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悪女、匿う

色々ツッコミどころ満載ですが、宜しくお願いします。

誤字報告ありがとうございます。

「わあっおっきい木!」


「兄上ーこっちに何かいますよ!」


「わわっ、触っちゃいけませんって!」


魑魅魍魎…もとい、ちびっ子王子達がやりたい放題だ。繁みを棒で突いたり、大きめの石を『碧の境界』の方向へ投げ入れたり…まあそんな飛距離じゃ前の崖の下に落ちただけだろうけど。


しかしだね万が一、『碧の境界』の地割れの中に本当に万が一でも投石が入り、中にいると思われるドラゴンの頭にでも当たったらどうするの?と…思ったが、ちびっ子王子達を追いかけ回しているシツラット大尉とケイハーヴァン殿下とお付きの近衛のお兄様の手前、更に混乱を呼ぶようなことは口には出来ない。


私はソッ…と自分達の周りに魔物理防御障壁を張った。


「おや?」


「素晴らしい障壁だね、リシュリアンテ殿下」


私は義兄の南ハーシプ王国の国王陛下(上姉の旦那)とコウグルート王国の王太子殿下(下姉の旦那)に微笑みを返した。今はお義兄様達と救護テントの中にテーブルを出して優雅にお茶を頂いております。


因みにお義姉様達は、王女殿下達とドラゴンなんて興味ねーよ!な状態なのでお留守番である。当たり前だ、私も留守番でよかったのに…。


「まかり間違ってキリウーデ王子殿下の投げ入れた石が、ドラゴンに当りでもしたら…手負いのドラゴンの相手は危ないですからねぇぇオホホ…」


もうやけくそだ、ドラゴンが一回でも出てくれば満足して魑魅魍魎…ちびっ子王子達は帰るんじゃないかな?早うドラゴン出てこいやー!


「叔父上ーー見ててよ?そーれ!」


んん?噂のキリウーデ王子殿下が結構大きめの石を持って、何か魔法をかけてそれを地割れの先に向かって投げた。


あれ…投げた石、結構速度出てない?ああ、風魔法かな…。


キリウーデ王子殿下の投げた石は……綺麗な放物線を描いて『碧の境界』の穴の中に落ちていった。


「…落ちたな…」


キリウーデ王子殿下のお父様のハーシプ国王陛下が呟いた。


「何か…聞こえませんか?」


コウグルートの王太子殿下が立ち上がっている。私も嫌な予感を感じて立ち上がった。


「ケイ殿下ー!子供達を連れて戻って下さい!」


私はそう言いながら救護テントから駆け出してケイ殿下の方へ走りかけた。


「ッキャシャァァァ…!」


鼓膜が破れそうなほどの奇声が聞こえた。キリウーデ王子殿下は一番にこちらに駆け戻って来た。その次にケイ殿下が一番小さいドリュファーナお義姉様の子息を抱えて走ってくる。近衛のお兄様はケフィアーナお義姉様の2番目の子息を、しんがりはシツラット大尉だけどーー?!


後ろから凄い勢いで飛んで来る何かがいる!急いで私の中の最大限の防御障壁を出した。


物凄い風圧と奇声が鼓膜を直撃する。砂埃の中、必死で声の主を見ると2対の目が…2対?金色の4つの光がこちらを射抜いている。


「双頭のドラゴンだぁぁ!」


「すごいっ!」


「こらっ喜んでいる場合かっ!」


思わずケイ殿下が甥っ子達を怒鳴っている。ツインドラゴン?初めて見る…当たり前だけれど、あの複合魔法も2倍ってことかな?


私は一気に駆け出した。障壁の壁を抜けて外に走り出ると、岩を飛び移り双頭の竜の頭上に、飛び上がった。苦手だけど風魔法と重力無効化魔法を重ね掛けしてみる。効果があるかは分からないが、何もしないよりはマシだ。


取り敢えずドラゴンの体に触れるだけでもっ…。ドラゴンが鎌首をもたげて頭上の私の姿を捉えた。2匹同時に息を吸い込むようなポーズをした。


「…っ!」


突然、辺りを閃光が走ってものすごい魔力でドラゴンが薙ぎ倒された。


誰が倒したの?!あれは…ケイ殿下だ!


