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浮気された聖女は幼馴染との切れない縁をなんとかしたい!  作者: gacchi(がっち)


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15.聖女の変化(キリル)

神の住処で意識を失ったユウリを抱き上げて私室まで運ぶ。

これから数日間は眠ったままになるはずだ。


魂はこの世界の生まれでも、身体は異世界で作られている。

その身体をこの世界に適応するように作り変えるのだから…負担はかなりのものだろう。

眠っているうちに終わるから、ユウリ自身は苦痛を感じないはずだが。


聖女のために用意された私室は、実は俺の私室でもある。

俺から魔力を供給している関係上、少しの間も離れることができない。


ただでさえ転移したことで力を使い果たしている状態なのに、

ユウリはあの二人に寄生されている。

俺から魔力を受け取って身体を回復させようとしているが、

そこから少しずつ漏れているのがわかる。


まだ寄生された時の糸がつながったままのようだ。

早めにこの関係を切らせないとユウリの身体がつらいままだろう。


ある程度まで回復したら起きて動けるようになるとは思うが、

寄生した魂と切り離すためには時間と体力が必要になる。


聖女としての訓練はそれが終わって、

ユウリの身体と魔力がちゃんと回復しきってからの話だ。




さきほどユウリと話していてた部屋の奥にある寝室は、

大きな寝台の他に小さな寝台も置いてある。

最初から一緒に眠るのに抵抗があった時には、小さい寝台を俺が使う予定だ。


大きな寝台のほうにユウリを寝かせ、近くにあったベルを鳴らした。

神官隊員はしばらくはユウリに会わせることができない。

連絡員として妹のジェシカを呼んでおいた。


ジェシカでも魔力が安定しないユウリに会わせることはできないため、

寝室から出て隣の部屋で来るのを待つ。


神官宮にいる隊員はすべて男性で、新たに女性隊員を入れるのは難しい。

だからといって、隊員の中の一人を連絡員にするのはためらわれた。

ユウリと何度も会うことになる者は一人でも少ないほうがいい。

隊員たちは信用しているけれど、他の男性と仲良くさせるなんて無理だった。


ジェシカなら神官宮にも慣れているし、兄さんが隊長だった時に聖女のことも学んでいる。

これ以上なく連絡員にするのにちょうどよかった。


やはり向こうでは何か起きているのか、呼び出してから来るのに時間がかかっている。

しばらくしてジェシカが部屋に顔を出した。


「呼びました?キリル兄様。」


「あぁ、あちらはどうなっている?」


「かなり混乱していますわね。

 まさか聖女様と一緒に二人もついてくるなんて思いませんでしたから。

 最初から離したということは寄生したものということで間違いないのですね?」


「ああ。寄生していたのは間違いない。

 どういう関係かはまだ聞けなかったけれど、一緒に居たくないと言っていたよ。

 ここがどこかもわかっていない時から、全く知りもしない俺のほうが信用できたみたいだ。」


「それはよっぽどのことですね。

 ご令嬢が初めて会った男性に一人でついていくなど…。

 それほど追い詰められていた状況だと。」


「うーん。そこまではわからないけど、神官宮からは出しておいてくれ。」


「外に出しても大丈夫ですか?

 あの二人、聖女様の御名を連呼してましたけど…。」


「あぁ、もういい。真名の儀式は終えたから。」


「え。」


じとーっという目で睨んでくる妹の視線をかわしながら、

これからの指示だけを伝える。


「あの二人、聖女との関係性を確認するまでは手荒なことはできない。

 かといって、聖女に会うことだけは避けなければいけない。

 王宮のほうで預かってもらってくれ。」


「あぁ男性のほうはもう無理ですね。

 隊員に殴りかかったので、拘束してあります。」


「…それじゃ、男のほうは貴族牢にでも入れるように言ってくれ。

 女のほうはそれなりに保護しておいておくように。」


「わかりました…。

 ねぇ、兄様。まさかもうすでに神の住処に共に行ったとか言いませんよね?」


「…。」


「えぇぇぇ?ついさっき訪れたばかりで、事情説明すら終わってないでしょう?

 兄様…何をしているんですか!?」


「いや、だって、ユウリがそれでいいって言うから。」


責められることだっていうのは…今ならわかる。

だけど、あの時のユウリを一人にはできなかった。


異世界で汚れることがないというのは、ある意味孤独だったということでもある。

他の魂と混ざることなく、清いままでいる。

この世界に生まれた時から喪失感をもっている俺と同じ。

ようやく会えたユウリが…一人でいたくないと言った。

その言葉に逆らえるわけがない。


神の住処に一緒に行くということがどれだけ重要なことか。

そんなこともすっかり頭から抜けていたくらい必死だった。


「あぁ、もう。本当に何しているんですか…。

 ユウリ様とお呼びしても大丈夫なのですね…。

 それも皆に伝えておきます…。もう暴走するのはやめてくださいね?兄様。」


「大丈夫…ユウリが目覚めたら、後はゆっくり進めるよ。」


「そうしてください。あとは…私の手は必要ですか?」


「いや、いい。呼ぶまで下がってて。」


「わかりました。」


お願いだから、一人にしないで。

眠りに着く直前、ユウリの口がそう動いた気がした。

声にならなかった願い。

叶えないわけがない。


大丈夫、もう一人にしないよ。








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