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6.逃げたい

「あの…具合は大丈夫?」


「え?」


「シー静かに。向こうで騒いでいるものたちに気が付かれたくない。

 いい?今から質問するけど、首を振って答えてくれる?」



後ろから声をかけてきたのは、騎士のような白い服を着ている若い男性だった。

私が座り込んでいるのが心配なのか、跪いて顔を覗き込むようにしてくる。


少しだけ彫が深いけれど、西洋人というほどではない。

かといって、東洋人にしては銀髪で鼻が高く色が白かった。

芸能人のような華やかさはないけれど、静かな印象の美形。

何よりも穏やかそうな緑色の目と話し方に、まずはこの人の話を聞いてみようと思った。



コクン。口には出さずにうなずく。


「わかってくれてよかった。まず、あの二人は知り合い?」


コクン。嫌だけど、知り合いには違いない。


「仲間?一緒に居たい?」


ブンブン。音が出そうなほど首を横に振った。


「…これから事情を説明することになるけど、あの二人とは別の部屋がいい?」


コクン、コクン。お願いします、そうしてください。


「わかった…立てる?静かについてきて。」



私の必死な願いが通じたのか、律と一花とは離してもらえるらしい。

差し出された手に迷うことなく手を出すと、立ち上がらせてくれる。

隣に立ってみたら、男性は予想よりも背が高かった。

きっと律よりも高いということは190センチ以上ある?

つながれた手をそのままに部屋の後ろのほうへ連れて行かれる。


律と一花の様子をちらっと見たが、まだ興奮しているようで、

私には気が付かずに文句を言い続けている。

ここで私が起きたことに気が付かれたらまた騒がれるに違いない。

お願いだからそのまま私の存在を忘れていてほしい。


男性に手を引かれるままついていくけれど、

部屋の後ろに行ってどうするんだろう。


部屋の後ろの壁際まで行くと、男性が手を壁にあてて何かをつぶやいた。

すっと音もなく壁に穴が開いた。普通のドアと同じくらいの大きさ。

壁の向こう側はぼんやりと明るかった。

奥に続く通路があるようで、遠くまで続いている。


え?隠し通路とか、そんな感じ?


手を引かれるままに中に入ると、また音もなく壁の穴は閉じて元通りになった。

もう向こう側の騒音も聞こえない。気配を感じることもなくなっていた。

ようやく律と一花から離れられたことで、思わず息を吐いた。


「大丈夫?もう話してもいいよ。」


「はい…大丈夫です。」


「落ち着ける部屋に行ったら事情を説明するから、もう少しだけ歩くよ。」


「ここは隠し通路とかですか?」


「そう。ここは特別な通路なんだ。

 他の人は入ってこれないから、あの二人が追いかけてくることもないよ。

 これから行く部屋もそう。許可なく入ってくることはできない。

 もちろん、君の安全は保障する。

 …初めて会った俺に言われても安心できないだろうけど。」


「いえ…あの二人と離してもらえたので、安心しています。

 あのまま三人で行動をしていたら、頭がおかしくなりそうでした。

 確かに出会ったばかりで信用できるかって言ったらそうなんでしょうけど、

 あなたには助けてもらえたと思っています。」


「そう?それならよかった。」


隠し通路から出た先は、どこかの廊下だった。

大きな窓があって、その向こうには山々がそびえたっているのが見える。

少し霞んだような深緑の山に雪が積もっている。

北欧あたりの景色のように見えるけど、実際に行ったことはないので思うだけ。


本当にここはいったいどこなんだ?

まだ十月に入ったばかりなのに、山に雪が積もっている場所って…。

知らない間に海外に連れてこられたにしてもいろいろとおかしい。


今歩いている廊下だって、ペルシャ絨毯みたいな織物が敷き詰められている。

その辺にポンと置かれている壺も高級そうだ。

建物もものすごく広い。こんな大きな建物って…。

個人の屋敷だとしたら、ものすごいお金持ちに違いない。


「この先に部屋を用意してある。」


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