やりすぎた国の末路
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「聖女殿、此度の活躍見事であった!
リオルグ砦での戦で、全ての怪我人を一瞬で癒やして戦場に復帰させたそうだな。
聖女殿の働きが無ければ、我がマイレラ国が勝利できたかどうかわからなかったぞ!」
周りに貴族がずらっと並ぶ謁見の間で、5人の白のドレスを着た女性が、国王陛下の前で礼を取っている。
去年の秋にこの国に伝わる召喚の儀によって、日本から召喚された少女たちであった。
マイレラ国と西隣の大国バッセン王国とは、鉱山の覇権や大森林の領有で長年に渡って戦が続いていた。
そこへ東隣のギネッセン国が大河クテ川を渡って攻めてきたのだ。
西と東の国に挟み討ちにあったマイレラは、戦力を2つに分け戦うしか手立てが無かったのだ。
戦力が分けられてしまったので、援軍は期待できない。
そこで、マイレラ国に伝わる聖女召喚の儀によって癒やしの聖女を召喚し、怪我人をその場で癒やして戦場に復帰させるという作戦に出たのである。
召喚の儀によって6人の少女が召喚され戦場に送られて行った。
そのうち1人の聖女は、敵国の魔法使いの雷の術によって命を散らしてしまったが、残りの5人の聖女の癒やしの術により、バッセンを撃破。
そしてギネッセンもクテ川の向こうに追い返す事ができたのである。
「聖女殿には世話になった。貴族位でも領地でも宝飾品でも何でも望みの物を与えよう。」
聖女達の中から1人の少女が進み出て口をひらいた。
「では陛下、私たちにそれぞれ領地をお与え下さい。」
「わかった!聖女殿には領地を与えよう。」
「ありがとうございます。それでは、私にはこの王都ミゲラを頂きます。」
聖女の言葉を聞いた国王は驚いた。
「なんだと!王都を褒美に渡すなどできるわけがない!そんな無茶な要求が通るはずがないではないか!」
「陛下、ご提案がございます。」
「おう、キョート公爵、そちからも言ってやってくれ!そんな無茶な話を聞けるわけがない!」
「このマイレラ国は、200年に渡って聖女を異世界から召喚してきました。
その間、100人を超える女性達を召し上げてきたのです。
その女性達の中には、召喚された日に結婚式をあげる予定の者もいました。
乳飲み子を置いて召喚された者もいたのです。
マイレラが戦争するたびに王家の都合で召喚され、生き別れ、二度と家族に会えなくなってしまった。
その悔しさが陛下には分かりますか?」
白髪の混じる恰幅の良い公爵が身を震わせながら語る言葉を周りの者達も静かに聞き入っていた。
次いでヒョーゴ伯爵が進み出る。
「私からもお伝えしたい事がございます。我が曽祖母も聖女として召喚され戦場で命を散らしました。戦場に行く前に出産したばかりの体で…」
聖女の1人が国王の前に進み出て言う。
「この地に初めて召喚された聖女は、ナガノ ユミという女性でした。ユミさんは、戦争が起こるたびに安易に聖女を召喚する王家に怒りを感じたそうです。
そして、聖女達に褒賞は領地を頂くように。
そして氏姓を故郷日本の都道府県に改めましょうと。」
キョート公爵が言う。
「此度の聖女で47都道府県が全て揃うのです。
ミゲラをトウキョーにマイレラをニホンに!
そして二度と聖女を召喚しないように!
陛下には本日をもって退位していただきたい。
もちろん王政は廃止です!」
国王の周りを貴族達がぐるっと取り囲む。
「宰相のフクオカ侯爵も財務大臣のホッカイドー伯爵も近衛師団長のオーサカ侯爵も聖女の子孫だと言うのか。
いつの間にか、この国は異世界の国に乗っ取られていたのだな」
国王はガックリと膝をついた。
その日マイレラ王国は倒れ、ニホン国という議会制民主国家が誕生した。