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浮気された聖女は幼馴染との切れない縁をなんとかしたい!  作者: gacchi(がっち)


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40.もう一人の聖女

「連絡が来た。寄生は無かったみたいだ。行こう。」


「うん。」


キリルと手をつないでふかふかの絨毯の上を歩く。

そういえば、あの日は聖女の部屋の裏側から出てきたから、

最初にいた聖女の部屋の場所を知らない。


ぐるりと回廊になっている反対側に行くとその場所はあった。

キリルに案内されるままについていくと、

大きな扉の部屋の前に隊員の人たちが何人か立って中を見ている。

キリルと私が来たのに気が付くと扉の前をあけてくれる。


中をのぞいてみると、カインさんが膝をついて女性に話しかけている。

女性は驚きすぎて声が出ないのか、カインさんをぼーっと見ているだけのようだ。

その顔を見て、キリルの手を離し走り出した。


さらさらのショートヘアがこちらへと視線を移す。

その目が大きく見開いて、口を半分開けたのがわかった。

ぎゅっと心臓がつかまれたような思いで、走って飛び込んだ。




「美里!!」


「…っ!?悠里!!」



床に座り込んだままの美里に飛びこむように抱き着いた。

美里だ!美里がいる!もう二度と会えないと思ってた美里に会えた。

美里も私を強く抱きしめて、泣いているようだ。


「どこに行ってたの!心配したんだから!!

 悠里が行きそうな場所、探しても何にもわからなくて。

 ホント…心配したんだから!!」


久しぶりに聞いた美里の声が涙声で、かなり怒っている。

え?どうしてこんなに怒ってるの?


私が行きそうな場所を探してた?

どこに行ってたって、そうか向こうで私って行方不明になってる?

大学で突然消えてしまって、心配してくれていた?


「…美里、私って、行方不明になってる?」


「そうだよ!」


「…心配してくれてた?」


「…っ!当たり前でしょうおぉ!!

 あんな相談されて、帰ってどうなったのかと思えば行方不明になってるし!

 連絡も全然来ないし!心配するに決まってるでしょう!」


そっか。あんな相談をして、帰ったその日のうちに行方不明になってたんだ。

それじゃ…かなり心配かけてしまったんだ。怒るのも無理はない。


「ごめん…ごめん。ありがとう。

 心配してくれてありがとぉぉ。」


「…もう、いいよ。無事だったなら。で、ここはどこなの?」


「あ。」


そうだった。ふりむいたら、困った顔のカインさんと、

楽しそうに笑って見ているキリルがいた。


「えーっと、話は長くなるから、とりあえず移動しようか?」


「わかった。」


うん、とりあえず、美里はパニックになって叫ぶような人ではないと思う。

ここは聖女の説明書通りにカインさんに説明してもらおう。

私はその後の補足というか、念押しをしよう。嘘じゃないんだよって。


「美里、立てる?」


座ったまま立とうとしない美里に聞くと、ふるふると顔を横にされる。

ちょっとだけ眉が下がって情けない顔になった美里が弱弱しくつぶやいた。


「…足に力が入らない。

 これって、腰が抜けてる?」


「ありゃ。」


転移してきたことで驚いて腰を抜かしちゃったのか。

手を貸して立たせようかと思ったら、それよりも早くカインさんが動いた。


「えーっと、ミサト?

 部屋まで運ぶ間、ちょっとだけ我慢して?」


「え?」


さっと背中と膝の後ろに手を回して、お姫様抱っこで立ち上がったカインさんに、

美里と私が軽く悲鳴をあげる。

うわぁ…イケメンのお姫様抱っこ。

しかも美里も美少女だから似合う!眼福ってこんな感じ?


「え?…あの?」


「うん、大丈夫、すぐそこの部屋だから。

 いつまでも床に座ってたら風邪ひいちゃうからね。

 ユウリも一緒に来るから心配しないで?」


「あ、はい。」


カインさんのいい笑顔で押し切られたらしい美里の返事だけ聞こえる。

小柄な美里の顔は後ろからは見えない。

でも、嫌がってなさそうだから大丈夫かな。


「じゃあ、行こうか?」


「うん!」


こちらもすごくいい笑顔のキリルに手をつながれて歩き出す。

カインさんの後ろをついていきながら、これからどうなるんだろうと思う。


まずは…美里にこの世界を信じてもらうところから、かな。






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