101.事の後で(一花)
久しぶりの爽快感で目が覚めたら、隣に裸の男が寝ていた。
「はぁ?」
おもわず低い声が出た。
自分自身も何も着ていないのに気が付いて、血の気が引いていく。
なんでこんなことになった?どう考えてもやっちゃってる。
身体のあちこちが痛んで、普通の状態じゃないのを感じる。
ぐっすり寝てる…これ、王子だよね。
隣で寝ている男を見ると、水色の手入れされた髪と色白の毛穴なんて無さそうな肌。
寝ている横顔だけでも完璧王子様のカイラン王子に腹が立ってきた。
何のんきに寝てんのよ…。
「ちょっと、これどういうことよ。」
「…ん?あぁ、起きたのか。身体の調子はどうだ?」
「身体?あぁ、そういう気づかいはいらない。処女ってわけじゃないから。」
変に気遣われるのは嫌でそっけなく答えたら、王子の顔色が変わる。
「は?お前、誰としたんだ。恋人がいたのか?」
いきなり機嫌が悪くなった王子にいらないことを言ったかと思ったけれど、
恋人でもない王子にそんな風に責められるいわれはない。
「誰って、幼馴染。練習相手になってあげただけよ。
恋人とかそういうんじゃない。」
「イチカ、お前馬鹿なのか?」
「馬鹿って何よ。」
「なぜ恋人でもない男に身体を許した。」
「恋人なんて作るつもりがなかったんだから、どうでもいいじゃない。
それよりも、なんでこんなことになってるか説明して。」
私の経験とかどうでもいい。まずは説明しろ。
にらみつけながら訴えると不機嫌なのは変わらずに話をしだす。
この状況に納得できるとは思えないけど、
どうして王子とこうなったのかは聞かなきゃいけない。
「イチカ、ここのところずっと体調が悪かっただろう。」
「体調?あぁ、ぐったりはしてたけど、どこか悪いとかそういうのはないよ。
ただやる気がでなかったっていうか、動きたくなかったっていうか。」
「それは魔力不足だったからだ。」
「魔力不足?……私、魔力なんてあったの?」
「無いよ。」
「じゃあ、無いのに不足っておかしくない?
元から無いものなんでしょう?」
悠里のように聖女だっていうならともかく。
私は普通の人間なんだし、と思ったけど、私って聖女だと思われていたんだった。
でも、あれ?今、私には魔力が無いって言わなかった?
「……イチカ、俺はお前が聖女じゃないのは知っていた。」
「は?」
じゃあ、なんで私を解放してくれなかったの?
聖女だからって後宮に入れるために連れてこられたんじゃなかったの?
普通の人間なら連れてくる意味ないじゃない。
「言いたいことはあるだろうが、まずは最初から説明させてくれ。
まず、イチカがここに連れてこられた時、
父上の後宮じゃなくここに置いたのは俺の指示だ。
父上には聖女を守るためだなんだと言い訳したが、
本当は他国から攻め込まれない様にこっそり帰すつもりだった。」
あぁ、聖女を連れ去るなんてバレたら戦争だって言ってた。
じゃあ、私を帰すために保護してくれていたのか。
「でも、俺には俺の情報網というものがあってな。
調べてみたらお前は聖女じゃなく寄生者だった。」
「…きせいしゃ?」
「聖女のように魔力を持つ者の力を吸って、寄生して生きている者のことだ。」
「え。」
「イチカ、それにもう一人の男は、二人ともユウリという聖女に寄生して、
そのままこの世界に転移してきたと聞いた。
聖女の害になるから離して幽閉されていたということも。」
きせいって寄生?私が悠里の魔力を吸って生きていた?律も?
…夜会の時に悠里が言っていたのはそういうこと?
何を言っているのかよくわかっていなかったけれど、あれはこういうこと?
でも、私そんなことしてた覚えなんて無い。
「イチカ自体に寄生者としての認識はなさそうだったが、
自然に周りから魔力を吸い続けていた。
その魔力を自分の力として使うことに慣れていた。
おそらく向こうの世界でもずっとその聖女の力を利用していたんだろう。」
「…私は悠里を利用してなんて…。」




