表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浮気された聖女は幼馴染との切れない縁をなんとかしたい!  作者: gacchi(がっち)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/139

63.ダメでもいい?

「ここね…何の遺跡でもないんだ。」


「え?」


「この柱も、ただの石。

 普通にどこかから運んできただけの白い石。」


「は?」


「遺跡でもなんでもなく、普通に神官隊員が作った場所なんだ。」


「えぇぇ?どういうこと?」


なぜ、石の柱でぐるっと囲むようなことを?

この中央にある石のステージはいったい何のために?



「どうしても魔力を神力に変換できない聖女がいたんだ。

 半年たってもできなくて、いろいろと試行錯誤したそうだ。

 それで、聖女が神聖っぽい場所でなら変換できるんじゃないかと言い出して。

 当時はここは何もない原っぱだったそうだ。

 聖女がイメージする神聖っぽい場所、という通りに作った。

 結果、その聖女も神力に変換することができたそうだよ。」


「神聖っぽい場所のイメージぃ?」


え?ストーンヘンジとか、ギリシャ神殿とか、そういうのをごちゃまぜにしたの?

確かに神聖っぽいと言えばそうなのかもしれないけど、

神力って和なイメージじゃなかったっけ…。

ちょっとイメージ違うんじゃないだろうか。

だからその聖女は苦労したんじゃないかと思ってしまう。


「最初にこれを聞いちゃうと、この場所の神聖っぽさが無くなるだろう?

 そのことを聞いた次の聖女は事実を言わないほうがいいって言って。

 それ以降はこの場所は修行の場とだけ伝えることになった。」


「えぇ?そんないい加減でいいの?」


「そんなもんなんだ。聖女の力も解明できてないし、

 修行のやり方もこれだと決められたことは無い。

 何でも試すし、できるまで時間がかかろうが気にしない。

 だから、ユウリも気にせずにいろいろ試して、ダメなら少し休んでもいいし、

 そんな風に思い詰めたりしないで。」


「キリル…。」


ダメでもいいと言われて、急に迷子になったような気持ちになる。

出来なきゃダメだと思って、焦って、でもできなくて。

思いつめないでと言われても、もうすでに思いつめてた。


「泣かなくていい。焦る必要はないんだ。

 俺がいるんだ。つらかったらつらいって言って?」


「私…何の役にもたってないって思って…。」


「うん。」


「せっかくキリルがこの世界に呼んでくれたのにって。」


「うん。」


「…キリルが呼んだのが間違いだって思ってたらどうしようって…。」


「そっか。思うわけないよ。

 聖女にするために呼んだんじゃない。

 俺はユウリに会いたかった。

 こうして一緒にいられるだけでうれしいんだ。」


「役立たずなのに…。」


「俺は、大丈夫だって信じている。

 だけど、もしこのままできなくても、俺はユウリと一緒にいる。」


「…。」


「大丈夫、間違いじゃないよ。」


そっと抱き寄せられ、頭を撫でられ、キリルの優しさに涙が出る。

ここにいていいって、確信が持てない。

聖女として役に立てたなら、キリルの隣にいていいって思えるのに。


まだ何もできていない。

後から来た美里ができているのに、私は何もできない。

そのことが悔しくて、心の中でもがき続けている。


一度泣いてしまったら、もう涙は止まらなかった。

苦しい…苦しい…泣けばなくほど追い詰められていく気がするのに。


キリルの腕の中で泣き続けて、そのまま眠りについた後も、

キリルはずっと離さないでいてくれた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