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万事屋異世界探訪記 ~異世界人との会話はキャッチボールじゃない、ドッヂボールだ~  作者: もるともさん
第一章 ~現実世界で1+1が2以上にならないことは割とザラ~
3/8

突然のおじさん



俺は情けない声と共に恐る恐る目を開いた。


するとなんと目の前にはあら不思議、ごっつい大剣を肩に担いでこちらを覗き込む大柄の男。



そしてその大柄の男の後ろで胴体と頭が真っ二つに気持ち良いくらいの断面を残してキレているあのカメレオンバッタ。


なるほど。間一髪俺は助けられたのか。


でも正直こういうの初見殺しを救われる時って大概煌びやかな服を身に纏った亡国の王女的なのと鉢合わせるのがテンプレじゃないんか。それがこのムサ苦おじさんとは現実は中々に厳しい。


そう自身のラックの低さを呪っているとその大剣の男が何のためらいもなく俺の頭の上から瓶に入った液体を直接かけてきた。



「……!?!? なんだテメェ!! いくらピンチを助けてもらったにせよ流石に見ず知らずの人間に普通液体ぶっかけるかよ!? 」



頭から直接かけれたその液体は仄かに全身を暖かくする。


まさか、かけるタイプの媚薬ッ!?



「おっ、ちゃんと生きてたか、これは唯の回復ポーションだぞ。そんな田舎者じゃなさそうなのにポーション見たことないのか? 」



「回復ポーション? あんた何言って―――――――――」



俺の格好をジロジロみてそう問いかけてきた男のいうことが俺にはほぼ理解できなかったが、先ほどの顔面スライディングや時々飛んできた酸攻撃の痕がみるみる内に消えていくのを目撃してしまった。


コイツは一体どうなってんだマジ。

お医者さんも顔真っ青の回復力じゃねぇか。


こんな液体かけただけで擦り傷治るとか絶対に地球ではないのが確定してしまった。



「まさか本当にポーションを知らんような奴がいるとは驚いたな。……見なれない格好はしているがお前さんはどこ出身なんだ?」



男は心底不思議そうな顔をし、珍妙なものを見るような目でそう尋ねてきた。



「日本の東京って街だが……多分わからないと思うぞ。」



「おう、わからん。」



「ですよねー。」



そりゃどこの馬の骨かも分からん異世界人にあぁ日本かなんて言われたら逆にビビるわ。


基本的に転生なら一方通行で帰り道はなさそうだし、とりあえずこんな物騒極まりない森から抜け出さないと食料見つける前に自分が食料になっちまう。



「まぁ、お前が何故こんな人外魔境に一人武器も持たずにいるのかは一旦置いておいて、俺はこのアシッドラプセクトが討伐依頼の対象だったからもう街に帰るが、お前は何かこの森で依頼でもあるのか? 」



あのカメレオンバッタみたいな奴はアシッドラプセクトっていうのか。名前さえわかってれば絶対にお近づきになりたくない系のモンスターだわ。


それにしても近くに街もあるのか、そいつはいいことを聞いたぜ。

正味こんな頭のおかしな森はさっさと抜け出したかったところだし。



「うーん、迷っただけだから特に用はないし街に戻るならついでに連れてってくれ。」



「用がないほうが逆に怪しいんだが……。」



男はそう言ってアシッドラプセクトのほうに近づき腰から取り出した短剣を器用に使って顎の下あたりにある膨らんだままの酸袋を切り取った。


俺は魚以外の生き物をさばいた経験はないが魚ですら筋肉を断ち切るのにわりと力を入れてやらなきゃいけないのに、このモンスターの部位を切りっとてるとき殆ど力を入れずに切り取ってたな。


剣の切れ味の問題かこの男の剛腕っぷりが発揮されているのか。


切り取った酸袋を男は大きな麻の袋にいれ俺のほうに振り返った。



「なにジロジロみてんだ気色悪い、怪我がないならさっさといくぞ。」



「いやこんな良くわからん代物をとるなんて変わってるな。食べるのか? 」



「食べねぇよ!! 」



食べないのか。なら良かった。

見るからに地雷臭のする食材を使うような文化圏での食生活なんて腸のか弱い俺なら3日で死ねる。


流石にこんな異常なPHを体内にためて置ける袋たべてなくて安心した。



「なんでちょっと残念そうなんだよ!? 日本って国ではこんなモン食うのか? 」



「食わねぇよ!? しかも今お前、俺の顔が残念って言ったなッ!? 」



「食わねぇんじゃねぇか!! それにそんなこと一言も言ってねぇよ!! 鼓膜に酸でも食らったんかお前は!? 」



わんちゃん食らったかもしれないと俺はふとそう思った。






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