね?」


「ありがとうございます。」


今はこの人に従っておこう。

悠里を無事に助けだすまでは。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