異世界への不時着
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ちょっと軽く星に触れるだけでいいんで、ほんのちょっとで終わるから…………ね?
作者は泣いて喜びます。←これはガチ。
ふと目を開けた時、俺は森の中にいた。
森の奥から聞こえるオオカミのような遠吠えに、訳わからん動物の咆哮っぽいなにか、葉のこすれる音、風が森の中を吹き抜ける音。
聞こえる限りの色々な音たちを俺は目覚めの直後から感じていた。
ただ、とてつもなく巨大な針葉樹林の森の中で目を覚ました俺は一体全体何がどうなって自分がここにいるのかを全く思い出せなかった。
「どうなってんだこりゃ……」
立ち上がろうとすると右のこめかみ辺りに強い痛みを感じた。
その痛みに顔が少し歪むも手でその箇所を抑えながらゆっくりと体を起こす。
状況としては明らかにおかしいが何故俺自身が森にいるのかは全く分らない。
多少記憶があいまいになっている部分があるのか、思い出そうどしても意識を失いこの森に着く前の記憶がとてもあやふやだった。
ただ思いっきり明らかなことは一つある。
俺は正直これを見た瞬間に、あぁここは地球ではないんだな、と悟った。
多分地球で自分は死んだか、死んでないとしても少なくとも死ぬ直前にこっちの世界にトリップしてしまったんだろう。
まぁ便宜上死んだってことにしておいたほうが死者蘇生的な感じでかっこいいからそうしておこう。
はい1デス決定。
とまぁそんな冗談はどうでもいいんだ。
問題はなぜ、寝起き直後のエネドリがないと普通四則計算ですら理解できないような脳みそ状態で俺がこの場所を異世界だと認識できたかだ。
それは、
「なんか足にカメレオンみたいなバッタが絡みついてるぅぅぅう!!!! 」
まん丸の黄色い大きなお目目に、左右に大きく裂けた瞳孔、バッタみたいな羽をもってるかと思えば図体はカメレオンのような爬虫類感、極めつけは俺の足をチュールをなめる猫のように気持ち悪い細長い下で懇切丁寧に舐めまくっていたそのカメレオンバッタをもう片方の足で思いっきり蹴り飛ばす。
そんなに蹴りが強い訳でもないんだがカメレオンバッタがわりと吹っ飛び、その吹っ飛びっぷりに思わずワーオと感想が漏れた。
俺が倒れていた森の間にある狭い広場のような場所から茂みのほうにある気に直撃したカメレオンバッタは、その飛び方の割には殆どダメージがないかのように颯爽とまたかなり背の高いシダ科の植物の間をかき分けてはい出てきた。
図体が1メートル近くあるようでかなりの迫力。
もしかしたら異世界ではなくわんちゃんマダガスカルなりオーストラリアの僻地の可能性はいまだに残されてはいるがとりあえずこのカメレオンバッタをどうにかしなければ俺に生きる道はねぇ。
ということで、
「古今東西逃げるが勝ちッ!! いざ戦略的撤退!!」
踵を返し思いっきり敵に背中を向け駆けた。
その様子を見てか凄まじい咆哮と共に背後から巨木をへし折る音となにかの超質量物体が爆速で迫っている音が聞こえるようになった。
たまに飛んでくるよだれのような白い液体が左右の木々を一瞬で溶かしているのを見て俺の玉がヒュンってなる。
倒木をスタントマンばりのスライディングやジャンプで避け、たまに左右に曲がり敵をかく乱しつつもとりあえず死んだばっちゃんに言われた迷ったときはお天道様の方向に進みなさい作戦を敢行した。
その動きは図らずも遺跡の中をモンスターから逃げるあのクソゲー兼神ゲーにそっくりだったがまぁよしとしよう。
「大体俺なんか食ってもそんなに腹の足しになりませんよぉぉぉお!! こんな骨と皮と少しだけ肉みたいなやつより絶対にもっと旨い奴いるからぁぁあああ!! 」
カメレオンバッタはそんなことなど知った事かと言いたげに先ほどよりも白い酸液の発射回数を増やす。しまった、逆効果だったか。
たまに気に当たった跳ね返りが俺の服につくが、なにかが焼け焦げた匂いと共にどんどんとセクシーな格好になっていく。
たまに拳大ほどの石を拾って投げつけるも大抵カメレオンバッタの強靭な皮膚にはじかれて明後日の方向に弾き飛ばされる。
「ちょっとまじで待ってホントに異世界着て5分でお陀仏はしゃれにならんってマジで助けグボヘッ—————————」
車を運転するときも皇居ランするときもモンスターから逃げているときも大抵事故ってのは前方不注意の時におきるんだよなぁ……。
俺はジャンプで華麗に倒木を避けた先にあった小さなツタに足を取られ、顔面からヘッドスライディングをかましてしまった。
すぐに体勢を立て直そうとするも絡まったツタが足から離れず、引きちぎろうとするも意味の分からないくらい固く複雑に絡まっていたため全く取れない。
「あ、オワタ。」
ありがとう神様、ありがとうお母さん、僕はこれからコイツの養分としての役目をしっかりと果たしていきたいと思います。
質量お化けが木々をなぎ倒しのどの下らへんにあった酸袋のようなところが膨らみ、まさに今酸が発射されようとしているところが見え俺は穏やかな気持ちで目を瞑った。
化け物の咆哮が聞こえ一段と大きい音が地面に響く音が聞こえる。
俺はきたる死に歯を食いしばった。
………長い。
せっかくビビらず我慢してんだから一思いに殺せや。
じらすな、俺は別にマゾ属性の民ではないんだ。
あれ意外に遅いし結構かかるな。酸を出すまでそんなに時間かかるのか?
いやにそれにしてはさっきは軽快にドピュドピュ酸液出しまくってたしなぁ。
「あんた、一体ここで何をしてるんだ? 」
「ふぇ? 」
俺は突然聞こえた人の声に変な声が漏れてしまった。