22.依存
「力に寄生する?」
「うーん、なんて言えばいいんだろう。
ユウリがそばにいれば何でもうまくいくように感じてる?
逆に言えば、離れていると不安になる。
ユウリがいなくなったら自分たちも終わるくらいに思っているんだ。」
「…だから浮気しても、三人一緒じゃなきゃダメだった?」
「きっとね。
生まれてからずっと一緒にいたのなら、依存した状態だったわけだろう。
今さら離れることなんて想像できなかったんじゃないかな。
だからユウリがこの世界に転移してきた時も、寄生したまま無理やりついてきてしまった。」
「それって、私のせいだよね?
私が逃げたいと思ってこの世界に来たのに巻き込まれたんだよね?」
結局は私のせいだったかと思いながらも確認すると、
キリルはすぐに否定する。
「いや、巻き込んだのとは違うよ。
おそらく力を吸われている状態でユウリが転移したから、
あの二人はユウリの力を手放せなくてついてきたんだ。
それはユウリのせいじゃない。
ユウリの魂がこちらに来るのを逃がすまいと追ってきた状態だ。
その責任はあの二人自身のものだ。
それだけずっとユウリの力にすがって生きてきたんだ。」
「追いかけてきた。私の力を求めて…。
そっか…そういうことだったんだ。」
あの異常ともいえる執着は力が原因だったと知れて、なんだか納得してしまった。
どうして私なんかにあの二人がこだわるのかわからなかった。
外見とか性格とか、そんなものは関係なかったんだ。
だから理屈でどうこういってもわかってもらえなかったし、離れてくれなかった。
…え、っていうことはずっとつきまとわれるってこと?これからも?
その考えが怖すぎて身震いしてしまう。
「大丈夫…じゃなさそうだな。」
「あの二人は一緒に居たくないって言っても聞いてくれなかった。
何を言っても三人でいるんだって。
結果…この世界にまでついてきてしまったでしょう?
私、二人と離れられるのかなって思っちゃって。
これからもずっとつきまとわられることになるのかな。」
「それについては安心していい。
この世界にとって聖女というのは大事な存在なんだ。
聖女を守るためなら神官隊長は権力だって使える。
…ユウリが嫌がっているのにあの二人を近づけたりはしないよ?」
「本当?」
「お望みなら処刑できるくらい。する?」
処刑?
処刑って…殺すってこと!?
「無理無理無理無理!」
「うん、そう言うとは思ってる。
だから、自由にはできないけど、手厚く監禁している。」
その言葉にほっとしたけど、監禁って!
「監禁ってどういうこと?」
「うーんとね、ここに来た日、男のほう…リツだっけ。
そいつが暴れて隊員にケガさせちゃったんだよ。だから貴族牢にいれてある。
貴族が入るための牢だから、中は客室みたいなもの。
外に出られないだけで食事も三食出しているし、
浴室もトイレもついているし、そんなに変なところじゃないよ。」
「あぁ、そういうこと。
暴れてつかまったのなら仕方ないか…。
一花のほうは?」
なんとなく律はそういうところがあるから理解できる。
怒りっぽいというか、自分の言うとおりにさせようとするところがある。
この世界では何もできないだろうから、暴れてしまったのかもしれない。
「女性のほうは王宮の客室で面倒見てもらっている。
こっちも勝手に動かれてユウリに会いに来られたら困るから、
監視がついて行動は制限させてもらっている。
だけど、王宮内にいる分には好きに過ごしているはずだ。」
「そっか。安心した。
もう関わりたくはないけど、ひどい目に遭ってほしいわけじゃないの。
友人だったことは変わらないし、
私とは違う場所で幸せになってほしいとは思うから。」
「うん、わかった。
それで…ユウリが起きるまで五日間あったんだけど、
どっちもユウリに会わせろってずっと騒いでいるみたいだ。
どうやら俺たちがユウリをさらって監禁してると思っているらしい。」
「ええ!?」
「ものすごく心配しているそうだ。
自分たちがユウリを守らなきゃいけないと思い込んでいる。
…実際にはユウリを危険な目にあわせてたのは自分たちなのにな。
まぁ、言ってもわからないとは思うが。」
あぁ、すごく想像できる。
私を助けださなきゃとか思ってそう。どっちも。
無駄に行動力ありそうだから…周りの人たちが困っているんだろうな。
「今は目を離すわけにいかないから王宮に置いているけれど、
そのうち落ち着いたら王都から離れた場所に移動させるつもりだ。」
「ねぇ、キリル。
…私のことはキリルが守ってくれるんだよね?」
「もちろん。離れずにずっと守るよ。」
「一度、二人と会って話したい。
私は大丈夫だよって、もう会わないけど元気でって言う。」




