52.お姫様
「…お姫様?」
「だよね…私もそう思った。っていうか、美里もね?」
「否定しない。」
真顔で確認し合った後、思わず吹き出してしまう。
夜会のために用意されていたドレスは白のレースを重ねた豪華なものだった。
ウエディングドレスでも通用するんじゃないかと思いながら着替えさせてもらい、
鏡を見たら完全にお姫様としか言いようのない自分が映っている。
美里も同じように似たデザインの白ドレスを着ていて、
ふわふわの銀髪を軽くカールして流している感じが、完全にお姫様だった。
とはいえ、中身はそのまま美里で、
会話すると何も変わっていないことに安心する。
私はキリルに、美里はカインさんにエスコートしてもらっているけれど、
二人も私たちの会話に慣れたみたいで何も言わずに微笑んでいる。
服装はいつもの白い騎士のような服に青いマントがつけられている。
美形の騎士服だけでも見惚れちゃうくらいなのに、今日はそれ以上で神々しいくらいだ。
あぁ、これ、周りから見たら、
お姫様と王子様が二組いるように見えるんだろうな。
少し離れたところにいる隊員さんたちから、
なにか尊敬するようなまなざしを感じる。
こっそりジェシカさんに聞いてみたら、
歴代の隊長候補の中でもカインさんとキリルは優秀で、
隊員さんたちから慕われているそうだ。
優秀というのにも納得したけれど、
それよりも二人が持っている王者の気品のようなものが、
下につく人から見たら安心してついていけると感じるんじゃないだろうか。
私だって、もし二人が上司とか先生なら安心して従うと思う。
「そろそろ時間だから行こうか。」
「もう?」
「あぁ、もうすでに王族とすべての貴族が集まっている時間だ。
そこに入場して、聖女の席へと座る。
礼はしなくていい。聖女以上の身分を持つものはいない。
もし、挨拶したくなったら、名乗るだけでいい。
よろしく、くらいは言ってもいいけど、お願いしますとか言わないようにね。」
「…難しいかも。礼しちゃダメなんだ。」
「私も…つい、よろしくお願いしますって言っちゃうかも。」
美里と二人で自信が無いなぁと言いあっていたら、カインさんが美里の頭を撫でた。
「大丈夫。俺が隣にいるから。
何かあれば俺が対応するから、ミサトは黙ってそばにいて?」
「うん、わかった。」
あれから一緒に寝るようになったからか、
カインさんと美里の間にあった遠慮はなくなったように感じる。
カインさんの隣で安心した顔で笑う美里を見て、こちらもうれしくなる。
「ユウリ、ユウリもだよ?わかってる?
何かあれば俺が対応するから、前に出てこないでね?」
「わかってる。キリルの後ろに隠れてていいんでしょ?」
「わかってるなら、よし。」
満足そうなキリルに夜会に行くという不安がやわらいでいく。
今日は顔を見せるためだけで一時間もしたら退席するらしいし、
何かあってもキリルが守ってくれる。
「じゃあ、行こうか。」
神官隊員たちが護衛しながら先を歩いていく。
その後ろからキリルと私、カインさんと美里が王宮へと向かう。
王宮へと着いた後、夜会が行われているという大広間へと案内される。
扉を開ける前から、騒がしい音が漏れ聞こえていた。




