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4.話が合わない

結局日曜日も泊って月曜日の早朝、まだ眠そうな顔している美里に見送られて部屋を出た。

裏切られた怒りや気持ち悪さは消えていないが、

美里とゆっくり過ごせたことで落ち着きは取り戻せていた。


親には一応公衆電話から連絡をしておいた。

けんかではなく、律と一花がそういう関係になったことで、

距離を置きたかったと説明して。


何か言われるかと思ったが、母親にはふうんと面白そうに言われただけだった。

期待はしていなかったし、まともに話したのも久しぶりなくらいだ。

無断で泊まりに来たことを怒られないだけ良いかと思うことにした。


大学を変えるにしてもやめるにしても、すぐには決められない。

私のすることに興味のない両親はどちらでもいいと言いそうだが、

自分自身の将来のことも考えて、しっかり悩んでから決めたい。


どちらにしても授業をさぼるのは得策じゃないと、大学へと向かう電車に乗った。

月曜日の午前中の授業は律と一花とは違う。

午後は一緒の授業になるが、どうしても嫌なら午後は休んで帰ればいい。


携帯は一度電源を入れたら通知が大変なことになっていた。

律と一花には「もう二度と私に関わらないで、さようなら」

とメッセージを入れて電源を切っておいた。


大学に着く頃もう一度電源を入れたら、またものすごい数の通知が来ていた。

何か言い訳でもしたかったのか、通知はすべて律と一花の名前だった。

しばらくは携帯を使わないほうがいいかもしれない。

ため息をついて電源を切り、そっとカバンの中にしまい込んだ。



いつもとは違い、一人で大学の門をくぐる。

初めて一人で登校したことに、少しだけ感動する。


あぁ、これからはずっと一人なんだ。

あ、でも、美里みたいな友人ができたらいいな。


さみしさよりも、これからできるかもしれない友人への期待で笑いそうになる。

自分は思っていたよりも律と一花と離れたいと思っていたようだ。



「やっと見つけた!」


後ろから腕をぐいっと引っ張られ、転びそうになる。

それをすかさず支えるように抱き寄せられ、頭が真っ白になりそうになる。


「もう!心配したのよ!」


次の瞬間、腰にまとわりつくように抱き着かれ、ようやく状況を理解した。


「…離して。」


「お前、どこにいってたんだ!」


「そうよ!二日間もどこに行ってたの!?」


ちっとも話を聞かない二人に抱き着かれたまま怒られ、ふつふつと怒りがわいてくる。


「離せって言ってんでしょう!!」


思った以上に大きい声が出た。

初めて怒鳴る私に驚いたように、二人の手が離れた。

そのすきに一歩後ろに下がって、乱れた衣服を整えた。


「…どこに行ってたんだ。」


「何か関係あるの?」


「あるに決まってるだろう!探したんだぞ!」


いつも通り怒り続けている律を冷めた目で見る。

大きな目に涙をためている一花にも、そのまま知らない人を見るように目をむける。

一花がそれに気が付いたようにびくっとしたのがわかった。


「もう私に関わらないでってメッセージ送ったの見てないの?」


「見た。だけど、そんなわけにはいかないだろう?」


「なんで?」


「俺たちは三人一緒にだろう?」


「は?」


「そうよ、悠里は私たちと一緒に居なきゃだめよ?」


「はぁ?」


何言ってるんだろう、この二人。頭おかしいんじゃないのかな。

ものすごい真剣な顔しているけれど、もうごまかされてやる気はない。


「あのね…気持ち悪いの。二人の顔はもう二度と見たくない。

 声も聞きたくないし、友人でいる気もないの。さようなら。」


「は?ふざけんなよ!」


「嫌よ!ずっと一緒だって言ったじゃない。」


「…私はそんなこと、一度も約束していない。」


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