let's go イ○ンモール!
ピンポンパンポーン
いつもガタガタな更新頻度のこの作品を読んでくださり、ありがとうございます。この度ですが、タイトルを少し変更させてもらってます。理由は伏線張りをしたいからです。どんな伏線かまではまだ言いませんが、これからもこの拙い作品をどうぞ楽しんでください。
旧「きみが消える、その日まで。」
新「**が消える、その日まで。」
5月11日。今日は部活動合同集会で午後の授業はなかった。
部活動合同集会とは、全部活動生が集まり、運動部ではグラウンドの使用時間の取り決めや注意事項の確認、文化系部は部費の分配についての話し合いがメインに行われる。2ヶ月に1回行われるこの集会は、今年度初開催であり、新入部員達のレクリエーションも兼ねているため、午後の授業を潰しての開催ということだ。
帰宅部である暮人からしたらのんびりできる時間が増えるため、とてもありがたい。
ただ今日はそうもいかなかった。死神が拗ねている。原因は昨日ふざけてからかい過ぎたことだ。話しかけてもそっぽを向いて取り合ってくれない。だがこのまま放置するわけにもいかず、話しかけ続けることにした。
「なあ死神。からかい過ぎたことは謝るからさ、機嫌直してくれよ」
「ふん。暮人なんか胴体バラバラになって酷い死に方すればいいのに」
「呪うようなこと言うなよ。本当になりそうで怖いからよ」
「死神の鎌でバラバラになっちゃえばいいのに〜」
「その鎌持ってる死神さんはどこの誰だ!」
「しーらない」
話が一向に進まない。どうしたものかと考えていると、いい事を思いついた。
「なあなあ死神」
「何?バラバラ死体にされたいって?」
「それは一生遠慮しとく。それよりもさ死神、今からデート、行かないか?」
□ □ □
高校から3駅離れたところから徒歩10分。目的地はそこにある大型ショッピングモールである。
つい先月リニューアルオープンしたばかりで、広さは東京ドーム・・・何個分だっけ?忘れたけど、付近では1,2番を争うほど大きいらしい。自分も行ったことはないので詳しくは知らない。なので道中にケータイで軽くググってみた。
ホームページ曰く、全4階建ての建物は、東西に延びる吹き抜けのフロアに大型店舗から小さな雑貨屋まで、幅広いお店が立ちのぼる。小さな店舗は時期によって頻繁に入れ替わるので、いつまでも飽きることなくこのショッピングモールを楽しむことができるそうな。ゲーセンの据え置き機かよっと思うが、企業様の新しい試みの成功をそっと祈っておこう。
「おお!広ーい!!」
正面ゲートから入った店内は、中央部が天井まで大きく吹き抜けになっており、平日なのにも関わらず多くの人で賑わっていた。天井からは日の光が入ってきてとても明るい。新設ということもあってか、キレイな内装を見て死神は小学生のように楽しそうだった。
と、ぼんやり眺めていたら死神が後ろから歩いてきたおばさま達にぶつかりそうになった。
「死神危ない!」
咄嗟に死神の手を引く。死神もそこで気付いたようだが、気にも留めずにそばのお店に入っていった。しょうがないので、代わりにおばさま達に謝っておく。
「すみませんぶつかりそうになって・・・」
「あら、誰かここにいたかしらぁ?」
「え?あ———」
「あらやだ紀代子さん、知らないんですか?近頃の若いお兄さん達の間では厨二病っていうのが流行っているんですよ。アニメで言ってましたわ」
「あらそうなの美津代さん。まだお勧めしてくれた恋愛アニメ見てなくてね。ごめんなさいね、邪魔しちゃったみたいで」
「あ、いえ、こちらこそ・・・」
なんか変な理解をされておばさま達は去っていった。現実の若者の間でそんな厨二病流行ってねえよ、オタクなおばさま方。
俺は死神の入っていったお店に向かうと、死神は机に並べられた色とりどりなガラス細工を眺めていた。
「何見てんだ?」
「ビードロってやつ。凄い綺麗で1度見てみたかったんだ〜」
「そう、か・・・」
「私は幽霊だから暮人以外には見えないし触れないんだよ。そんな気にしなくていいよ〜」
あっけらかんっと死神は言ったが、俺は改めて思い知らされた。
こんなにも自然に会話をしているけど周りからは見えていない。今この瞬間も他人から見れば俺が1人で虚空に向かって喋ってるように見える。誰の目にも、死神の姿は、映らない。
「いや、ごめんな。少し自覚が欠けてた。すまん」
「気にしなくていいって言ってるのに〜。あ、そうだ。そんなに気になるなら、ちゃんとエスコートしてくれる?」
からかうように差し出された右手を俺は迷いなく握った。死神は慌てたように「ちょ、ちょっと!待って!」っと言って手を離した。
「なんだよ、自分から差し出したクセに」
「すぐに繋ぐとは思わなかったの!」
「?今日はデートだ。だからエスコートはちゃんとしてやるよ」
「そ、それもそうだね・・・」
「デート・・・デート・・・っ!」っとブツブツ言いながら死神はもう1度右手を差し出してきた。
「そ、それじゃあ優しくお願い・・・」
「お、おう。任せろ」
恥ずかしそうに赤くなりながら言うものだから、こっちまで何故か恥ずかしくなってくる。
そっと握った死神の手は確かにそこにあって、でも本当は存在しない。そんな考えをしたら、足がすくみそうになった。
けど、俺は何事もないように歩き出す。もう後悔しないためにも、動かないといけないって。そう思ったから。俺は死神の手をそっと握り直した。