嘘ぉ?!私の魔物理防御障壁を破ったの…あ…分かった。ケイ殿下と魔力の相性がいいから、私の障壁の解術もすぐ出来るんだ。


私はケイ殿下に横倒しにされたドラゴンの前足に手を置いて、例の攻撃型回復魔法をかけた。


「さ~暫く障壁の中で頑張りましょうか」


とか言いながらケイ殿下と一緒にダッシュで救護テントの中に駆け込んだ後、急いで何重にも魔物理防御障壁を張る。ちびっ子王子達は何だろうか…目をキラキラさせてツインドラゴンを見ている。


倒れたドラゴンが首をクイッと後ろに引いた。来るっ!


「きゃああ!」


「ひゃあああ!」


「ひえええ!」


悲鳴は歓喜のような恐怖の悲鳴のような色々な声が上がっていた。一番大きな悲鳴を上げていたのは…カロンだった。うん、女子だし仕方ない。後でカロンはあんな大声をあげてしまって恥ずかしい…と萎れていたけど女子力は高かったよ!と褒めておいた。


それでえ~とね、このツインドラゴンね…この間のドラゴンと使ってくる魔法が違うみたいだね。


「これは水と氷か?」


ケイ殿下がドラゴンからぶつけられている魔法を見て首を捻っている。それぞれの首から水と氷の一種類ずつ魔法が放たれているのだ…こう言ってはなんだが、ツインドラゴンのくせに前のドラゴンより魔力が弱い。


「見掛け倒しかな…この間のドラゴンの方が強そうですね~」


「ええっ!そうなのっ?!」


「これより格好いいのっ?!」


ハーシプ国の王子殿下2人が叫んだけれど、アレが格好いい?かどうかは分からないけど、魔法と言う面に関してならこちらは弱い。おまけに魔力が急激に減少している。


「もう魔力切れですねぇ」


「そうなのか…あっけないな」


若干間抜けな会話をケイ殿下としつつ…伝説の?ドラゴンはすぐに魔力切れを起こしそうだった。そして案の定、回復に次ぐ回復を受けて体は元気なのに、魔力不足の為か体がふらつき、何度も慟哭しながら……やがてツインドラゴンはどーーんという大きな効果音をたてて倒れてしまった。


「……」


皆は長い間、白目を剥いて泡を吹いたツインドラゴンを見詰めていた。


「そうだ、亡くなっているのならアレの血肉を頂こう」


そんな中、女子の前でそんな血生臭いことを言いますか?場の空気を読まずにケイ殿下がそう言って、シツラット大尉の方を見た。シツラット大尉は顔を引きつらせている。


「えぇ…殿下大丈夫でしょうか?あのドラゴン本当に死んでいますか?」


シツラット大尉よ、気持ちは分かるっ…分かるけど、前を見よっ!すでにちびっ子王子達が棒でドラゴンの体を突いているからっ!あいつらの方が度胸あるから!ビビってんじゃねーよっなんて1ミリも心の中で思ってないから!


そしてビビリながらドラゴンの解体をする大人を尻目に、ドラゴンの体に登って眼球を突いたり、鱗を引き千切って遊ぶ王子達。


あんな生臭い生き物によく触れるなぁ。


という訳で、何とか念願のドラゴンを見られて、王子殿下達はご満悦だった。大人達は疲労困憊だったけど…。


そのドラゴンと遭遇の次の日の夕刻


私とケイハーヴァン殿下の婚姻式に出席する為に、ワーゼシュオン神聖国からファシアリンテと両親がやって来た。まるで何事もなかったかのように微笑んでいるファシアリンテの態度に私達は呆れていた。


ワーゼシュオン神聖国の親族を貴賓室に案内した後に


「そうだ…シツラットはファシアリンテ王女から、夜這いとかされないかな?」


と不意にケイハーヴァン殿下がシツラット大尉に言った言葉に皆は暫くポカンとした後、戦慄した。


うっかりしていた…。私はケイハーヴァン殿下の後ろに居るメンズの方をゆっくりと見た。


シツラット大尉を筆頭に…ケイ殿下付の侍従のシアン…近衛のミーレ君…おまけに今日に限って宰相補佐のサイファイトさんがいた。


揃いも揃って…皆、可愛い系男子だった。


「何故今日に限って可愛い系で固めているんですかっ?!ファシアリンテに見られてましたよ?ああ、どうりであの子が妙にご機嫌だと思ったらぁ好みの男子が一杯いたからなんだわ!」


