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万事屋異世界探訪記 ~異世界人との会話はキャッチボールじゃない、ドッヂボールだ~  作者: もるともさん
第一章 ~現実世界で1+1が2以上にならないことは割とザラ~
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万事屋ダインソようこそ


この世界の大体の依頼は気合では解決しません。


もしあなたがこの世界に迷い込んでしまったら早めにレストランでも経営したほうが身のためです。


さもないとあなた自身にも災いという名の依頼達が届いてしまうかも…



「ねえねえ、あんちゃんあんちゃん、クソ煮込みうどんと煮込みうどんのクソってどう違うの? 」



俺【ダイ】の悠々自適な平穏休日ライフは引き戸が吹き飛ぶ勢いで開けられた衝撃とそのいかれた爆発音に一気にかき消された。


ロマンティックな芳香をひっさびさに焚いて最高のエセヨーロピアン気分を味わっていたというのに……。


この世界で俺のことをあんちゃんと呼ぶ奴はアイツしかいない。そこに現れたのはそう、我が仕事場兼自宅【万事屋ダインソ】の隣家屋に住む親バカ一家の一人娘【リーゼ】だ。


なんだお前ら、うちの屋号に文句あんのか? 吸引力の変わらないただ一つの万事屋だ? 家の名はダイ〇ンじゃねぇダインソだ勘違いすんな。


せっかくあやかったのだから吸引力は塵やこんな明らかに問題しか持ってこないようなガキンチョに対してではなく金、普通の客、金銀財宝に対して発揮してもらいたいばかりだよ。



「クソ煮込みうどんは始めからクソが煮込まれているうどんで、煮込みうどんのクソは煮込みうどんを食べた後にお尻から排出されるクソのことなんだよ。ほーらまた一つ賢くなったねぇ。」



一応適当にさっと答え、赤いろのくりっくりの髪の毛に緑色の大きな瞳に一しきり引いていると、どこに隠していたのか全く分からないが背中から茶色い煙を放つ大きな灰色の土鍋を取り出して俺に見せつけてきた。



「そうなんだね! 実はこれをお父さんに食べさせてあげようと思ったんだけど、こんなのクソ煮込みうどんだって食べもせずに言われちゃったんだ。……ちょっと試食の感想が欲しいな。」



「……リーゼよく聞きなさい。君のお父さんは多分ヴァカだと思うからしっかりした大人である俺がはっきりと伝えてあげよう。これはクソ煮込みうどんでも煮込みうどんのクソでも何でもない、ただのクソ煮込クソだ、うどんの要素など微塵もない純粋な排泄物煮込みなんだよヴァッカチン。」



俺はそう言い切るとリーゼからそのクソ煮込みクソ入り鍋を取り上げて思いっきり窓から万事屋の外に投げ捨てた。


アァァァァァ……と、通り道の方からゾンビがさえずる声が聞こえるが知った事ではない。

家の周りで一体どれだけの人間がこのゾンビ発生器の被験体になろうがどうでもいいのだ、ビバ自己中。


「あれ結構頑張って作ったんだけどなぁ……。アイアン芋虫の膀胱とか、サイレントギズモバッドの翼膜とか、牡牛エイの喜屋武玉とか―――――――――」



「むしろ原因それでしょうが普通の食材使えよ。ってかなんだよ牡牛エイってウシなのかエイなのかはっきりしろよ。それよりも喜屋武玉ってなんだよ喜屋武玉って、明らかに放送禁止用語みたいな素材ぶち込みやがって現実にピー音入れられないって最近の若い子は知らないんですかそうなんですかっ!? 」



この子ダメだ絶対にダメだ。そもそも何を作ろうとしていたのかさえ想像できない。


味噌煮込みうどんなのかそうなのか?


それとも始めからクソ煮込みクソを作ろうとしていたのか?


今例に上がった素材だけでもほとんどの確率で下腹部の最重要部位が使用されたている気がするし、というかその素材どうやって集めたってか誰にもらったんだマジで。



「うーんでもこの調理本にそういうレシピで載ってたから間違ってなかったと思うんだけどなぁ。」



リーゼは空間魔法を自身のすぐ隣で使い、亜空間から本人曰く調理本、しかしながらまったく怪しげな陰キャ腐れ外道魔女どもが好んで買いそうな擦り切れた黒魔術教本のような冊子を取り出した。


普通の人間はそんな飯でもつまみ食いするかのように空間魔法など使えない。

いくらイカれたおつむをしているとはいえリーゼは所謂天才って奴だ。


というか見るからに胡散臭ぇ、中身見る前から既にから胡散臭い匂いが部屋中に立ち込めてやがる。



「ちなみにそれはどこで買ったんだ? 」



「うーんとね、行商人のおっちゃんからもらった! 」



「へー、本をあげるなんてそんな珍しいこともあるもんなんだな。」



中身は怖すぎて確認する決心がつかないためどうでもいいが、そんな易々と見知らぬ女の子に中身はどうであれ非常に高価な書物を無料であげる荀子もびっくりの善行積み上げ人間なんているのか。


この人間の世界もまだ捨てたもんじゃないなとしみじみ思った。



「うーん……まぁいいや、そういえばさあんちゃんってどうして万事屋? なんか始めようと思ったの? 」



リーゼがそう興味津々に聞いてきた。


いつの間にか扉の前から移動して勝手に先日の案件の報酬を使って新調した高級ソファに座り勝手に我が家のなけなしのお茶をすすっているが良しとしよう。



「そうだな、まずは俺が死んだ時の話からするか……。」



「あんちゃんアンデッドなの!?!? 」



違います。全く持って違います。

俺はそう心の中でにこやかにリーゼに応答しながら首を左右に振った。





「―――――――そんなにも知りたいというのなら教えてやろう、俺が何故生まれ育った世界とは全く異なる文化、法則、人種をもつ異世界において万事屋を営み、常識まで全く通じない癖の強すぎる人々に囲まれながらなんとか一日一日を汗水たらし、時には小便も大便もまき散らしながら奮闘する最ッ高にファンタスティックでスペクタクルな生活を送っているのか、お前の耳の垢が『もう聞いてられないよぉ』と泣き叫ぶまで教え込んでやるわ!! 」



「手短にお願いいたします。」



「ふぁい。」





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