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浮気された聖女は幼馴染との切れない縁をなんとかしたい!  作者: gacchi(がっち)


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118/139

118.試練の時

次の日の朝、予想通り美里は目を覚まさなかった。

カインさんも美里に魔力供給をし続けているため、二人は寝室から出てこない。


「やっぱりダメだって。目を覚ます気配すらないらしい。

 ニ三日で済めばいいが…いつ目が覚めるか予測できないな。」


「そっか…美里が起きてくるまでは私たちで頑張るしかないね。」


「うん…そうなんだが、小さい湖だけにしよう。

 昨日のような大きい湖はさすがにユウリと俺だけじゃ無理だ。

 ミサトが起きるまで、周辺の小さな湖を浄化しておこう。

 本当はミサトが起きるまで待ったほうがいいとは思うけれど、

 これだけひどいと少しでも減らしておいたほうがいいと思う。

 放置していたら、昨日浄化したところにまた瘴気がたまってしまいかねない。」


また瘴気がたまる!?昨日一日かけて浄化したのが無駄になってしまうなんて。

他にも湖がいくつかあって、おそらくそこも同じような状況なのに。


「そんな…。昨日、あんなに頑張ったのに…。

 そっか、ほっといたらまた瘴気がたまっちゃうんだ。

 うん、少しずつでも浄化しておきたい。

 大きいのは無理でも、小さい湖なら私たちだけでもできるよね?」


「あぁ、でも無理はしないで。

 ユウリが倒れたら、もう後がない。

 絶対に無理はしないって、約束して。」


「わかった…無理はしないから。」


「うん。じゃあ、隊員たちの準備が終わったら行こう。」


昨日と違う道を進むと、暗い森の奥、小さな湖にたどり着いた。

昨日の湖の三分の一くらいの大きさだけど、同じように湖面は真っ黒だった。

この湖は小さかったからか周辺の木にも瘴気があふれだしていて、

どろどろとした瘴気が枝から垂れ下がっている。


あまり近づくと上から攻撃が来るかもしれない。

昨日よりも離れた位置からの浄化になるが、遠くなればそれだけ浄化する力も弱くなる。


またキリルに抱きかかえられると、周りは神剣をかまえた隊員たちが並ぶ。

浄化する音の壁になってしまうからと、普段隊員が私たちの前に出ることはない。

今日は多少音の壁になったとしても、

守らなければいけないほど危険だということなんだろう。


鈴を振ると、またくぐもった音になった。

いつもよりも響いていないように聞こえるのは、瘴気が濃いからか、

私の力が足りないのかわからない。

それでも必死に神力をこめて鈴を振る。

長時間の戦いになるのは最初から覚悟していた。


ずっと鈴を振り続けていると、時折瘴気のかたまりがこちらに向かってくる。

それを隊員が切り捨て、キリルが後退して私を守ってくれる。

怖いとは思ったけれど、みんなを信じて鈴を振り続けた。


辺りの空気が変わって、瘴気の塊が小さく小さくなっていく。

そこからも鈴を振り続け、最後の瘴気が消えた時には、もう夕方になっていた。

魔力よりも体力が尽きてキリルの腕の中で力を抜いた。

くたくたで腕が痛んで、もう何もしたくない。


「そのまま休んでいて。拠点に戻ろう。」


「…ありがと。」


ずっと私を抱き上げているキリルも疲れているはずなのに、そんな感じには見えない。

休んでいいと言ってくれた言葉に甘えて目を閉じる。

目を閉じても瘴気の黒が見える気がして、頭がくらくらする。


戻っても美里とカインさんは寝室で休養していて、顔を見ることもなかった。

数日はこんな感じかもしれないなと思い、キリルと二人で食事をする。

疲れすぎていて、食欲も無く何も食べたくなかった。

それでもキリルが作ってくれた野菜のポタージュが優しい味で、

それだけは何とかお腹の中に入っていった。


「食べられるものだけでいいから。ゆっくり食べて。」


「うん、美味しい。…食べたら元気になった気がする。」


「良かった。明日、無理そうなら休んでもいいからね。」


「…起きて、無理だなって思ったら言うから。」


私に負担がかかっていると思っているのか、キリルの心配がひどくなっていた。

美里みたいに倒れるまで頑張るかもしれないと思っているんだと思う。




朝起きてみたら魔力量が多いからなのか、それほど疲れは残っていなかった。

キリルに魔力供給されながら眠ると、朝には完全にとは言わなくても八割がた回復している気がする。

これなら昨日の湖と同じ規模であれば行ける気がする。


「うん、大丈夫。今日もがんばろう?」


「…わかった。準備をしよう。」




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