思わずケイハーヴァン殿下に詰め寄ってしまう。私の言葉に可愛い系男子達は悲鳴を上げた。特にシツラット大尉とシアンはファシアリンテの夜這いや暴言も直接見ているので、悲鳴の声もひと際大きい。


「狙われる…か」


「冗談でもやめて下さい!」


シツラット大尉が不敬にもケイハーヴァン殿下に怒鳴っている。すると…私の背後から魔法の気配がして、私の護衛の元ワーゼシュオン神聖国の暗部出身、ビューザー=レガスが現れた。


今の話題に関係はないけれど、ビューザーは目つきの鋭い結構なイケメンなのよね。それはさておき…ビューザーは


「でしたら、今日目を付けられてしまったと思しき、男性達を一か所に集めて纏めて護衛してみるのは如何でしょうか?」


と、とんでもないけど、ものすごい妙案を打ち出してきた。


「それよ!」


私は早速、この場に居た可愛い系男子を今晩は客室に隔離…もとい厳重な警護体制の元保護することにした。当然可愛い系男子からは不満の声があがる。


「私は1人でも大丈夫ですがねー」


シツラット大尉がそう口を尖らして抗議してくるが、何を言ってるんだ!


「あなたが一番危険でしょう?現に胸を……」


「わーーーわーーー!……分かりました」


私の言葉を遮ってシツラット大尉は叫んでから渋々了承した。


ケイハーヴァン殿下は困ったような表情をしながら可愛い系男子を見回した。


「ファシアリンテ王女殿下が滞在中は日中も行動に注意すること。夜はこの部屋に戻ること。予備の寝台も入れておくので眠ってもらっても構わないが、夜這いをかけられる可能性もあるので、十分気を付けてくれ。それと…あくまで提案だが、王女殿下に襲われても構わないと思う者や、それでもここで待機するのが嫌だと思う者は出て行ってくれても構わない。全ては自己責任だ」


ひえっ…。でもそうだよね?ファシアリンテが夜這いに来ても1人で対処出来るなら、それならいい。でも流されて…もしくは単純にファシアリンテが好みならば好きにしたらよい、としか言い様がないよね。


しかし可愛い系男子は皆神妙に頷いて「御意」と答えていた。不自由な思いをさせてごめんなさいね。


「皆、後で差し入れを持ってくるわね?今日と明日の我慢だから…ごめんなさいね」


私が何となくだけど、一番近くに居た宰相補佐のサイファイトさんの手を取ると…可愛い系男子が一斉に私を取り囲んだ。


「いえいえいえっ!姫様がお気を揉む必要はありませんよ!」


「ひ、姫様が差し入れを持って来てくれるのですか?!」


「姫様の御頼みなら喜んでお受けします!」


そう言えば…メイド達が私の事を姫様、姫様と呼ぶから皆があだ名のように姫様呼びするけれど…もしかして不敬になるの?いや私本人がどうでもいいと思っていることだし、今更いいか…。


婚姻式の前日にドタバタしてしまったけれど、夜…手で摘まめるサンドイッチを何種類か作って可愛い系男子隔離部屋に持って行った。実はこの世界に醤油っぽい調味料があるので、焼肉のたれを作ってみたのよね。今日は分厚いバンズに挟んだ、焼肉サンドとフルーツサンドも作ってみた。


この国に来て初めて調理場で食事を作ったけれど、ワーゼシュオン神聖国では1人でご飯の支度もしていたので慣れていたし、前世の経験もあるので久しぶりの調理だが問題はなかった。


ただケイハーヴァン殿下には問題ありだったみたいだ。私が料理が出来ることを知らなかったことと、初めての手料理がこの夜食で、しかも可愛い系男子への夜食だということが気に入らなかったみたいだ。


随分と拗ねていた。だったら、夜食一緒に食べれば?というと何故だかご自分も可愛い系男子の部屋で夜番をすると言い出した。


まあいいけど?明日は婚姻式の前の夜会だけど分かってるのかな?



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